7-62 死んだ社畜は説明する 1
「そういえば、どうしてアブソルシルバーイーターはグレインの魔法を壊さなかったんだい?」
シリウスがここで思い出したように聞いてきた。
「え? グレインの魔法を壊していた印象だけど……」
「そうだな。普通にグレインの魔法を喰らっていたし、尾や前足で壊してもいた気がするし……」
シリウスの言葉にアリスとティリスがそんな反応をする。
まあ、基本的にいうと、彼女たちの言う通りである。
俺の魔法はアブソルシルバーイーターに壊されていた。
まともにダメージを与えたのはウォータージェットぐらいだろう。
しかし、シリウスの言いたいことはそこではないだろう。
「僕が言いたいのは、アブソルシルバーイーターの口を覆っていた拘束の魔法だよ」
「「拘束の魔法?」」
シリウスの言葉に二人は首を傾げる。
全く思い出せないようだ。
まあ、二人は前線で戦うタイプなので、こちらの様子を気にすることが難しかったのかもしれないが……
そんな二人を置いて、シリウスがこちらに質問してくる。
「で、どうなんだい? アブソルシルバーイーターは魔銀の特性で魔法を使うことが出来たよね? しかも、土属性だったから、土の拘束具なら簡単に壊せると思ったんだけど……」
「たしかにそうですね。土属性ならば、土の拘束具で普通は拘束できるはずがないわね」
シリウスの説明にレヴィアが納得する。
彼女もまた複数属性の魔法を使うので、属性による恩恵などに詳しいのだ。
だが、二人はまだまだ知識が足りないな。
「あの拘束具には俺の魔力がかなり入っていたからな」
「「魔力が入っている?」」
俺の言葉に二人は首を傾げる。
だが、その表情は全く理解していないようではなかった。
俺が使った魔法であるのなら、俺の魔力が入って当然だと思っているのだろう。
まあ、そこは魔法を使う者としては常識的な内容だからな……
とりあえず、説明を続けよう。
「俺が魔法で作った──つまり、俺の魔力がこもっていることは理解できてるな?」
「うん、そうだね」
「当たり前のことですね」
「そして、俺の魔力がこもっているということは、それは俺の支配下にあるということだ」
「「……それが?」」
俺の説明を聞いて、二人は首を傾げる。
まだわからないようだ。
まあ、これは初めて聞いてもわからない内容かもしれない。
仕方がないので、もう少し噛み砕くか……
「俺の支配下にある──つまり、俺の許しなく変化させることが出来ないわけだ」
「「え?」」
俺の言葉に二人は驚きの声を漏らす。
それはそうだろう。
今まで、そんなことを考えもしなかっただろうから。
そんな風に驚く二人を見て、俺は説明を続ける。
「魔法は基本的に魔力によって発動する。つまり、魔力を使うことによって形を変化させられるし、権限は魔力を操作している者にあるわけだ」
「ちょっと待って」
「ん?」
と、ここでシリウスからストップが入った。
俺は話を中断する。
「グレインの話は確かに納得できる。でも、おかしい点が一つあるよ」
「なんだ?」
「アブソルシルバーイーターはグレインの魔法を尾や前足で壊していた筈だ。支配を受けているのなら、壊せないはずじゃ……」
ああ、そういういことか。
シリウスの疑問も納得である。
今の俺の話なら、それらも壊されることはなかったはずだ。
それについても説明しようか。
「この魔法の支配は完璧ではない。俺が全力で魔力を支配していたとしても、完璧になることはない」
「そうなの?」
「そして、魔法を支配を壊す方法は二つある」
俺は右手でピースサインをする。
別に写真を取るわけではない。
まあ、この世界にカメラなんて便利なものはないので、言っても意味は通じないだろうが……
俺は中指をたたみ、人差し指だけを立てる。
「まずは一つ目。より強力な魔力で支配権を奪う。これをすることによって、相手から魔力の支配権を奪って、自由に魔法を使うことが出来る」
「なるほど……それがグレインの全力の支配も完璧ではない、ということだね」
「ああ、そういうことだ。確かに俺は化け物級の魔力を持っているが、俺よりも強い魔力を持っている奴もいる。そんな奴から無理矢理にでも支配権を奪われたら、俺にはどうすることもできない」
「……そんな奴はそうそういないと思うけど……ということは、アブソルシルバーイーターはその魔力の支配権を奪ったってこと? でも、それなら口元の魔法も壊せたはずだし……」
俺の説明を聞き、シリウスがその結論に達する。
やはり理解してくれると、説明のし甲斐があるものだ。
レヴィアも同じように悩んでいる。
彼女も同様の疑問を感じているのだろう。
俺はそんなことに喜びを感じ、中指を立ててピースサインに戻す。
「そして、二つ目はそんな魔力も関係なしに、力で魔法を破壊する」
「「え?」」
二人から驚愕の声が漏れた。
まあ、普通はそんな答えに辿り着かないだろうからな。
というか、二人以外のメンツも驚いていた。
とりあえず、説明を続けようか。
「魔法であっても現実にあるものに変わりはない。つまり、【不壊】ではないということだ」
「……理屈はわかるけど、魔法ってそんな簡単に壊せるの?」
「簡単ではないな。だが、ある程度の実力を持っている者なら、それぐらいの芸当はできるだろうよ。身近なところだと、父さんやリオンさんがいい例だぞ」
「父さんとリオンさん?」
俺の言葉に全員が首を傾げる。
想像できないようだ。
だが、俺としてはあの二人ならそれぐらいの芸当は朝飯前だと思う。
「あの二人は普通に俺の魔法をぶった斬ってくれるからな。あれは純粋な攻撃だけで物質を壊し、魔力の支配を破壊しているわけだ」
「「ああ、なるほど」」
俺の説明を聞き、納得したように二人は頷く。
身近な人物を例にすることで、理解させることが出来てよかった。
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アブソルシルバーイーターについては次回に持ち越しです。
色々書いていたら、どんどん後回しになっていく。
一応理論は決まっているんですけどね?




