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【書籍化】小さな転生貴族、異世界でスローライフをはじめました  作者: 福音希望
第四章 小さな転生貴族は暴走する 【少年編3】
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閑話7 王都の祖父は孫たちを心待ちにする

※4月6日に更新しました。


 今回はまだ出ていないキャラクターの話です。

 正確には、話にだけは出ています。


 王都にある歴史ある屋敷の一室。

 60歳前後の男性が執事から報告を聞いていた。


「何? ガフの馬鹿息子が孫娘たちを誘拐したじゃと?」

「そのようです。ですが、すでにカルヴァドス男爵が解決したようです」

「ふん。誘拐された時点で問題じゃ。だから、王都に住めと言っていたのに」


 男性は怒りを露わにする。

 そんな主人の様子を気にすることなく、執事は話を続ける。


「ちなみに、その一連の結果、ガフ伯爵領にあった聖光教の支部が消滅、ガフ伯爵本人は行方不明となっています」

「愚か者には当然の報いじゃな」

「その件について、カルヴァドス男爵は王家から説明を求められています。近々、王都にくるでしょう」

「何じゃとっ!」


 執事の話に男性は食いついた。

 その反応を予想していたのか、執事は微動だにしなかった。


「つまり、クリスが帰ってくるのじゃな」

「そういうことですね。といっても、一時的ですが……」

「一時的でも良い。いや、あんな辺境よりもこっちにいたいと思えば良いな」

「それは難しいと思いますよ。お嬢様もカルヴァドス男爵と共に過ごしたいからわざわざ嫁いでいったんですよ」

「……」


 執事の指摘に男性は黙り込む。

 あまり思い出したくない過去だった。


「嫌なら、お嬢様の頼みを断らなければ良かったのに」

「そんなことをしたら、クリスに嫌われるじゃろ」

「そうでしょうね。というか、下手したら駆け落ちとかされてたんじゃないですか?」

「やめろ、想像したくない」


 嫌な想像に男性は頭を抱える。

 ただでさえ愛娘を奪われたショックが癒えていないのに、想像とはいえ離ればなれになるのはかなりきつかった。

 執事はとっとと立ち直って欲しいと思っていたが……


「一時的でも戻ってきてくださるんですから、もっと喜びましょう」

「それはそうじゃが……」


 男性はなんとも言えない気持ちになる。

 愛娘に会えることは嬉しいが、同時に憎い相手と会うことにもなる。

 素直に喜べない。


「お孫さんと初めて会えるのですから、もう少し喜んだらどうですか?」

「むぅ……たしかに会いたい」


 男性の気持ちが揺れる。

 祖父として、孫たちに会いたかった。

 手紙で存在は知っていたが、今まで会えなかった。

 せっかくのチャンスなのだから、逃すわけにはいかない。


「仕方がないか。儂が折れるとしよう」

「わがままを言っているのは旦那様ですけどね?」

「うるさい」


 執事の無礼な言葉に男性は短く怒る。

 だが、必要以上に避難はしなかった。

 幼い頃から兄弟のように過ごしてきたので、身分は違えどこんな軽口を言う程度には仲が良かった。


「まあ、旦那様がなんと言おうと、カルヴァドス男爵一行が王都に来ることは確定ですけどね。王家主催のパーティーがありますから」

「面倒じゃのう。クリスたちと会う時間が減るじゃないか」

「面倒でも行かないといけないです。叛意ありと捉えられますよ?」

「そんなものがないことぐらい、あの小僧もわかっておるじゃろ」

「それでもです。周囲からそんな風に思われること自体がまずいことぐらいわかっているでしょう?」

「むぅ……」


 男性は不貞腐れる。

 言われていたことはわかっているが、それでも面倒なことには変わりない。

 そんなことをするぐらいなら、可愛い孫たちに会うために遠出をしたい。


「あの小僧に挨拶するぐらいならまだしも、馬鹿息子どもにはしたくないのう。あいつら、礼儀知らずじゃし」

「……不敬罪に問われますよ?」

「聞いておるのがお前だけじゃから、問題ないわ。それにお前も思っておることじゃろ?」

「……否定はできません」


 主人をたしなめつつ、同じ事を考えていた執事。

 だからこそ、主人を売るようなまねは決してしない。


「あの二人のどちらかが選ばれるなら、この国から出ようかのう」

「冗談でもそんなことは言わないでください」


 思わず真剣な表情で止める執事。

 主人の顔が明らかに本気だったからだ。

 それほどまで未来を憂いていた。


「一番上なら問題はないんじゃがな」

「たしかに一番ふさわしいと思いますが、周囲がそれを許さないでしょうね」

「まったく、面倒なことになったわい」


 男性はため息をつく。

 自分の力で解決できるのなら良いが、できることにも限度がある。

 この件は自分の持てる権力をすべて使ってもどうにもできない。

 そのため、歯がゆい思いをしていた。


「可愛いお孫さんのために頑張ってください」

「そうじゃな……できることはしておこう」


 執事の言葉に男性は重い腰を上げる。

 面倒なことではあるが、可愛い孫たちのためなら頑張れる気がする。

 そしたら、もっと頻繁に来てくれるかもしれない。

 男性はそんなことを期待していた。






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