プロローグ 疲れ果てた社畜は…… (追加)
※主人公の一人称が「俺」と「僕」が入り混じっていますが、誤字ではありません。(間違っている部分はある可能性がありますが……)
基本的には「俺」が一人称で、心の中や親しい人相手にはこちらの一人称を使います。
「僕」については、目上の人や礼儀に厳しい人の前でこちらを使うことになります。
※今作の主人公のコンセプトは「断れない性格のせいで社畜になってしまった主人公は異世界転生してもいろいろと巻き込まれる」です。実際にいる社畜の方についてはわかりませんが、別にいない可能性はないと思っています。ちなみに作者はアルバイト経験しかありませんので、実際の社畜がどのような人なのかは知らないので、想像で考えています。
※作者の執筆スタイルは大まかなストーリーを(頭の中で)考え、それをもとに各話を書いていきます。1話3000字程度を1時間程度で執筆にしています。書きながら、こういう話もええかなと思って書いているので、後付けでいろいろと加えており、徐々にいろいろと変化していくことがあるので、生暖かい目で見ていただけるとありがたいです。
ちなみに誤字脱字と思われがちですが、時折作者の出身地の方言(関西の西部辺り)のも混ざっているので、報告された場合でも直していませんので悪しからず……
(日本有数のガラの悪い方言として有名なので)強い語気で言うときに雰囲気を出すために使っていますので、気にしない方向でお願いします。
「あぁ……体が重い」
会社からの帰り道、俺はふらふらになりながらそんなことを呟いていた。
現在の時刻は8時を少し過ぎたぐらい、世間一般的な社会人が帰宅をする時間ではなかったりする。
というか、むしろ出勤する時間ではないだろうか?
では、なぜ俺がこんな時間に家に帰ろうとしているのかというと……
「あの課長、俺にばっかり仕事を回してきやがって……」
俺はこんな時間に帰ることになった原因──仕事を押し付けてきた上司に対する恨み言を呟く。
俺の直属の上司ははっきりと言わせてもらうとあまり評判はよくない。
性格が悪い、仕事ができない、女性社員にセクハラをする、部下の手柄を横取りする、常日頃から下に偉そうな態度を取っているのに上には媚びているなどの様々な悪行を働いており、いつ訴えられるのかといった段階になってしまっていたりする。
そんな上司から仕事を渡されても断ればいいのかもしれないが、そこが俺の駄目なところ──上司から与えられた仕事は終わらせないと気が済まないという社畜根性のせいで断ることができないのだ。
そして、なまじ仕事ができるせいか、課長はどんどん俺に仕事を渡してくる。
そのせいで俺の仕事量は激増し、課長は社内での評判を上げていく。部署内での評判は低い癖に……
「はぁ……仕事、辞めようかな?」
俺は思わずそんなことを呟いてしまう。
正直なところ、俺は肉体的にも精神的にも限界に来ていたりする。
明らかに普通の人の数倍──いや、数十倍の仕事をこなしており、労働基準法など違反どころの話ではない。
そんなところで働き続けていたら、いずれ過労死するのは目に見えているはずだ。
その前にどうにかして辞めないといけないわけだが……
「絶対に引き留めてくるだろうな……」
俺の頭の中に課長と部下たちの顔が思い浮かぶ。
これは俺がもし会社を辞めようとした場合に止めようとしてくれる人たちの顔である。
といっても、それぞれで止める理由は異なってくるが……
「……」
と、ここでふと車が行き交っている道路に目を向ける。
そこである考えが思い浮かんでくる。
「……死んだら止められる心配もないか?」
そんな末期的な考えが思い浮かぶぐらい俺は思い詰めているようだった。
自分で命を落とすというのは人間として一番追い詰められている状態であり、そのレベルの人間は即座に精神科などに相談しに行くべきだと思われる。
だが、俺にはそんなところに相談しに行く時間はないわけだが……
「いや、やめた方が良いな。ここで自殺しようものなら、撥ねた運転手に迷惑がかかっちまう」
俺はあと一歩のところで自殺を思いとどまる。
自分の命を粗末に扱うのは褒められたことではないが、その人の勝手だろう。
だが、その行動で人様に迷惑をかけるのは絶対にやってはいけない。
俺のせいで人の人生を狂わしてしまうことになることは絶対に避けないといけないわけだ。
そんなことを考えていると、ふとある光景が目に入る。
(ガンッ、ガンッ)
「ん?」
トラックがフラフラと蛇行運転しながら走っていた。
ガードレールにぶつかったりしていることから、明らかに正常な運転ではない。
これはまずいのではないか、そう思った俺は周囲を見渡す。
だが、そこで間の悪いことに近くの横断歩道を一人の少女が渡っていたのだ。
彼女はうつむいているせいなのか、考え事をしているせいなのか、トラックの異常に気付いていないようだった。
このままでは彼女が轢かれてしまう。
そう思った俺は荷物を捨てて走り出した。
ガードレールを乗り越え、彼女に向かって一直線に走っていった。
ちょうど車があまり走っていなくてよかった。
「危ないっ」
(ドンッ)
「えっ!? きゃっ!?」
俺に突き飛ばされた少女は短く悲鳴を上げながら、歩道に転んだ。
これで彼女が轢かれる心配はかなり低くなったはずだ。
だが、そのせいで……
(キキイイイイイイイイイイイイイイイッ……バンッ)
「うっ!?」
俺は視界にライトの光を映した瞬間、トラックに撥ねられることになってしまった。
ブレーキの音が聞こえてきたので、運転手は事前に気付いてくれたのかもしれない。
だが、それでもこの事故を止めることはできなかったようだ。
結果として、俺を撥ねてしまったわけだ。
だが、これでよかったのかもしれない。
どちらにしろ運転手は罰せられるはずなので、彼に関して俺が心配することはない。
脇見運転か居眠り運転かはわからないが、人に迷惑をかけたのだからそれ相応の罰を受けなければならないのだから仕方がない。
「きゃああああああああああああああっ」
薄れゆく意識の中で俺の耳に少女の悲鳴が聞こえてくる。
そう遠くない距離のようなので、おそらく俺が助けた少女の声だろう。
人が目の前で事故に遭うなんてショッキングな光景を間近で見せてしまうことになってしまったのは申し訳ない。
だが、君の命が助かったのだからそれで勘弁してもらえないだろうか?
俺は心の中でそんなことを思った……まあ、口に出していないので、当然伝わるはずもないのだが……
(ドンッ)
「か、はっ!?」
背中に強い衝撃を受け、肺から空気が出ていくのを感じる。
息苦しく感じるのだが、なぜか息を吸うことができなかった。
自分の思うように体が動かないのだ。
「(ああ……これは……)」
そして、俺の視界はそのまま暗転してしまった。
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