1-3 死んだ社畜は赤ん坊に (改訂版)
朝に投稿しようと思ったら寝坊してしまった。
最近忙しかったから、疲れているのだろう。
読んでくれた人はぜひ評価してください。
やはり点数をつけてもらうと、自分の今の実力とかもなんとなくわかると思うんで……
目を開くと見えたのはまた知らない天井だった。
といっても、先ほどまでいた女神さまの部屋の様な場所ではない。
きちんと生活感のあるどこかの建物の一室と言ったところだろうか?
「あら起きたの?」
「あうっ!?」
近くで女性の声が聞こえてきたので、そちらに視線を向ける。
そこで気が付いたのだが、俺はどうやらその女性に抱きかかえられていたようだ。
振り向くと目の前に近くに美しい女性の顔があったので、思わず驚いてしまった。
炎を想像させる真っ赤な髪が特徴の女性だった。
日本ならば確実に変な色の髪だと思っているが、異世界ならばおかしな色ではないのかもしれない。
まあ、この世界についてはまだ何にも知らないわけだが……
「おっ、目を覚ましたか?」
「あう?」
目の前にもう一つの顔が増えた。
そこにいたのは黒髪の男性だった。
日本の男性アイドルの様に女の子に人気のある爽やか系や可愛い系ではないのだが、男らしさをひしひしと感じるイケメンだった。
この異世界でのルックスの価値観は知らないが、二人とも異性から人気が高いのだろうと思ってしまう。
しかし、目を覚ました瞬間にいきなり現れたということは……
「ええ、そうね。じゃあ、さっそく……ママでちゅよ~」
「おい、ずるいぞっ!? 俺だって早くパパと呼ばれたいんだからなっ!?」
女性が俺に向かって笑顔で自己紹介をし、先んじて言われてしまったことに男の方は慌てていた。
どうやら二人は夫婦のようで、俺はこの二人の間に生まれた子供のようである。
まあ、【転生】と言っていたので、赤ん坊になっているのは当然だろう。
肉体もそのままに異世界に来た場合は、もうそれは【転生】ではなく【召喚】とよぶべきだしな。
ファンタジー好きの人間にとってはどちらでもいいから異世界に行きたいという人間は多数いると思うけど……
「あう、あう」
「おお、反応したぞ」
「ええ、かわいいわね。もしかして、私たちの言葉を理解しているんじゃないの?」
「はははっ、流石にそれはないだろう。もし理解していたら、確実に天才じゃないか」
「それもそうね」
声を出して反応を示すと二人は嬉しそうな表情を浮かべている。
まあ、赤ん坊に返事をしてもらえるのは親にとっては嬉しい事なのはわからないでもない……といっても、前世で俺は子供どころか彼女もいない独り身だったので、その気持ちをはっきりと理解できるわけではないが……
しかし、声に反応しただけで浮かれすぎではないだろうか?
たしかに俺は二人の言葉に反応してあげたつもりだが、赤ん坊が言っている内容を理解して反応するのはまずないだろう。
反応することはできるかもしれないが、それはあくまで目の前にある何かが動いていることに興味を抱いたとかそんなところだろう。
あくまで俺の推論ではあるが……
(コンコンッ)
「旦那様、奥様。よろしいでしょうか?」
「ん、サーラか? 入っていいぞ」
「はい、失礼します」
扉をノックする音が聞こえ、外から若い女性の声が聞こえてくる、
どうやら知っている人物のようで、父親は外の女性に部屋へ入るように促した。
部屋に入ってきたのは一人のメイドだった。
年齢は10代半ばぐらいだろうか、茶色の長い髪が特徴の少女だった。
なんとなくではあるが優秀そうな雰囲気を感じる。
だが、どことなく違和感のようなものもまた感じるが……
そんな彼女の腕の中には……
「ん? シリウスとアリスを連れてきてくれたのか?」
「はい。お二人にとっての初めての弟ですので、早めに会わせておいた方が良いと思いまして」
「なるほどな……流石、サーラだ」
「恐縮です」
男の言葉にサーラと呼ばれたメイドは恭しく頭を下げる。
どうやら、彼女はこの屋敷で働いているメイドのようだ。
そして、彼女はおそらく俺の兄と姉である二人を俺に会わせるために部屋にやってきたようだ。
彼女は顔を上げると、ベッドに近づいてくる。
そして、抱っこしていた二人をベッドの上に優しく置く。
「ん~? このこ、だれ~?」
「ちいちゃい~」
ベッドの上に置かれた二人は揃って俺の顔を見ようとする。
並んでいる顔がとても似ていることから彼女たちが兄弟姉妹であることは理解ができた。
というか、同じぐらいの年齢に見えるということは双子か何かだろうか?
「ふふっ、この子は二人の弟よ。名前はグレインよ」
「おとうと~?」
「ぐれいん?」
笑顔で説明する女性の言葉に二人は首を傾げる。
どうやら二人は説明を理解できないようだ。
まあ、正確な年齢はわからないが、まだそこまで年端もいかない子供に説明してもわからないのが当然だろう。
そんな二人の様子にその場にいた大人たちは優しげな表情を浮かべる。
「ふふっ、かわいいわね。このまま成長してくれればいいんだけど……」
「大丈夫だろう? なんたって、俺たちの子供なんだから」
「貴方の血が入っているから心配なのよ、アレン」
「なっ!? どうしてだ?」
女性の言葉に男性が驚いた表情を見せる。
どうやら男性の名前はアレンというようだ。
「貴方は可愛らしさから無縁の存在じゃない。筋肉が擬人化したような存在の癖に……」
「流石にそこまでじゃないぞっ! どうしてそこまで言われなくちゃ……」
「……ここ一週間で何回書類仕事をサボったかしら?」
「……」
アレンが反論しようとするが、女性の言葉に黙り込んでしまう。
図星だったのだろう。
というか、書類仕事をサボったのか、アレンは……
「別に貴方がそういうのが苦手なことは理解しているわ。けれど、だからといってアレンにしかできないことを放っておくのはいけないわ」
「……はい、すみません」
女性の言葉にアレンは頭を上げることができない。
言っていることがもっともなので、反論する余地がないのだ。
怒られている姿を見ると可哀そうだと思わないでもないが、だからといって聞いている話から彼を擁護しようとは思わない。
というか、そもそも擁護できるほど言葉は話せない。
そんなことを思っていると、不意に会話に入ってきた人物がいた。
「……そこがアレンのいいところ」
「うおっ!?」
「きゃっ!? く、クリス……いきなり現れないでよ」
「……ごめん」
いきなり現れた女性は謝罪のため頭を下げる。
だが、声からは一切の謝罪の意思を感じられない。
いや、別にそれは彼女が不本意ながら頭を下げているとかそういうわけじゃない。
ただただ彼女から感情を感じることができないのだ。
ロボットではないのかと思ってしまうほどだった。
そんな彼女は顔を上げると、口を開く。
彼女は表情もまた無だった。
「……アレンは頭が悪くて、体を動かすのが好きなのが良いところ。たしかに書類仕事ができないのはよくないけど、それを私とリズでフォローすればいいだけ。他にも優秀な人材はいる」
「たしかにそうだけど、アレンにしかできないことはどうするのよ?」
「……アレンだと偽って、仕事をする?」
「それはダメじゃないかしら?」
首を傾げてとんでもないことを言うクリスに、リズと呼ばれた女性はげんなりしたような表情で諭す。
冗談なのか本気なのかはわからないが、とりあえず否定はしておかないのだろう。
「なぁ……俺が駄目だという前提で話すのは止めてくれないか?」
そんな会話をしている二人にアレンが話に入ってくる。
彼としては本人を目の前にそんなことを言われるのは心外だと思ったのだろう。
たとえ事実だったとしても……
「「じゃあ、書類仕事はできるの?」」
「……」
女性陣からの指摘にアレンは黙り込むしかなかった。
少しは反論すればいいと思うのだが、言われていることが事実であるため反論することができないようだ。
その様子からリズと呼ばれた女性の心配を俺も感じてしまった。
アレンの子供ということは、一言でいうならば【脳筋】になってしまいそうだ。
いや、別に一概に悪いとは言わないが、だからといって必ずしもいいとは言い難い存在だからだ。
まあ、それに関しては俺が気にすることでもないか。
子供の成長は両親の方針と子供本人の希望で決めるべきだからだ。
とりあえず、俺は自分に被害が及ばないようにするだけである。
こうして俺は異世界に転生したのだった。
やっと異世界に来れました。
まあ、まだ赤ん坊ですけど……
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