7-58 死んだ社畜は考察する 4
「近づけば、巨体と鋭い爪による攻撃。離れれば、魔法と尾による斬撃か……なかなか厄介な相手だな」
俺は今まで得られた情報からそのような結論に至った。
本当に面倒な相手である。
正直なところ、シリウスたちを全員シルバーイーターの相手に回したことが功を奏したと言えるだろう。
しかし……
「俺の方の攻撃もあまり通じていないことが問題なんだよな」
俺はそんなことを呟く。
現状、俺がアブソルシルバーイーターに対して効果的な攻撃ができるのかというと、そうではないと言わざるを得ない。
別にダメージを与える攻撃ができないわけではない。
ただダメージを与えるためにはそれ相応に溜めが必要になってくる。
だが、流石に奴がその時間を与えてくれるとは思えないのだ。
俺が相手に大ダメージを与えるためには基本的に魔法が必要になってくる。
強力な魔法を放つにしろ、魔法によって強化した身体能力で攻撃するにしろ、だ。
そして、相手は魔銀の特性を持っているわけだから、当然魔力の流れを感じる能力を持っているだろう。
だからこそ、壁の向こうにいる俺の存在とかも認識できたのだろう。
本当に面倒である。
『GLUAAAAAAH!』
そんなことを考えていると、雄叫びを上げながらアブソルシルバーイーターが突撃してきた。
俺の何倍もある巨体が猛スピードで突撃してくる、さながら前世で言うところの交通事故が思い出される。
もし、俺が前世で死んだときのことをはっきりと覚えていたのなら、フラッシュバックで動けなくなるかもしれない。
今ほど、前世で死ぬほど働かせたブラック企業に感謝したことはない。
そのおかげで俺は死んだときの苦しみをほとんど覚えていないからだ。
まあ、俺の死んだ一番の原因はブラック企業なので、感謝はほんの一粒程度しかないが……
(ブンッ)
アブソルシルバーイーターが右前足を鋭く振り下ろす。
俺はそれを左側に回り込み、回避する。
だが、アブソルシルバーイーターもその行動に対し、学習していたようだ。
(ダンッ……ブウンッ)
振り下ろした前足を地面に突き立てたかと思うと、それを軸に反時計回りに回転したのだ。
まさか、四足歩行の生物がそんな芸当ができるとは……
左側から勢いよく尾が襲い掛かってくる。
「ふんっ」
(ガッ……ズルッ)
俺は足から地面に魔力を流し、土の壁を生み出す。
今回は先程のようにまっすぐ上に、ではなく斜めにした状態で生み出した。
魔力を込める時間がなかったので、破壊される可能性が高いと考えたからだ。
それならば、受け流すように行動するのは当然だろう。
『GLUAH!?』
自身の攻撃が受け流されたことでアブソルシルバーイーターは驚愕の声を漏らす。
そして、驚いていたせいで俺への意識が散漫になっていた。
流石にその隙を俺は見逃さない。
(ガキンッ)
「ちっ!」
隙だらけになった腹部に身体強化を使った蹴りを放つが、やはりそこも硬かった。
こいつ、全身が魔銀で覆われているようだ。
さて、本当にどうするべきか……
急所のような弱点を探すべきなのだろうが、何の情報もない状態でするような行動ではない。
見つけるよりも先にこちらに何か甚大な被害を及ぼされる可能性があるからだ。
それほどまでに相手の弱点を見つけるということは容易ではない。
弱点とは、戦いのベテランが何度も戦うことによって、ようやく見つけることが出来るような代物なのだ。
まあ、時には偶然見つける場合もあるが……
とりあえず、四足歩行の生物でありそうな弱点を調べてみるか?
「おらっ!」
(ゴロンッ)
『GLUA?』
俺は横から勢いよく力を加え、アブソルシルバーイーターは仰向けに転がった。
アブソルシルバーイーターの両足はすべて下側についているので、仰向けになった時点ですべての足が地面につくことはない。
これならば、アブソルシルバーイーターが動けなくなるのでは……そんな淡い期待を胸にやってみたわけだ。
しかし……
(ゴロンッ)
「……」
やはり無駄だった。
いや、最初から分かっていたぞ?
前世では犬とか猫も仰向けに寝転がることがあって、自身の体で回転することで元の体勢に戻ることができていたのだ。
当然、それが犬や猫だけができることではないだろう。
アブソルシルバーイーターもそれができたわけだ。
「ふんっ!」
(ガキンッ)
次は後ろ足を思いっ切り蹴り飛ばした。
しかし、これはどちらかと言うと攻撃するための行動ではない。
足払いをして、相手のバランスを崩そうとしたわけだ。
しかし、その目論見も外れることになる。
(ゴロンッ)
右後ろ脚のバランスを崩されたことで、アブソルシルバーイーターは右側に転がりだしたからだ。
当然、そのままそこにいれば、俺は押しつぶされていただろう。
これが考えてした行動かはわからないが、俺に対しては的確な行動と言えるだろう。
本当に厄介な相手だ。
俺は一旦アブソルシルバーイーターから距離をとる。
そして、俺からの攻撃がやんだことで、アブソルシルバーイーターは体勢を元に戻した。
『GLUAH!』
俺が遠くにいることに気が付いたので、アブソルシルバーイーターは大きな口を開けて襲い掛かってきた。
魔銀も砕く顎で俺を喰らうつもりなのだろう。
だが、あいにくと俺は魔物に噛まれる趣味はない。
俺はアブソルシルバーイーターが噛みつくタイミングを見計らって、跳躍する。
(ガキンッ)
目標を無くした上下の歯が勢いよく合わさり、甲高い音を鳴らす。
だが、魔銀を砕くだけあって、歯にはひびの入った音すら聞こえてこなかった。
まあ、いくら強力とはいえ自分の力で壊れるようであれば、それは進化として失敗していると言わざるを得ないだろう。
だが、別にこれは予想の範囲内である。
俺がしたかったのは、これだけではなかった。
「おらあっ!」
(ガキイイイイイイイイインッ)
俺はアブソルシルバーイーターの鼻っ柱に思いっきり蹴りを叩き込む。
先ほどからこの辺りを攻撃されるのを嫌がっていた。
ここ、もしくはこことつながっている部分に弱点があるのではないのかと考えたからだ。
しかし、手ごたえから相手にダメージを与えた感じはなかった。
これははずれか、そう思ったが……
『GLUU……』
「ん?」
アブソルシルバーイーターが苦し気な声を上げていることに気がついた。
ダメージを食らっている様子はない。
だが、明らかに何か異常が起こったような様子だ。
さて、いったいこれはどういうことだろうか?
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メタルイーターの姿は当初、とある魔物を狩って素材にする有名なゲームに出てくるフ○フ○さんをイメージしていましたが、その姿だと身体特徴的な弱点が分からなかったので、変えようと思います。
とりあえず、噛み砕くという特徴からわにのようなイメージにしようと思います。
それならば、身体特徴的な弱点は一つだけ知っていますしね。
ちなみに、作者はその情報を知っているからと言っても、ワニに勝てるとは思えませんけど……




