2-3 死んだ社畜は怖い女性と出会う (改訂)
ポケモンGOでミニリュウの色違いをゲット。
ただ、カイリューの色はどうかと思うわ~
「おい、坊主! 大丈夫なのか?」
「燃えている槍を掴んだんですか? 火傷をするので、早く離してください」
「いえ、大丈夫ですよ? きちんと手を魔法でコーティングしていますから」
慌てた様子で声をかけてきた二人の男性に俺は心配ない事を伝える。
自分たちのせいとはいえ、怪我をしたかもしれない人間に対してすぐに声をかけることができるのは立派だと思う。
自分たちが悪い事をしたという自覚を持っているからこそできたのだろう。
とりあえず、俺の方に槍が飛んできたことについては怒らないでおこう。
「コーティング? それは手の周りにある水の膜みたいなものか?」
「っ!? こんな子供がこれほどの魔法をっ!?」
「なんだ? すごいのか?」
「すごいなんてものじゃない。子供がこんな芸当ができるなんて、まさに【神童】と呼ばれてもおかしくはないレベルなんだぞ」
「……イマイチすごさが分からないな。どう見ても、攻撃には役立たない気が……」
「なんでも攻撃の枠にあてはめるなっ! つくづく君は脳筋だな」
「なんだとっ!? てめえこそ言っていることが全部理屈っぽいじゃねえか。回りくどく言わず、男ならはっきりと言いやがれ」
「「むむむ……」」
二人の男性がまた喧嘩をし始める。
見ている分には面白く、なんであんな風に人混みができていたのかを理解することはできたが、このまま喧嘩が再開されたてしまうとまたあんなことになりかねない。
先ほどは俺の方に飛んできたから大丈夫だったが、おそらく他の人だと大惨事になりかねない。
というか、普通に死人が出るのではないだろうか?
さて、どうやって止めようか……そんなことを考えていると、
「何をやっているんだい、二人ともっ!」
「ん?」
いきなり俺の耳に大声が聞こえてきた。
声の方に振り向くと、そこには一人の女性が立っていた。
大体身長は170センチぐらいだろうか、女性にしてはかなり高い部類になるだろう。
しかも、背の高さと比例して全体的にいろいろと大きく、まさにグラマラスと呼んでいい女性かもしれない。
だが、グラマラスだからと言って無駄な肉(無い者たちからの僻み?)がついているわけではない。
常日頃から体を動かしているのだろうか、全身に筋肉がついていることは傍目にもわかる。といっても、ボディービルダーのような体つきではなく、スポーツをしているような女性の体つきだった。
黒髪のポニーテールがさらに彼女の活動的な印象を高めている。
吊り目で勝気な印象を与え、まさに姉御と呼ばれるような雰囲気の持ち主で、趣味なのかもしれないが肌の露出の多い衣服を身に付けている。
正直、男としては目線に困る相手である。
年齢は20代後半ぐらいだろうか、前世の俺だったら声をかけてしまいそうなぐらいである。
「「ろ、ローゼスさんっ!?」」
その女性の登場に気付いた二人が驚きの声を上げる。
そして、なぜか2人そろって全身を震わせていた。
もしかすると、二人ともこの女性のことが怖いのかもしれない。
彼女はいったい何者なのだろうか?
「お前たち、また問題を起こしたんじゃないだろうな? 次に喧嘩したらただじゃ済まさない、って前に言ったよな?」
「も、問題なんて滅相もないっ!」
「ぼ、僕たちは仲良くしてますよっ!」
女性の言葉に体を更に震わせながら、男たちが答える。
答えている内容もだが、先ほどからこの男たちのキャラ崩壊がとんでもないことになっている。
タイプは違うか、どちらもかっこいい感じの男だと思っていたのだが……
「本当か?」
「「はいっ」」
「ふむ……」
男達の元気のいい返事に女性が顎に手を当てて考え込む。
見たところ信じてはいない様子だが、だからといって二人の言い分をどうするべきか悩んでいるようだった。
そんな感じで数秒悩んだ後、不意に目が合った。
そして、声をかけられた。
「そこの少年」
「はい、なんですか?」
「「っ!?」」
ローゼスと呼ばれた女性が俺に声をかけた瞬間、二人の男は驚愕の表情を浮かべる。
俺という目撃者に話を聞くという流れで、自分たちが喧嘩をしたことがバレるということを恐れたのだろう。
そんな二人の様子を見ていた他の村人たちは楽しそうに見ていた。
「君もこの辺りにいたようだから聞くが、この二人は喧嘩をしていたか?」
「……」
彼女の質問にどう答えたものか悩んでしまう。
正直に起こったことを話すのが筋なのかもしれないが。本当のことを話してしまうと二人の命が危ない気がする。
別に彼女が人殺しとかそういう人種であると言っているわけではないのだが、屈強な男性二人があれほど怯えているのだから、それ相応の罰が下されると言っても過言ではないだろう。
だって、現に二人は俺の方を捨てられたチワワのような目で見てきており、いろんな意味でかわいそうになってきたからだ。
「どうなんだい?」
「はい、喧嘩をしていましたよ」
「「っ!?」」
俺があっさりと白状したことに二人は目を見開いた。
だが、俺にだって白状した理由があるのだ。
ローゼスという女性が怖かったというのもあるが……
「グレイン様、正直に話すのは良い事です」
質問をされた瞬間、後ろから俺のことをリュコが睨みつけていたため嘘がつけなかったのだ。
もし、あの場で嘘をついていたら、彼女の説教を受けたうえで告げ口をされる可能性が高かった。そのままエリザベスの説教コースにつながっていた筈だ。
俺の身の安全のために二人を売ったわけである。
「ほう……」
俺の返事を聞いた彼女は獰猛な笑みを浮かべながら目を細める。
その表情を見て、俺は思わず体を震わせてしまう。
呼び起こしてはいけないものを呼び起こしてしまった、そんな感覚が全身を駆け巡ったのだ。
「おい……」
「「ひいいいいいいいいいいいっ!?」」
それは二人も同様で、声をかけられた瞬間に悲鳴を上げていた。
先ほどまではあれだけ言い争いをしていたのに、今では泣きながらお互いの体を抱きしめあっていた。
どれほど怖いんだろうか?
あと、そんな二人の様子を見て、一部の村人(女性)たちがなぜか息を荒げていた。
しかも目つきがローゼスさんとは違う意味でやばくなっており、いろいろと心配になってしまう光景だった。
心配で声をかけようか悩んだが、なぜかこれ以上は踏み込んではいけないという気持ちが俺の行動にブレーキをかけた。
まあ、健康に問題はなさそうだから大丈夫だろう。
とりあえず、今は男二人の方に意識を戻そう。
「お前たち……私に嘘をついたということでいいのか?」
「「は、はい……」」
「嘘をついたらどうなるか教えたことがあるよな? どうして守らないんだ?」
「「う、うう……」」
彼女の質問に答えづらそうにその場でうつむいてしまう。
どれほど怖いんだろうか?
たしかに彼女は女性にしては体が大きいとはいえ、男性である二人に比べれば体は小さい。
細身の方の男性と比べても小さく感じるため、彼女が怒ったとしても普通はそこまで怖くは感じないと思う。
一体、彼らの過去に何があったというのだろうか?
「お前たちの説教はあとでする。今は開店の準備で忙しいから、早く店に戻らないといけないからな」
「「は、はい……」」
彼女の言葉に二人は絶望の表情を浮かべる。
まあ、説教が先延ばしにされただけなので、恐怖がより長く続くことになったからだろう。
可哀そうに……
しかし、彼女は何か店をやっているのか?
こんな村でもそういうのがあるんだな……
「とりあえず……フンッ」
「「えっ!? (ガンッ)がふっ!」」
ローゼスさんの拳骨が二人の頭に落ちた。
殴られた二人は痛みのあまりその場で倒れてしまう。
あまりの光景に俺は思わず言葉を失ってしまった。
そんな俺に向かって、ローゼスさんが声をかけてくる。
「うちの人間が迷惑をかけたみたいだね、少年」
「い、いえ……そんなことは……」
先ほどの行動に驚いた俺は返事がたどたどしくなってしまった。
なんせ、彼女は先程の拳骨に強化魔法をどっぷりと掛けていたからだ。
普通に考えれば女性の細腕では大柄な男などダメージすら与えられるか怪しいのだが、強化魔法を使うことによりかなりの威力の拳骨になっていた。
下手したら頭蓋骨が陥没しているレベルに……
「今回のお詫びをしたいから、【フォアローゼス】という店に来てくれ」
「わ、わかりました」
「じゃあ、またな」
女性はそういうと二人の男性の襟首を掴み、そのまま引きずっていった。
流石に体格的に二人も男性を担ぐのは無理だったようだが、それでも女性の力で二人の男を引っ張っていくことができるのは相当すごい。
流石は強化魔法である。
さて、お詫びをしたいと言われたが、どうするべきか……
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