森の守人
『何でこんな所に人間が居るんだよ...しかも荒れてるし...ったくチッ』
声が聞こえる。
『うお、意外と重いという...やっぱ女ってこえー』
体が持ち上げられるような感覚。
『さてと、うーん...まぁ連れてくか。女の子ならあいつが喜ぶかな』
現在進行形で拉致られてるような気もするが、眠いから気にしないでおこう。というか、貴様、この私を重いと言ったな? 女の子にそれはないです...!
みたいな事を考えているうちに、私は再び眠りに落ちてしまった。まぁよくある事だから。
気がつくと、草の上でなく暖かい毛布の中に居た。声が聞こえた。二人の少年少女の声だ。
「お兄ちゃん、女の子拉致っちゃったわけ?」
「あぁ。男ばっかりしか来ないからな。しかも厳つい奴」
「だけどね...」
あ、やっぱ拉致られた? 逃げ出せば良いだけの話なんだけど...とりあえず起きるか。
私は毛布を退けて、周りの景色を見た。ツリーハウスのような所だった。壁も床も原木で、木の匂いが漂っていた。近くには、木に座る少年と少女。私が起きたのが分かると、急に笑顔を見せた。
「あ! 起きた!!」
「怪我なくて良かったぜ。途中で落としたかーーうん」
少女は私に駆け寄って来た。頭に黄緑色のリボンをつけた淡いグリーンのワンピースを着た、童顔の可愛い女の子。奥の少年は、貴族のような整った顔で、エルフ風の緑色のシャツに半ズボンをはいていた。
「私はニル! あれは、私の愚兄のエル!」
「ニルに...エルね。えっと...私はリンよ。リン・ヘビナ」
「名字があるのね! 凄い!」
あらまぁ人拉致っといて何て顔してんですか後ろのエルさん。
「ねぇリン、急に連れて来ちゃってごめんね。私の愚兄が本当に...」
「良いだろ! お前同い年くらいの女の子と遊びたいって言ってたじゃねぇか!」
「だからって拉致る事ない!」
「だって、お前むさ苦しい男ばっかりで嫌だって言ってたじゃねぇか!」
「何だよ愚兄だってむさ苦しい男でしょ!!」
「あ゛?!」
あ、これは本格的に兄妹喧嘩が始まりました...じゃあ、私は、これでお暇させて頂きますわおほほほ...
「どさくさに紛れてお前逃げんな!!」
「ひゃぅ...」
コッソリツリーハウスから出て行こうとした私は、エルに頭を叩かれた。何でダメなの? ねぇ何で?
「少しくらいは俺の説教も受けろよ? お前がこの森荒らしてくれたんだからな」
「え、あれ魔物激減して森が壊滅状態になったのって、リンの所為だったの?!」
「え、そうなの?! あ...ごめんなさい!」
「ったく...」
「良いよ良いよ〜。私達魔法ですぐに治せるからね〜」
「うぅ...」
私は唸った。あぁ...ニルとエルに負担をかけてしまう...そうだ!
「ねぇ、魔法を使う時って...魔力消費するよね?」
「当たり前だろ。俺とニルの魔力を全部使っても枯渇するくらいだからな」
「そ、それなら...私の魔力使う?」
「え? リンは人間だから無理だよ。私達は『森の守人』、エルフなんだよん♪」
エルフか...でも、耳長くないしなぁ。でも、ツッコまないでおくね。本に書いてあったけど、この世界のエルフは人間より数百倍の魔力があるらしい。
でも、私は「魔力無制限」ですからね?
「大丈夫。私は...うん、魔力たーくさん」
「「...」」
い、訝し気な目で見ないでくださいお二人さん...。
しばらくすると、ニルが口を開いた。
「まぁ、やってみないと分からなくない? 自称、魔力エルフ二人よりあるぜ☆のリン?」
「何だよそれ...」
「そうだな。一応薬もあるから、やってみよう」




