表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【書籍化】小さな転生貴族、異世界でスローライフをはじめました  作者: 福音希望
第七章 成長した転生貴族は冒険者になる 【学院編2】
322/618

7-57 死んだ社畜は考察する 3


「……一体、どういうことだ?」


 突然のアブソルシルバーイーターの反応に俺は戸惑ってしまう。

 ダメージが通っているようには見えないが、それでも苦し気な声を出している。

 この矛盾がどういうことなのか、気になって仕方がないのだ。

 そんなことを悩んでいるせいで、反応が遅れてしまった。


(ズバッ)

「ぐっ!?」


 左肩から鋭い痛みを感じ、俺は苦し気な声を漏らす。

 視線を向けると、俺の左肩から血が噴き出ていた。

 肉ごと俺の肩が抉られていたのだ。

 当然、かなりの痛みが伴っている。


「「「「「グレイン(様)っ!?」」」」」


 突然、俺が怪我をしたことにシリウスたちが驚いたような反応を示す。

 まあ、俺がこんな大怪我をしたことなど、本当に久しぶりだからな。

 俺が怪我も病気もしない化け物のように思っているのなら、当然驚いてしまうだろう。

 だが、シリウスたちがそんな風に驚いてくれたおかげで、逆に俺は落ち着くことが出来た。

 そのため、しっかりと注意しておく。


「俺のことは気にするなっ! 今は自分の相手だけを気にしていろっ!」

「「「「「っ!?」」」」」


 俺の言葉に全員が躊躇うような反応を示す。

 俺のことを心配しているからこそ、この指示に従うかを躊躇っているのだろう。

 しかし、そんな心配などすぐにできなくなった。


「「「「「ガアアアアアアアッ」」」」」

「「「「「っ!?」」」」」


 攻撃がやんだことで、シルバーイーターたちがシリウスたちに反撃を開始したのだ。

 まあ、いくら圧倒的な実力差があったとしても、攻撃をしなければ反撃をされるのは当然のことだ。

 というか、攻撃をしていたとしても、隙があれば反撃はされるのだから……


「さて、俺はこっちに集中しないとな……」


 俺は意識をシリウスたちからアブソルシルバーイーターに向ける。

 いくら俺の意識が反れていたからといって、まさかあれほどのダメージを受けるとは思わなかった。

 しかし、俺はわからなかった。

 アブソルシルバーイーターがどのような攻撃をしたのか。

 アブソルシルバーイーターはかなりの巨体である。

 そんな巨体が近づいて俺に直接攻撃をしようものなら、確実に気づくことが出来る。

 流石に意識を向けていなくとも、それを見逃すことはないだろう。

 逆に魔法による遠距離の攻撃だとしても、それこそ俺が見逃すことはない。

 魔力の流れを子供のころから身近に感じていたせいで、どのような魔力を流れているかを無意識に感じることが出来るのだ。

 そのため、アブソルシルバーイーターが魔法を使った時点で気づくことが出来る。

 そこから導き出される答えは……


「魔法を使わない遠距離攻撃か?」


 俺は呟いた。

 しかし、一体どうやって?

 アブソルシルバーイーターの姿を見る限り、とても遠距離攻撃をするような見た目をしていない。

 鳥系の魔物だったら羽を使った遠距離攻撃をすることがあるらしい。

 武器などを装備している魔物は時折それらを投擲することがある。

 ドラゴンはそれぞれの属性にちなんだ息吹(ブレス)を吐くことが出来る。

 他にもいろんな遠距離攻撃の手段があるが、アブソルシルバーイーターが俺の知るどの手段も使っていないことがわかる。

 一体、どうやって……


『GLUAAAAAA!』

「くっ!?」


 俺が悩んでいる間に好機だと感じたのか、アブソルシルバーイーターが襲い掛かってきた。

 振り下ろされた右の前足が振り下ろされ、鋭い爪がキラリと光る。

 俺はギリギリのところでそれを回避する。

 だが、逃げ続けても意味はないので、俺は隙を突いて攻撃をする。


「ふんっ!」

(ガアアアンッ)

『GLUU……』


 俺の掌底がアブソルシルバーイーターの左頬を打ち抜く。

 相変わらず硬い皮膚ではあるが、アブソルシルバーイーターは苦し気な声を上げる。

 これは顔を攻撃されるのを嫌っているのか?

 他の部分と同じように硬い皮膚に覆われているが、顔辺りを攻撃されることに対しては嫌悪感を持っているのかもしれない。

 しかし、どうしてそんな反応をするのかはまだわからない。


『GLUAH!』

(ブワアアアッ)

「ちっ!?」


 今度はアブソルシルバーイーターは右足を振り上げた。

 地面を一気に抉ったことでその破片が俺に向かって飛んできた。

 この程度が直撃したところでダメージなどないに等しいが、受けるのは愚策である。

 先ほどのように壁の向こうから襲い掛かってこられる可能性があるからだ。

 ならば、俺がとれる選択肢は回避一択である。

 アブソルシルバーイーターが右足で攻撃する癖があるようなので、俺は左側に移動する。

 だが、そこでアブソルシルバーイーターのある動きを見た。


(グルッ……)


 アブソルシルバーイーターは全身をしならせながら、大きく回転をしていた。

 相手の動きに疑問を感じていたが、すぐに何をしているのかに気が付いた。

 何度も回転しているうちに、速度が上がっていた。

 そして、それに伴って尾のしなりも大きくなっていく。


『GLUAH!』

(ザッ)


 自分の満足できる速度に達したのか、大きな鳴き声と共にアブソルシルバーイーターはすべての足に力を込めて回転を止める。

 全身の回転が止まったが、尾だけは回転の勢いを残したままで……


(ブワッ)

「っ!?」


 尾がしなり、突風を引き起こした。

 俺は嫌な予感がして、思わず上体を反らした。

 先ほどまで俺の胸のあたりだった場所から上を突風が通過する。

 そして──


(ズガガガガガッ──)

「……」


 壁に大きな横薙ぎの亀裂が出来ていた。

 これには俺も声を出すことが出来なかった。

 それはそうだろう。

 いくら勢いが良かったとはいえ、風だけであんなことが出来るとは思わなかった。

 あれはもう風なんて生ぬるいものではなく、斬撃と呼ぶべきものである。

 【飛ぶ斬撃】と言ったところかな?

 とりあえず、そんな芸当をアブソルシルバーイーターは尾で起こすことができるわけだ。

 そして、この光景を見て、俺は合点がいった。


「この傷はその尾でやったわけか……」


 俺はズキズキと痛む傷を抑えながら、アブソルシルバーイーターを睨み付けた。

 まさかそんな攻撃で傷を負うとは思わなかった。

 まあ、原因は俺の油断なのかもしれないが……






ブックマーク・評価・レビュー等は作者のやる気につながるので、是非お願いします。

勝手にランキングの方もよろしくお願いします。


よくよく考えてみたら、タイトルがおかしい気が……

なんで戦いの最中に主人公は考察しているのだろうか?

いや、相手のことを調べているので間違ってはいないと思うけど……

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ