朱に交われば赤くなる
「うん、似合ってるよ!」
「そ...そうか?」
イリーナ草をギルドに持って行って報酬を受け取った私達は、服屋にアーレイの服を買いに来ていた。現在耳としっぽは魔法で隠している。最初からこうすれば良かったんじゃねって人も居るかもだけど、この魔法って急に切れるからね。
服屋「テニー」の店員さんは猫耳をつけていて、可愛らしいメイド服を着たロリな方だった。同じ獣人かと思い魔法を解いたが、
「わぁ! 君も耳カチューシャつけてるんにゃんね? 私だけかと思ってたにゃーん」
と言われた。どうやら店員さんの猫耳はカチューシャだったようだ残念。でも! ケモミミもふもふ天国はもう少しだ!
アーレイは、現在王族の服を脱いで、とりあえず通常の冒険者の服を試着していた。羽飾りのついた皮の帽子に、金のラインが二、三本入った私と黒いコートの下に、赤い服のようなアーマー、黒いズボンをはいている。見るからにTHE冒険者だ。
「あの、これは全部でいくらなんですか?」
「私の同胞にサービスにゃん。まけにもまけて5千イェンでどうかにゃん?」
「はい、買います」
5千イェンですか...うん、何か自信満々に言うと恥ずかしいし変だね。さぁ、みんなも言ってみよう! 5千イェン! 5千イェン! 5千イェ...ごめんなさい。
「リン、お前も何か買ったらどうだ。お、俺が...見てやるから」
「私は大丈夫。でも、黒い糸と針が欲しいな」
「あぁ、それならたくさんあるにゃんよ? 私はあんまり黒糸は使わないから、針もおまけしてあげるにゃん」
「ありがとうございます」
店員さんは鼻歌をしながら店の奥へ入って行った。もの凄く不用心な気がするけど、まぁ待っておこう。
「リン、お前は...俺と居たいか?」
「どういう意味かな。私は、『獣大陸』の獣王城に辿り着いたら、貴方と別れるつもりだけど...」
「一緒じゃダメなのか?」
「...あ、アーレイはもの凄く優しくて、もの凄く強いけど...危険な旅になると思うから。貴方とは一緒にいけない」
「俺じゃまだ力が足りないって? 俺はどれくらいお前についていっても良いと言われるくらい強くなれば良いんだよ」
「そういう意味じゃない...」
私は涙目になった。それを見兼ねたアーレイは、すぐに謝った。何処からか視線を感じているが、無視しよう。
確かに私もアーレイと旅をするのも良いと思ってる。でも...
「あ、アーレイは次期国王なんだから。私と一緒じゃなくって...勉強をした方が良いと思うんだ」
本当はそんな事は少ししか思っていなかった。本音は、「怖い」からだ。また裏切られるのが、傷つくのが怖いのだ。
素直に彼の率直な「願望」は嬉しいと私は思った。でも、やっぱり信じていた相手から裏切られるのは怖い。私は実際には魅惑のヒロインってわけじゃないから、この世界では何でも自分の思い通りにいくと思ったらそうでもない。
「じゃあ、さ」
アーレイは私を抱きしめた。途端に優しい声が耳元をくすぐる。
「魔王に会って来たらーー」
「すみませーんってあ!」
丁度店内に冒険者のお客3人が入って来かけたが、どうやら「お取り込み中」だと完璧に勘違いな察しをしてしまい、気まずそうな顔をして店を出て行った。
猫耳さんすみません、お客さんが三人行ってしまいました...。
「あの...アーレイ? そろそろ離そうか」
「何故だ。...中断されたからもうその気なくなった」
「どんな気があったの?! というか、これお客さん帰っちゃうから! 猫耳さん大迷惑だから!」
それにね、残念ながら私は鈍感系じゃないんで。敏感系なんで! どうせ、「お前とは離れたくない」的なやつでしょ?
あ、今「妄想だ(笑)」って言った奴後でしばくからね。
「どうでも良い」
「良くないよ! じゃあ...獣王城につくまでは、絶対に離れないから...だから今は離して。じゃないと、私貴方を突き飛ばして二度と会う事はなくなるでしょう」
「...分かった」
渋々だが承知してくれたアーレイ。私を抱擁から解放すると言った。
「お前いくつだ?」
「13歳だよ」
「じゃあ...俺と5歳差か。年齢的にはOKだな」
「念の為に聞きます一体何の事でしょうか」
「結婚に決まってるだろう」
何故そうなるアーレイ! そ、それに...私が好きなのはクロノさんで...勿論アーレイも好きだけど結婚ってほどでもないかな...。
私はため息をつくと、アーレイを見上げた。身長差があるので、どうしても上目遣いになってしまう。アーレイはそんな私に若干興奮を抱いているようだった。
「怖いですアーレイさん。何? どうしたの? その服なんか呪いでもかかってる?」
「かかってない。だが、何故かお前がもっと欲しくなった」
「やっぱ買うの止めておこうかな...」
「と、思ったが気の所為だ!」
個人的にこの服は気に入っていると言うアーレイ。まぁ確かに似合ってるしね。
すると、猫耳さんが戻って来た。
「いにゃー、ちょっと黒い糸探すのに手間取っちゃったにゃー。はいこれ」
猫耳さんは、革製の小さなバックを渡して来た。開けてみると、裁縫セットと黒い糸が入っていた。
「そんにゃんでごめんにゃさい。でも、にゃかにゃか使いやすい道具だと思うにゃん」
私はお金を取り出し、猫耳さんに渡した。
「にゃー、丁度ぴったりにゃん。もう着たままで良いにゃんね?」
「はい」
「そうだ、ついでに聞いておくにゃんけど、お二人ってどういう関係にゃの?」
「え...」
「さっき、抱き合ってたにゃん」
「そ、それは勘違ーー」
「結婚前提の恋人です」
「そうかにゃん。羨ましいにゃん」
「おい何サラッと大嘘ついてんだよ」
何言ってるのと言いた気な目でこちらを見つめるアーレイ。猫耳さんは、こんな素敵な方が恋人だにゃんて、お客さんは幸せだにゃーとニコニコしていた。
シューベルト王子でも此処まで強引じゃありませんでした!




