7-120 死んだ社畜はベテラン冒険者の戦い方講座を聞く
「どうですか、ウォーさん?」
とりあえず、俺は年長者に聞くことにした。
どう反応していいのか、わからなかったからである。
戦闘面については十分な実力はついているだろう。
少なくとも、二年目に比べれば、目に見えて成長しているように感じる。
だが、どこかに違和感があるのだが……
「まだまだだ、お前たち」
「「えっ!?」」
ウォーさんの指摘に二人は驚く。
どうやら何か問題があったらしい。
一体、何が問題だったのだろうか?
「どうしてですか? こちらは一度も攻撃を受けていませんよ」
「消耗もしてないし、どこに問題が……」
二人は思わず反論してくる。
たしかに二人の言う通り、二人にはほとんど消耗がない。
戦闘を行う上で、ほぼ完璧な内容だと思うが……
「グレイン君が先ほどの状況だったら、どう戦う?」
「え? 俺ですか?」
いきなり話を戻してきたので、驚いてしまった。
というか、聞きたいのはこっちだったのだが、質問をされては仕方がない。
顎に手を当てて、少し考え込む。
「そうですね。狼系の魔物の特徴はその素早い動きですから、それを阻害するために魔法を放ち、動きを止めたところに一撃で息の根を止めますかね?」
とりあえず、俺は思いついたことを言ってみた。
今までいろんな種類の魔物と戦ってきているので、その魔物の特性に応じた戦い方は頭の中に入っている。
といっても、同じ形の魔物といっても、属性の違いや大きさの違いなのでさらに戦い方は異なってくるのだが……
そんな俺の話を聞いて、ウォーさんは再び視線を二人に戻す。
「お前たちとの戦い方の違いはわかるか?」
「え? 全体的に違うんじゃ……」
「俺たちは魔法は使えないし、そういうところじゃ……」
ウォーさんの質問に二人はそんな答えを口にする。
まあ、その答えは間違いではないだろう。
しかし、ウォーさんが言いたいのはそういうことではないはずだ。
「確かにお前たちは魔法を使えない。だが、だからといってグレイン君に近い戦い方ができないわけではない」
「「えっ!?」」
ウォーさんの言葉に二人が驚く。
自分たちが魔法を使えるとでも思ったのだろうか?
いや、流石にそれはないか?
驚く二人にウォーさんが説明を始める。
「お前たちとグレイン君の戦い方の違いは、相手の土俵で戦うか自分の土俵で戦うかの違いだ」
「土俵、ですか?」
「ああ。お前たちは相手が襲い掛かってくるのを見計らって、反撃をしていただろう。相手をよく見るという点では効率的ではあるが、常に後手に回ってしまう。失敗すれば、大ダメージを与えられることになるだろう」
「……なるほど」
「逆にグレイン君は自分の魔法で相手の動きを阻害し、自分の土俵に持ち込もうとしている。これがお前たちとの一番の違いだ」
「「……」」
ウォーさんの説明に二人は黙り込む。
自分たちの中では満点と思っていた戦い方がここまで否定されたのだ。
落ち込むのも仕方がない。
「お前たちは基本的に相手の心臓や頭を狙って攻撃をしていた。当たれば一撃で戦いは終わるかもしれないが、動物というのは本能的に急所への攻撃は避けようとする。そう簡単には当たらないだろう」
「「……なるほど」」
「お前たちの武器なら相手の四肢を狙って、攻撃をするべきだったな。当たれば動きが阻害されるし、避けられても向こうから攻めてくることも難しくなる」
「「なるほど」」
ウォーさんの説明に納得したような反応を示す。
成績も悪くない二人だからこそ、言っていることが正しいと理解できているのだろう。
これはあくまでもウォーさんの経験則ではあろうが、机上の空論よりも根拠はあるだろう。
「じゃあ、常に攻撃を仕掛けるべき、ということですか?」
「一概にそうは言いきれんな」
「え?」
「今回は足の速い狼型の魔物だった。だからこそ、まずは奴らの機動力を削ぐべきだというのが普通の考え方だ」
「そうですね」
「だが、もし熊型の魔物と相対した場合はどうだ?」
「え? えっと……」
ウォーさんの質問にロット先輩が口ごもる。
どう答えればいいのかわからないのだろう。
そんなロット先輩にウォー先輩は答えを告げる。
「答えは上半身を狙って攻撃する、だ」
「上半身、ですか?」
「ああ。熊型の魔物の怖いところは、あの巨体による体当たり、強力な前足による攻撃、噛みつきの三点だ。狼型の魔物とは違って、機動力による危険性はそこまで高くはない」
「だからこそ、攻撃を防ぐことに集中するべき、なんですね」
「そういうことだ。熊型の魔物と相対するときに一番注意するべきはその攻撃を受けることだから、その攻撃をさせないように立ちまわるべきなんだ」
「「なるほど」」
ウォーさんの説明に二人は納得したように頷く。
たしかにこれはわかりやすい。
彼の経験則はその魔物の特性に合わせた戦い方であり、初心者でも戦いやすいようにされている。
これは他の冒険者とかにも伝えるべきだろう。
まあ、面倒見のいい彼のことだから、すでに後輩へは伝えたりはしているのだろう。
「ちなみにグレイン君だったら、どう戦う?」
「そうですね……前足でも後ろ足でもいいので、魔法で斬り飛ばして、動けなくさせます」
「「「「「えっ!?」」」」」
俺の言葉でその場の空気が変わった。
だが、そのことに俺は気付かずに話を続ける。
「すべての足を斬り飛ばせばいいのでしょうけど、流石にそれは難しいでしょう。とりあえずは相手が動けなくなるように最低二本の脚は機能を奪っておきます」
「「「「「……」」」」」
「そして、動けなくなったところで魔物の頭に攻撃ですかね。首を切り落とすのが確実でしょうが、首の骨が頑丈だった場合を考慮して、大きな質量の物体で頭を潰すのが確実でしょう」
「「「「「……」」」」」
「あれ、どうしましたか?」
ここでようやく周囲の状況に気づいた。
明らかに俺への見る目が変わった。
一体、どうしたのだろうか?
「グレイン君」
「なんですか?」
「その戦い方は絶対に人に使うんじゃないぞ」
「いや、使いませんよっ!」
ウォーさんから心配げな表情でそんな忠告をされたので、俺は思わず反論してしまった。
彼には俺がそんな酷い事を人にするやつに見えるのだろうか。
そう思われるのは心外なのだが……
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今回出てくる戦い方はあくまで作者の個人的な考えで書いております。
実際に猛獣に遭遇した場合には使えないので、悪しからず……(あくまでファンタジーですので……)




