依頼
「スネークさん、貴女、もしかして...ステータスが異常だったりしますか?」
「...はい?」
「やはりそうですか...」
いや、今のは返事じゃないですお兄さん。まぁ、ステータスが異常なのは確かなんだから仕方無いよね...。よし、此処は今の私の真逆の意味で異常だという事にしよう。
「じ、実は私...魔力が無いんです」
「え、何ですって?」
「サイトリール」では、魔力の無い人間は存在しない。でも、うちのクラスでも数人居たからね。変に感づかれたら困るが、とりあえず今はこれでいこう。
「という事は...魔法が使えないという事ですか。そりゃあ『ステータス感知書』が感知出来ないわけです」
「すみません。もっと早く言っておくべきでしたね」
「大丈夫。...という事は、攻撃手段は剣ですかね」
「はいそうです」
「ちなみに...冒険者の志願理由は?」
「お、お金がなくて...」
「そう、ですか...」
お兄さんは訝し気な表情を消し去ると、優しく微笑んだ。
「僕はジークフリート・ナイトと言います。このギルドで受付を担当している者です。見た感じ、スネークさんは初めて此処を訪れて来たのでしょう? よければ僕がご案内しますよ? も少しでシフトは終わりますし、スネークさんお金ないでしょ?」
「あはは、分かります? 実は一銭も持ってなくて...」
「じゃあ、あと十五分程度ですので...脇で弟さんとお喋りでもして待っていてください」
弟さんというと...アーレイだな。私は発行されたガラスのようなギルドカードを貰うと、ジークフリートさんの言う通り、脇に避けた。途端に睨まれるような視線を感じたが、気にしない気にしない。
何か、ギルドの詳しい説明は、案内してる途中に...という事だった。
「おい、お前さ。あんな男と一緒に街を歩くのか?」
「何? じゃあアーレイが案内してくれる?」
「...」
「あぁ、ごめんね」
私はしゃがんでアーレイの頭を撫でた。
「お、俺は子供じゃない!」
「ふーんそう...」
この場合だと、テンプレな事が起きそうで起きなさそう。ギルドの熟練というか強いパーティの人が、ギルド登録したばかりの主人公に絡んで来て、「おい、お前なんかにギルドの仕事が出来るのかよ」的な事言って最終的にはボッコボコにされるやつだね。
ただ、残念ながらそんなテンプレは起きなかった。
「お待たせしました!」
しばらく待っていると、ギルド職員の服装のジークフリートさんがやってきた。
「あ、ジークフリートさん」
「そんな畏まらなくて良いですよ。気軽にジークとお呼びください」
「はい、ジーク」
「あと、こんな服装ですみません」
「いえ、全然大丈夫ですよ?」
ジークフリートさん、もといジークは微笑んだ。アーレイが小さく舌打ちをしていたが、気にしない気にしない。
「では、街を歩きながらギルドの説明でもしますか」
「はい!」
「冒険者ギルド」は、その名の通り冒険者のためのギルド。冒険者となった人は、国や街、はたまた一般人からの依頼をこなし、それ相応の報酬を貰える。
ギルドランクというものもあり、後ろからG、F、E、D、C、B、A、S、SS、SSSランクに分けられる。そして、依頼にもランクがつき、自分のランク以下の依頼を受ける事が出来る。ちなみに途中で依頼を止めた場合は、報酬の30%を払わなければならない。
怪我をした場合は自己責任。冒険者同士の争いは禁止されている。
「依頼は、ギルドカードで受ける事が出来ます。スネークさんはGランクですので、薬草の収穫などですね」
「どうやって受けるんですか?」
「えっとですね...」
現在、ジークのおごりでレストランで料理を食べている私達。
私はジークにギルドカードを渡した。すると彼は、ギルドカードの裏を向けると、人差し指で左から右へ線をなぞった。
すると、ギルドカードの裏からビジョンが映し出された。
「これで受けられます。好きに受けて良いですよ?」
「はい」
私はビジョンを弄り始めた。Gランクにも関わらず、たくさんの仕事がある。薬草採取や引っ越しの手伝いなどと、簡単な仕事だった。
しばらく考えていると、私の目にはある依頼が止まった。
「『イリーナ草』の収穫?」
ビジョンには、あのアーレイを寝かしていた湖の周りにたくさん咲いていた、紫色の奇妙な花の絵があった。
「あぁ、それは止めた方が良いですよ。『イリーナ草』はとても見つけづらく、『暗黒の森』の中にあるんですから」
『暗黒の森』は、私達が居た森だ。何か、一回入ったら迷子になって一生出られなくなるらしい。ただ、ちゃんと規定の道があるのでそこを通って行くと迷子にはならない。
「よし、これ受けます」
「僕の話きいてました?」
「えぇ、でも、難易度が高い方が絶対やりがいありますよね?」
その言葉を聞くと、ジークとアーレイはため息をついた。私が何だと言わんばかりにムスッとすると、ジークは優しく微笑んだ。
「まぁ、良いんじゃないですか? ...あそこはSランクの魔物が出ますので、僕もお供しますよ?」
「ありがとうございますジーク」




