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【書籍化】小さな転生貴族、異世界でスローライフをはじめました  作者: 福音希望
第二章 小さな転生貴族は領地を歩く 【少年編1】
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エピローグ 死んだ社畜は異世界で妹ができる (追加)

これで第二章は終わりです。

本日の16時に閑話を投稿する予定です。

そちらもよろしくお願いします。


 屋敷に戻ると、まず俺たちはエリザベスから説教を受けた。

 実はアレンはエリザベスたちに黙って俺とアリスを森へと連れて行っていたのだ。

 彼はこと戦闘に関してはプロなので俺たちならば大丈夫だと判断したのだが、エリザベスに話を通そうものなら確実に反対されると思ったのだそうだ。

 そのため、黙って俺たちを連れて行ったわけなのだが、彼は後で怒られるという可能性を考えていなかったのだろうか?

 勝手につれていけば、怒られることは確実だろうに……

 無事に帰ってきたことでエリザベスは俺とアリスを優しく抱き寄せた。

 まあ、いくらアレンがいるとはいえ、あんな森に俺たちのような子供が行けば心配するのも当然だろう。


 そんな家族らしい一幕が終わると、クリスが俺たちの後についてきた毛玉たちのことを聞いてきた。

 とりあえず、俺たちは森であった出来事を説明する。

 話を聞いているうちにエリザベスの顔色が赤くなっていく。

 これは別に照れているわけではなく、怒りで赤くなっているのだろう。

 なんせ、俺たちは子供なのに魔獣を相手してしまったのだから……

 当然、俺たちも説教をされた。

 だが、その説教はアレンの時ほど長くはなかった。

 この毛玉たちを助けるという行動を評価されたからだと思われる。

 別に打算などを考えていたつもりはなかったが、怒られる時間が減ったのなら毛玉たちを助けてよかったと思ってしまう。

 まあ、助けたはずなのに毛玉たちからは嫌われているのだが……

 その毛玉たちはなぜかエリザベスとクリスに近づき、可愛らしく体を摺り寄せる。

 そんな毛玉たちの行動に二人とも優しげな表情で毛玉たちの毛並みを撫でる。

 こいつら……助けた俺にはそんなことしないのに……

 なぜ、彼女たちにそんな行動をするのか──正直二人が羨ましく思ってしまった。


「「うっ!?」」

「「「「「っ!?」」」」」


 だが、そんな状況が急に一変する。

 突然、エリザベスとクリスの表情が苦しげなものに変わったからだ。

 その場にいた全員が二人の異常に驚く。

 けれど、すぐに何が起こったのかを理解することができた。

 おそらく二人とも破水したようだ。

 彼女たちが妊娠してから推定10か月程度──そろそろ生まれるころだとは思っていたのだが、まさかこんないきなりで、しかも二人同時になるとは思わなかった。

 いや、同時に妊娠が発覚したのだから可能性としてはあるかもしれないが、こういうのも個人差があるのだ。

 妊娠してから十月十日で出産すると言われているが、必ずしもその通りに生まれるわけではないのだ。

 妊婦の体調や周囲の環境によって、出産の時期がずれるものである。

 だから、同じ時期に妊娠が発覚した二人が同時に破水するなんて、結構珍しい事なのかもしれない。

 その後、すぐに村から産婆を呼び、女性陣は屋敷の一室にこもってしまった。

 この先は男の俺たちが役に立つことはないため、追い出された感じだ。

 俺たちはリビングでソファに座りながらお茶を飲んでいた。

 だが、二人が頑張っているのに俺たちはこんな風にのんびりしていていいのかと思ってしまい、落ち着くことができなかった。

 それはアレンやシリウスも同じようで、二人ともコップに手をつけることもなくそわそわしていた。

 そんな二人の姿を見て、俺は比較的落ち着いているのだと改めて実感することができた。

 といっても、油断するわけにはいかない。

 この世界はいくら魔法があるからといって、文明レベル的にはそこまで高くはない。

 当然、医療もそこまで発展しておらず、そんな状況では出産というのはかなりリスクの高い行為と言える。

 つまり、母子ともに確実な安全はないということだ。

 まあ、それは医療の発展している現代日本でもいえることではあるが……それよりも医療が発展していないこの異世界はより危険であるということだ。

 そう考えると、二人のことが心配になってきた。

 二人とも初めての出産ではないが、だからといって安心もしていられない。

 前回がうまく言ったからと言って、今回がうまくいく保証がないからだ。

 だが、現状俺たちにはどうすることもできない。

 今はただ二人とお腹の子供の無事を祈るだけである。

 そうこうしているうちに1時間が経ち、突然勢いよく扉が開いた。


「産まれましたよっ」

「何っ! 本当か?」


 部屋に入ってきたのはサーラで、彼女の言葉に父さんが激しく反応する。

 俺とシリウスもソファから立ち上がった。

 そして、そのままサーラの案内でエリザベスたちのもとに向かった。


「えっ!?」


 部屋に入ると、俺は思わず驚きの声を上げてしまった。

 そんな俺の反応にエリザベスがジト目を向けてくる。


「どうしたのよ? せっかく妹たちが産まれたんだから、もっと嬉しそうにしなさいよ。私たちがこんなに痛い思いをして産んだのよ?」

「いや、それはご苦労様だと思うけど……なんでその子たちがいるの?」


 エリザベスの言っていることはもっともであり、俺だって素直に子供が産まれたことを喜びたかった。

 だが、なぜかエリザベスもクリスも赤子とは別に毛玉をそれぞれ抱いていたのだ。

 そのことに驚き、嬉しいという感情が表情にあらわれなかったのだ。

 そんな俺の言葉にエリザベスは答える。


「いつの間にかこの子たちが布団にもぐりこんでいてね、ずっとそばにいてくれたみたいよ」

「……そうなんだ」

「けど、不思議なことに途中で痛みをあんまり感じなくなったのよね? なんでかしら?」

「……さあ?」


 女性の出産の痛みについては男の俺には理解できない。

 なので、彼女が途中から痛みがなくなったという話を聞いても、どう反応すればいいのかわからない。

 ちなみに、クリスも同じようでうんうんと頷いていた。

 だが、とりあえず彼女たちの痛みが途中から消えたという現象についてはある推論を立てることができる。

 さっき気が付いたのだが、この毛玉たちは珍しい属性を持っている。

 白い方が【聖属性】、黒い方が【闇属性】の魔力を有しているのだ。

 毛玉たちがその魔力を使うことで、二人の痛みをとった可能性があると俺は考えたわけだ。

 だが、俺はそのことについて二人に言うつもりはなかった。

 今は赤子が産まれたことを喜ぶべきだと思い、そのような情報は必要ないと思ったのだ。

 そう思った俺は二人のもとに近づいていく。

 そして、赤子の顔を覗く。

 50センチぐらいの小さな体躯の赤子は儚げで、守らないといけないと思ってしまった。

 まあ、同族で自分より弱いものを見れば守ろうと思う、それが生き物としての当然の感情だからだろう。

 と、ここで俺はあることに気が付いた。

 赤子の頭──前髪の一房の色がおかしいのだ。

 まだ産まれたばかりということでそこまで多く髪はないのだが、エリザベスの子供は紅、クリスの子供は水色の髪がほとんどを占めていた。

 だが、前髪の一房だけ色が変わっていたのだ。

 エリザベスの方が黒色、クリスの方が白色──奇しくも二人がそれぞれ抱えている毛玉たちと同じ色なのだ。

 果たして、これが何を意味しているのか……


………


……



 まあ、今はそんなことはどうでもいいか。

 とりあえず、二人の妹が無事に産まれたことを喜ばないと……

 久しく感じていなかった新たな家族ができるという感情に俺は自然と笑みがこぼれた。







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