7-116 死んだ社畜は再び集合する
明けましておめでとうございます。
今年もよろしくお願いします。
ウォーさんと別れ、俺たちは宿に向かった。
冒険者の活動を行う上で、数日以上かかる任務の場合はまず宿屋をとるべきなのだ。
人間と言うのはやはり睡眠が大事で、野宿ではあまり疲れが取れない。
たとえ質の悪いベッドだとしても、きちんと宿に泊まった方がいいのだ。
まあ、質の悪いベッドなど貧乏な田舎でもないとあまりないのだが……
そして、軽く仮眠をとり、再び目を開けたときにはちょうど日が暮れるころだった。
宿屋の主人に聞いて、おすすめの店を聞きだした。
普段の行動範囲にはない場所に来た時、その地域の特産の料理を食べることも旅のだいご味である。
前世では、ブラック企業のせいで一か所に縛られ、他の地域の名産品を食べることができなかった。
その後悔から俺はこういう行動をとっているのだ。
食事をとりながら、シリウスたちと今後の方針を話し合う。
店を出ると、すでに月が高く昇っていた。
日が暮れてから数時間が経っているだろうから、俺たちは昼間に話した路地裏へと向かった。
すでにそこにはウォーさんたちが集まっていた。
「早いですね」
「冒険者にとって信頼は大事だからな。時間厳守を心掛けないと……」
俺の言葉にウォーさんがにやりと笑みを浮かべる。
見た目は怖いが、礼儀がしっかりとしている。
前世の大学時代、時間にものすごくルーズな知り合いがいた。
集合時間から数分に遅れることは当たり前、数時間遅れることすらざらにある酷い奴だった。
そのことで口論になってからは付き合いはなくなったが、性格が比較的まじめな俺とは完全に相容れないタイプのやつだった。
そいつに比べれば、この人との相性は格段にいいだろう。
「ところで、ロット先輩たちもついてくるんですか?」
俺は視線をずらし、なぜかこの場にいる先輩たちに質問をする。
そこには準備完了状態の二人の先輩がいた。
完全についてくる気満々である。
「エクレールとサンドラを助けるためだからな。僕たちも行かせてもらおう」
「俺たちだって、この二年間で実力はつけてきた。足手まといにはならないはずだ」
「……」
二人の言葉にどうするべきか悩む。
たしかに一目見ただけで、冒険者として成長をしているのは感じた。
だが、今回の件についてはどれほどの危険が待ち構えているのかわからない。
そんな状況に当事者とはいえ、先輩たちを連れて行ってもいいのだろうか?
ウォーさんに視線を向ける。
俺の視線に気づいた彼は優しい表情になり、口を開いた。
「こいつらをつれていってやろう。自分たちの仲間の危機を俺たちだけに任せるのは気が引けるのだろう」
「ですが、かなり危険だと思いますよ?」
「それぐらいこいつらも理解しているだろう。こいつらもCランクの冒険者だからな」
「え? もうそれだけ上がっているんですか?」
「……そこに驚くのか?」
俺の反応にウォーさんがあきれた表情を浮かべる。
いや、驚きもするだろう。
彼らは俺たちを除いて、学院での成績はかなりいい部類だった。
しかし、それはあくまで学生としての話だ。
卒業してまだ一年もたっていないのに、Cランクになっているなど誰が思うだろうか?
「学生時代も冒険者としてしっかりと活動していたからな」
「俺たちは全員が下位貴族か平民だからな、生活費を稼ぐために金が必要だったしな」
「……なるほど」
二人は学生時代の6年間も冒険者としてしっかりと稼いでいたようだ。
それならば、卒業して一年でCランクになってもおかしくはないのかもしれない。
それでも早い事には変わりないが……
「一応、ある程度の実力は俺も確認している。この程度のダンジョンならば、単体で戦っても問題はないだろう」
「ウォーさんが言うのなら、大丈夫なんでしょう。まあ、俺も後で確認はさせてもらいますが……」
「ああ、そうした方が良いだろうな。話で聞くのと、実際に見るのとでは違うしな」
俺の言葉にウォーさんが肯定する。
自身の目で見ることが大事であることの重要性を理解しているようだ。
こういう人と話をすると、本当に楽である。
世の中には俺の言っていることを全く理解しない者や理解するつもりがない者もいるのだ。
そういうやつに話すよりも話し甲斐がある。
それよりも……
「そちらのお姉さんは大丈夫ですか?」
「は? なんか文句あるの?」
俺が指摘をすると、サリーさんがにらみを利かせてくる。
相変わらず怒っているようだ。
だからこそ、俺は心配なのだ。
だが、そんな俺の心配をよそにウォーさんははっきりと告げてくる。
「これでも俺たちはベテランの冒険者だ。ダンジョン探索で不安になるようなことはしないさ」
「……そうは思えないんですけど」
「まあ、サリーは自分の感情を前面に出すタイプだから、仕方がないかもしれないな。こいつはカロンのことが心配で仕方がないんだよ」
「ちょっ、何を言ってんのよっ!」
ウォーさんの口をふさごうとするサリーさん。
だが、身長差のため彼女の手がウォーさんの口に届くことはない。
どっしりとしたウォーさんの周りをぴょんぴょんとサリーさんが飛び回る姿は、まるで大人と子供のようだ。
ちょっとほっこりする。
「ウォーさんが言うのなら、信じましょう。ですが、何か問題があったらそちらで対応してくださいね?」
「ああ、わかっているよ。グレイン君では火に油を注ぐことになりそうだからな」
「それって、俺が油を注いでいるんじゃなくて、その人が勝手に燃えているんですけどね?」
「そうだな」
俺の指摘にあっさりと頷くウォーさん。
そんな俺たちの会話を不満げな表情で聞くサリーさん。
あんたのことを話しているんだから、そんな不満げな表情を浮かべるなよ。
そういう態度が問題なんだぞ?
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