特務の制服
「ふむふむ、なるほど。つまり君はスミアが追いかけていた宝物泥棒が落とした石から声を聞いた。そして、それを割ってみると単なる石ではなくホロウストーンと呼ばれる精霊が宿っているものだったと。そういうことかね?〈シクス〉アルバトス・デュラン。」
「はい、その通りです。それから街の警鐘を聞いた僕は居ても立っても居られずに街に飛び込みあいつらに剣を振っていました。」
アルは今までの事を自分の過去を隠し全て伝えた。
「そうか、大体の事情は分かった。もう日も暮れてきたから君の〈シクス〉としての活動の説明は明日にしよう。今日から城に住むといい。君も、クリア様もね。寝床は...そうだなぁ王族特務の部屋が3部屋あるから3番目の空いているベッドを使ってくれ。あとの説明はスミアに任せるよ。〈ファイス〉!」
グレンが呼んだ途端スミアが入ってきた。それぞれコードネームがあるらしい。
クリアは図々しい態度で、アルはキチンとお辞儀をして謁見を終えた。扉をしめると
「ねえ、アルくん、クリアちゃん。どうだった?」
だからクリアちゃんて呼ぶな!と言う前にアルが
「なんと言うか、凄い威厳がありましたよね...僕、王族特務を明日から名乗れって言われたんですけどどうすればいいんですかね...」
スミアが目を丸くする。
「え?えぇぇぇ!!!き、君も王族特務に選ばれちゃったの!?」
あまりの驚き様に王様に聞こえるんじゃないかと思ったが大丈夫の様だ。あ、そういえば3番目の部屋ってと思い。
「ま、まあそうなんですけど。王族特務の3番目の部屋って何処なんですか?そこに寝ろって言われたんですけど。す、スミアさん?スミアさん!?」
スミアの顔が赤い。どうしたものか
「あぁ。うん。3番目はね?私の部屋なの。うん。わかった。ついてきて...」
赤面...アルは一瞬にして茹でタコになった。
しかしーー
動揺していたのは二人だけでなかった。
(...................。はぁ!?なっんでよりによってこのアマが同じ部屋なワケ?は?あの王様消し炭にしてやろうか?あ?部屋の采配間違えてるだろ。王国、お前の代で最後にするよ?)
クリアに至っては猛烈な嫉妬心からだった。
そんな三人はうなだれながら部屋へ向かった。最初はまあベッドも違うし大丈夫であろうと思っていた、アルだかそれは間違っていた事に気付く。
スミアが扉を開くとそこにはいかにもスミアの女の子らしい部屋が広がっておりベッドは1つ、ではなく2つが無理やり繋げられておりベッド2個分、いわゆるダブルベットってやつになっていた。
内心喜びながらもそろそろ血管が切れるのではと言うくらい赤くなっているアルと、なんで過去の自分はダブルベットにしてしまったのだろうと後悔するスミア、そして自分の寝る場所が無いと気づいてしまったクリア。
沈黙が漂う....
「ま、まあなんとかなるから、と、とりあえず入ってよ。」と沈黙を打破すべくスミアが話す。
「は、はい。どどど、どうにかなりますよね。こんなん。」顔が真っ赤だが沈黙はそれより気まづいと思ったアルが繋げる。
(…………。)今にも泣きそうなクリア。アルがふとクリアの方を向くと、もう幼女が泣きそうになっているようにしか見えなかったが、理由がイマイチわからないので放って置くことにした。
「そこのイスに腰掛けて置いてよ。今お茶でも持ってくるからさ。いやー、まさかね。君と一緒の部屋に住むなんて思ってもいなかったよ?まあ確かに国王の采配ならしょうがないけどさ......死ね王様。」
「!!!ぁぁぁあ、ご、ゴメンナサイッ!」
「いや全然大丈夫だよ。うん。アルくんは悪く無いんだよ?悪いのはあの玉座に踏ん反り返ってるクズだから。」
「そうなんですかねぇ...そうしときましょうか。スミアさん。僕、今日は床で寝るんでどうぞいつも通り寝て下さい。色々あって地べたで寝るの慣れちゃいましたから!」
「えぇ!別にいいよアルくん!せっかく2個分あるをだからベッドで寝ても...ゎ、私、き、気にしないよ...」
もじもじしながら言うスミアに貫かれたアルは「わ、分かりました。じゃあお茶頂いたら寝させてもらいますね。スミアさん。今日はありがとうございました。」
二人は(クリアは可哀想だか水晶に戻り)今日は寝て明日から活動することにした。
ーーー夜
アルはスミアの方は向かずに寝て考えていた。
(今日はいろんなことがあったな。僕が王族特務か...でも「あの日」の真相を確かめるためには、あの人を誰か見つけるためには、この地位を使わなきゃダメなんだ)
アルは当初自分がなんのために王国に来たのか考え直し決意をまた固めていた。
が、その思考は停止する。
せ、背中に柔らかい何かを感じるッ!
徐々に腰に手を置かれ始めたアルだかスミアは寝ているらしい。スヤスヤと可愛らしい寝息が聞こえてくる。このままではダメと考え意識を他の事に集中させようと目を閉じたアルだがそれは逆効果で結果アルに隙を生んだ。アルが装備を外して置いたところの水晶からクリアが出てきた。
「アルくん?起きてる?今日はいろんなことがあったね。私はずっとあの中で眠って一人だったからさ、何もかもが新鮮でとっても楽しいんだ。これからも思い出を紡いでいこうね?ふふっ、もう寝ちゃったかな。アルくんの手。あったかいね。おやすみ。」
.....。眠れない。後ろからは抱き枕のように扱われ、それを振りほどくための手は握られている。男として喜びたい事ではアルが、純粋に眠いが眠れない。というか今寝たら自分が何をするか怖くて眠れなかった。
そんなこんなで時は過ぎた。
朝、スミアは目を覚ます。
「ふぁぁ...今日も頑張るか.......」
ん?と横を見るとクリアに抱かれているアルがいた...
(あ、あら〜、こここ、これはどういう状況なのかしら。アルくんが攻め?だ、だとしたら国法に引っかかってしまうけど...ってそんなこと考えてる場合じゃない!!ど、どうしよ〜)
と錯乱しているが、実際アルは起きてる。
最後まで眠れなかったのだ。あの夜の後クリアは水晶に戻らず吐息のかかる近さで正面に寝てアルの心拍数は急上昇、起きる時は違ったものの最後までスミアには後ろから抱きつかれていた。結果、今に至る。
勇気を振り絞ってアルは目を覚ます(ふりをした)
「ん、んーおはようございます!スミアさん!」クリアを手で押し出しながら起きる。
「おはよう!アルくん。よく眠れたかな?」
状況をなんとか悟ったスミアは一応、最優の対応をした。
「アルくんはえーと今から城のクローゼットから制服を持ってこなきゃ。クリアちゃんのことは面倒を見て置くから取ってきておいで?ちなみにクローゼットは扉をでて3個個左の部屋だよ。」
「3個左ですね」と確認をとり部屋を出る。
城はやはりとても大きく所々に立派な絵画や装飾が施されている。進んでいき、3個隣の部屋に入ると見たことのないような、ウォーキングクローゼットが広がっている。
どれを着ればいいのだろう、と考えていると奥の小さなスペースから黒髪の可愛らしいメイドさんがでてきた。
「どうされましたか。」
不意に声をかけられたアルは
「王族特務の制服を着ろと言われたのですが...」と言うとメイドはすぐにそれらしき服を持ってきた。
「着るならば、あちらの更衣室で。」
話をすぐに切ると彼女は自分の仕事に戻っていった。更衣室で着替えて取り付けの鑑を見るといかにも王国らしい青の制服だった。
アルが来ていた古びた服と違って素材もしっかりしている。
なんだか大人になった気がして更衣室を出て行くとメイドさんが冷たい視線を向けて来たので恥ずかしい...
「ありがとうございました。」と一礼して部屋を出る。その時、扉の所に〈管理人 ソラ〉
そう書かれていた。(あのメイドさんはソラさんって言うのか。覚えておこう!)
アルは上機嫌でクリア達が待つ部屋に戻りながら、昔の事を忘れていられる今を楽しんでいた。