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【書籍化】小さな転生貴族、異世界でスローライフをはじめました  作者: 福音希望
第二章 小さな転生貴族は領地を歩く 【少年編1】
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閑話 妹は死んだ兄の足跡を辿りたい (追加)

日記風に書いてみました。

といっても、日記なんて書いたことがないので、いろいろおかしな感じになっていますが……

気にしない方向でお願いします。


 ○月×日


 目覚まし時計の音が耳に入り、私は目を覚ます。

 目を開くと、視界に入ってきたのはいつもの光景だった。

 目を覚ましたばかりのぼんやりとした頭でもそれが自分の部屋だとすぐに認識できるほど、なじみもある光景だった。

 だが、それでもなぜか私はその光景がおかしなものだと感じてしまった。

 なぜかというと、その部屋の色が暗かったからだ。

 別に黒っぽい色で統一しているとかそういうわけではない。

 むしろ、赤や黄色と言った暖色をメインに家具などを選んでいるので、いつもならばもっと明るかった──はずだった。

 気にしていても仕方がないので、私はベッドから起き上がる。

 頭が重くてだるい感じがあるのだが、いつもの流れでベッドから降りてしまったのだ。

 日常のなれと言う奴である。

 私は2階にある自室を出て、階段を下りてリビングに向かう。


「おはよう」


 リビングに入った私は両親に挨拶をする。

 そんな私の挨拶に二人ともきちんと返事をしてくれる。

 しかし、そんな二人の表情は一日の始まりのはずなのにかなり暗かった。

 それもそのはずである。


 私には兄が一人いる──いや、【いた(・・)】と表現する方が正しいか……1年ほど前に交通事故で亡くなってしまった。

 私とは年齢が一回り違い、亡くなった当時はまだ26歳だった兄は人を助けるために交通事故に遭ったらしい。

 「らしい」というのはあくまで人づてに聞いただけで。実際にその光景を見たわけではないからだ。

 兄は大学に入学したのを機に一人暮らしを始め、就職も実家から離れたその土地で決めてしまった。

 そのため、交通事故に遭ったという連絡は事故が起きてからそこそこ時間が経ってからになってしまった。

 まあ、即死だったらしいのでどれだけ近かったとしても死に目に立ち会うなんてことはできなかったが……


 兄が死んだことを軽く話しているように感じるかもしれないが、これでも私はかなりショックを受けている。

 兄とは年齢が一回りも離れているおかげか、ほとんど喧嘩をすることもなく可愛がられていた。

 といっても、ただ猫かわいがりをするだけではなく、私が悪い事をすればキッチリと叱ってくれる存在だった。

 まさに父親代わりの存在と言えるだろう……おっと、父親はまだ生きているか?

 仕事で忙しい父親の代わりに叱ってくれているので、あながち間違いではないのかもしれないけど……

 私はそんな兄のことが好きだった。

 よく女の子が子供のころに「将来はお父さんのお嫁さんになる」なんてことをよく言うらしいが、私はそれを兄に言っていたほどだ。

 そんな兄が死んだという話を聞いて、最初は信じられなかった。

 両親からその話を聞き、そのまま兄の住んでいた町まで車で向かった。

 静かに眠る兄の姿を見て、私は兄の死を受け入れざるを得なかった。

 普通は身近な人が亡くなれば簡単に受け入れられないという話があるが、私は驚くほど簡単に受け入れてしまっていた。


 兄が亡くなったことで周囲が慌ただしくなった。

 なぜなら、兄が亡くなった直接の原因は交通事故なのだが、当時の兄があんな場所にいることはおかしかった。

 帰路についていたようなのだが、事故が起こったのは朝方で一般的な社会人ならば出社してくるような時間だったのだ。

 それを不思議に思った両親はいろいろな方法で兄の勤め先についての情報を集め、そこがブラック企業であることを突き止めた。

 そして、それが理由で兄が疲弊していたことを訴えたのだ。

 だが、いくら人が死んだと言えど、直接的な原因が交通事故であるため、その企業を責めることは難しかった。

 複数の人が亡くなっていたり、自殺をした人がいればまだ話は変わっていたかもしれないが、現状で亡くなっていたのは兄だけだった。

 それを理由にブラック企業であるというのは無茶があり、今も続いている裁判は敗色が濃厚だった。

 まあ、私はその企業がブラック企業かどうかはどうでもよかった。

 それよりも今は私の受験のことだ。

 兄が亡くなってから1年が経ったので、私は中学3年生になっていた。

 自分で言うのもなんだが、運動も勉強もできるので正直学校の選択肢は困っていなかった。

 今の私なら、頑張らなくてもこの辺りのトップクラスの高校に行けるのだ。

 だが、私はそこを選ぶつもりはなかった。

 私が選ぶのは──兄の住んでいた辺りにある高校だった。

 別に兄がそこの高校に通っていたわけではない。

 兄も高校は地元の──それこそトップクラスの高校に籍を置き、その中でも群を抜いて頭がよかった。

 兄のことが好きならばそこに行くのが普通かもしれないが、私はなぜか兄の住んでいた辺りに行くことを望んでいた。

 なぜだかは私もわからない。

 ただ兄の住んでいた辺りに行って、兄がどんなことをしていたのか、どんな景色を見ていたのかを確認しようとしているのだろうか?

 自分でもわからないが、とりあえず私はそう希望していた。

 だが、残念ながら両親はそれに反対していた。

 私がそこにいくと、否が応でも兄のことを思い出し、その死の現実を突きつけられることになってしまうからだろう。

 自分たちにとって大事な息子が亡くなっているのだ。

 少しでもその事実から離れたいと思うのが人として当然だろう。 

 おそらく、私の方がおかしいと思う。

 だが、それでも私はそうしたいと望んでいる。

 だから、私は両親を説得していこうと思っている。

 まだ受験まで10ヵ月もあるのだ。

 それまでにどうにかして説得しないと……

 






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