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Cafe Slow Life~忙しくもゆるやかな日~

作者: 木立あろえ

一行一行を大切に、すべての行に魅力を持たせるよう、努力しています。

 未熟者ですが、よろしくお願いいたします。

 バイトの私とマスターの二人でやっている喫茶店「スローライフ」は、名前の通りというかなんというか、ただただゆっくりとした空間と、マスターの淹れる(たまに私もいれる)おいしいコーヒーが売りの、ちょっぴりイナカの商店街にある小さなお店だ。

 私もマスターも悪い意味ではなくある意味お客さん以上にくつろいで仕事をしているし、そんなゆっくりとした空間がすきだけれど、今日は祝日で下手な土日なんかより客の入りが良くて、昼からお客さんがとぎれなかった。現在四時十分、今の今まで私は休憩をとることができず、もうくたくたで、お腹もすいた。

 本当は店員がカウンターなんかで休憩を取るべきじゃないのだけど、カウンターの裏はマスターの家だし、混まない時間に来る客というのはほとんどが常連さんで、私が居るからといって店に入るのをためらったりなんてしないから、マスターも許してくれている。常連さんはみんな私の事を知っているし、むしろ積極的に私の休憩を邪魔しようと入ってくるお客さんまでいる。(それの代表的なのが嶋井さんだ)

 そう言えば今日は嶋井さんはまだ来ていない。あの人はたいてい、こういう忙しいときには来ない。まるで店内の状況が常に分かっているかのように、店がガラガラの時に来るのだ。

 私はマスターの作ってくれたサンドイッチをぱくつきながら、淹れてくれたコーヒーにミルクと砂糖をたっぷりいれてぐびぐび飲む。

 マスターはとてもコーヒーにこだわっていて凝っているけれど、砂糖を入れるなとかブラックで飲めだとか、そういう強制はいっさいしない。(ただ昔、ブルーマウンテンにミルクと砂糖をしこたま入れてぎょっとされたことがある)

 店には絞ったボリュームでジャズミュージックがかかっていて、ふわふわとコーヒーのにおいが漂って、この店が好きな客にとって、そして私やマスターにとって限りなく落ち着く空間だ。

 私はニスのはげかけた、それでもなめらかな感触のするカウンターに突っ伏して、右手の人差し指で飲み終わったコーヒーカップの縁をなぞった。カップをもてあそんでしまうのは私の悪い癖だ。水飲みグラスとか湯飲みとか、飲み終わっているいないにかかわらず縁を指で撫でたあげく、傾けてくるくると回してしまう。何度かそれで、中身をこぼしてしまったこともある。

「あゆむ君、疲れた?」

「もうだめ、死んじゃう」

 私が答えると、マスターは笑った。

「でもまあ、明日も明後日も私が死ねるくらいのお客さんが来るといいんだけどね」

 私が言うと、マスターは苦笑いして、

「それはちょっと無理だよ」

 と言った。

「なに経営者の方が弱気になってるのさ。バイトがやる気出してるっていうのに。もしかしたら今日来た新規のお客さんが気に入って明日も来てくれるかもしれないでしょ。」

「それはうれしい事だけど、今日は祝日、明日は平日だよ」

 私は「むう」と心の中で唸る。

「でも今日は、あゆむ君が本当によく働いてくれて助かったよ」

 マスターはうれしそうに言うけれど、本当はマスターが、お店があまり忙しくなるのが好きじゃないのを私は知っている。

 いつも来てくれている常連さんが、店が混んできたのに遠慮して席を立ってしまうのを、マスターは引き留めたくても引き留められなくて、ぐっと堪えていた。待っているお客さんが居る手前、「もっとゆっくりしていってくれれば良いのに」とは口が裂けても言えないのだ。だから私とマスターは本当に心を込めて、「ごゆっくりどうぞ」と、「ありがとうございました。またお越し下さい」を言う。いつもと同じだけのお金をもらうのに、あまりゆったりできないお店。本当に申し訳なくて、たまらない。

 この店で過ごす時間が、ゆったりとした生活の一部であってほしい。忙しい人にとってはなおさら、ここはゆっくりした場所でありたい。それがマスターの願いだ。たとえそれがお客の回転のいい朝や昼でもそう。だからマスターも私も、どんなに忙しくても、どんなに急いでいても慌てたり、それがお客さんに気付かれたりしないよう心がけている。

 多分マスターは、経営者向きではない。

 一時期地元の女子高生にこの店が流行った事があって、店のほとんどを女子高生が占めていた事があったのだけど、その時もマスターは常連さんが遠慮して早めに帰っていくのを寂しがって、そして流行が去って売り上げが落ちると店が落ち着いたと言って常連と一緒にホッとしていたりした。

 一時でも店が流行ったと言うのにうれしがるそぶりはまったく無いし、そのまま女子高生をターゲットにして売り上げを維持しようだとか、そういう考えさえ全くない。女子高生が押しかけたのを、「異常事態」としてしか受け取っていないのだ。(ただマスターの作ったクッキーやケーキを目当てに、たまにその頃の女子高生らしき人が来たりすることもあるけれど)

 つまりマスターは、「どうやったら店が居心地よくなるか」は考えても、「どうやったら店が儲かるのか」をまったく考えない。しかも、その「居心地のいい店」というのが、普通なら「売り上げ」につながるはずなのだが、この店の場合まったくと言っていいほどつながっていない。それは多分、マスターの考える「居心地のいい店」というのが、長居のできる店――つまり言ってしまえば客の回転の悪い店だからだ。

 ただ、女子高生が沢山来ていた時でさえ、今日ほどは忙しくなかった。今日は私の見解から言わせると、元から居た早い時間の常連さんの後に一見のお客さんが来て、その後に遅い時間に来る常連さんが一見のお客さんをサンドイッチにしてしまった形だった。つまり最初に居た常連さんが、後から来た一見さんや常連さんに押し出されてしまった形になる。

 たいして広くもない店内だからすぐ満席になるし、常連さんの何人かは二日か三日に一度はスローライフに来てコーヒーを飲まないと気が済まないような、いわゆるスローライフ中毒みたいな人達だから、満席になっても怯まず外で待っている。さらに後から来たお客さんが満席だと分かって帰ろうとすると、「大丈夫、ここ空くよ」と言って出て行ってしまうくらいの優しさと度量までもっていたりするのだ。すばらしすぎて、涙が出てくる。

 これだけタイミング良く忙しかったのは、多分私がこの店で働き始めてから二度目。

 一度目は私がここでバイトを始めて三日目ぐらいの時で、まだ仕事を全部覚えていなくて、ちょうどゆったりとした空気にだけずぶずぶと飲まれていた頃だった。私は予想外の忙しさに、おたおたしっぱなしだった。

 その日はお昼までは前日とそう大して変わらない客の入りだったのだけど、お昼になって一変したのだ。気が付いたときにはもう満席で、私はどこから注文を取って良いのかすら分からなくなるくらい一瞬で動揺してしまった。昼時はただでさえ普段と比べて客の回転が速いのだ。

「ご注文をどうぞ」

 と、まだ言い慣れていなかった文句を言ってまず帰ってきた言葉が、

「あの、僕達はもう注文とってもらったよ」

 だった。私は勢いよく頭を下げて謝った。言われて初めてその人たちが元から居たお客さんで、さらに注文を取ったのも自分だと言うことに気が付いたのだ。ちょっとよく見れば、テーブルの上に飲みかけのコーヒーカップがあるし、すでに注文を取っていることは、テーブルの横に伝票が引っかけてあることで分かるはずだった。

 たいして広くもない店内がとても広く感じた。どの席のお客さんが何を頼んで、何がすでに出ているか。今なら大体頭の中で把握できるのだけど、その頃はまだそんなことできなくて、ただマスターに言われるままお皿を下げたり料理やコーヒーを出したりした。

 なんとか全てのオーダーができって安心していると、チリリンというドアベル代わりの風鈴と共に、四人組のお客さんが入ってきて、(私がバイトを始めたのは、夏の盛りだった)私は不謹慎だけれど、今は満席だから受け入れは無理で、正直助かったと思ってしまった。

「すみません、今席が全部埋まってしまっていて――」

 そこまで私が言ったとき、後ろから

「あ、大丈夫です。ここもう空きます」

 と言って二人組の、最初にいたお客さんが立ち上がった。

 カウンターからマスターが、「すみません、ありがとうございます」と言って頭を下げた。

「すぐお席ご用意しますね」

 私がそう言ってお皿を下げに行くのと同時に、マスターがお会計をしにレジに行くのが見えた。マスターの仕事を増やしてしまったと思った。私が両方やるべきだと思ってしまった。本当は、二人で片方ずつするのがお客さんを待たせない一番良い方法なのだけど、そこまで考えるほどの心の余裕は、その時の私にはない。

 焦った私は見事に皿を落として、盛大に割った。

「ごめんなさい」

 と短く一気に言って、私は割れたお皿に手を伸ばした。マスターも謝りながら、早足にカウンターから出てきた。そして少し強い調子で、

「危ないからいいっ、触らないで!」

 予想外に大きな声に、私はビックリして身をすくめた。マスターはホウキとちり取りで手早く割れたコップや皿を片づけると、細かい破片を取るために水ぶきする。「怪我はない?」と訊かれて、私は反射的に「はい」と答える。

「もう外はいいから、中で洗い物お願い」

 マスターに言われて、私はカウンターの中に引っ込んだ。山盛りになった食器を洗いながら、自分は何て役に立たないんだろうと思った。暇な日は大丈夫でも、少し忙しくなるとこれだ。洗い物だって、マスターに比べたらとても遅い。こんなんで私は、お給料なんてもらっていいんだろうか。私がウェイトレスとしてしっかり対応できる日なんて、マスター一人でも大丈夫じゃないか。

 お金なんていらないから少しでも役に立ちたい。何もできない自分が、悔しくてしょうがなかった。

 洗い物は後から後から増えて、私の遅い洗い方では全然減らなかった。私は必死で、お皿を洗い続けた。やっと洗い物が少なくなってきたと思った時にはお店はもう空いていて、時間も四時を回っていた。

 まだ空いた席には下げられていない食器がいくつかあった。私は急いでトレイを持って、食器を下げに行こうとしたけれど、マスターに「僕が行くからいいよ」と止められてしまった。

「今日は疲れたでしょ、カウンターで休んでていいよ」

 マスターのその言葉で身体に入っていた力がフッと抜けて、私はカウンターに寄りかかるようにして椅子に座った。残るお客は一人。おそらく客が引けだしてから入ってきたのだろう、嶋井さんだけだった。

 マスターは食器を全て下げると、サンドイッチとコーヒーを作って私に出してくれた。

「今日はありがとうね。本当、助かった」

「でも私、今日お皿しか洗ってない」

 間髪入れずに私が言うと、マスターは「いやいや、僕がお皿洗ってる余裕無かったから」と言ってにっこり笑った。

「それに一気にお客さんが入ってきたとき、ちゃんとテーブルも片づけてセッティングしてくれたし、お客さんの案内もしてくれたでしょ。さっきはごめんね、ついつい強い口調になっちゃって。びっくりしたでしょ」

「そんなこと、ないです」

 と、私はとぎれとぎれなんとか答えた。急激に心の緊張がとれた私は、感情のストッパーが完全に外れて、目からぽろぽろと涙をこぼしていた。私は恥ずかしくて、マスターに泣いてる事がばれないように、必死で縮こまって腕で顔を隠した。今が秋か冬だったらよかったのに、と思った。長袖の方が、遙かに涙を隠しやすい。

「そんくらいの忙しさで余裕をなくすなんて、マスターもまだまだ未熟だな」

 と言って、嶋井さんが私の後ろで笑った。

「そのくらいって、嶋井さん見てたんですか?」

 とマスターが訊くと、「いや、見てないが、こんな狭い店で忙しいっても限度があるだろうよ」と言った。

「今日は、嶋井さんが思ってる以上に忙しかったんですから」

「へえ」

 とだけ、嶋井さんは言った。

 その時私はまだマスターの出してくれたサンドイッチを食べていなくて、とてもお腹が減っていた。とうとう我慢できなくなって、腕で目をごしごしとぬぐいながら顔を上げると、サンドイッチにかぶりついた。

 マスターは私の顔を見るとびっくりしたみたいだけど、

「別に泣いてないから」

 と先制攻撃をしかけて私はバクバクとサンドイッチを平らげ、またうつぶせになってそのまま寝てしまった。


 私がうつぶせの体勢から顔を上げると、「あ、起きた」というマスターの声がした。それから間髪入れずに後ろから、「お前、営業中に堂々とカウンターで寝るとは何様だ」という嶋井さんの声。嶋井さんは相変わらず四人がけの席で、テーブルいっぱいに新聞を広げている。一瞬、夢の続きかと思った。私はあのまま寝てしまって、思い出していた昔の記憶の夢をみたらしい。

「そんなこと言うなら、起こしてくれればよかったじゃん」

 私が言うと、嶋井さんは呆れて、

「何処に客に起こしてもらう店員が居るっつうんだ」

「いや、まあ……でもとりあえず」

 私は寝ぼけた頭で何を考えたらいいのかからまず考えて、それから言わなければいけない一言を思い出す。

「いらっしゃいませ」

 すると嶋井さんは私が何を言ったのか理解できないような顔をして、それから腕時計を見ながら「二五分と四十秒遅えよ」と言った。嫌味だー、細かい。

 壁掛け時計を見てみたら、現在時刻は五時ちょうど。ほとんど私は一時間近く寝ていたらしい。

 開け放しのドアと、開け放しの窓たち。その間を通る風はもうしっとりと湿っていて、暖かい。そろそろ春から夏になる。私がスローライフで迎える三度目の夏。

「そういえば、さっき新島君来てたよ」

「え、翔一が? 私が寝てる間に?」

 私が訊くと、マスターは「うん」と頷いた。嶋井さんが、「寝てる間じゃなきゃいつだよ」とか言ったけれど、気にしない。

「ほんとに、起こしてくれればよかったのにぃ」

 私がわざといじけたみたいな声で言うと、マスターは「ごめんごめん」と謝って、

「起こそうとはしたんだけど、新島君が起こさなくていいって言うからさ。特に用があるわけじゃ無いみたいだったし、コーヒーだけ飲んで帰ってったよ」

「翔一に用が無くても、私が用あるかもしれないでしょ!」

「用、あったのか?」

 嶋井さんに言われて、私は椅子ごとガタガタとそっちに振り向いて、「いや……ないけど」と答える。

「じゃあいいじゃねえか」

「そう言う問題じゃなくて、もしかしたら、って話」

「今回はその“もしか”してないんだろ」

「だからそう言うんじゃなくて――」

 と、なんだかエンドレスになりそうな感じで、しかも嶋井さんにいくら言っても無駄だろうと悟って、私はそこで言いやめた。「むうっ」と唸ってカウンターに向き直ると、クックと後ろで堪えた笑い声。どうやら私はからかわれていたらしい。

「どうせ来たんだったら、ちょっとくらい話したかったなーって思ったの。それだけ!」

 言わなきゃいいのに我慢できずにそう言うと、嶋井さんは「はいはい」と言って聞き流した。まるで小学生か中学生の意地悪な男子みたいだ、と思った。

 それからは、二、三組ぐらいのお客さんが出たり入ったりの繰り返しで、さっきの忙しさが嘘みたいにいつもの夕方のペースに戻っていた。夕凪、という言葉がいかにも似合いそうに感じた。

「コレだよこのペースだよ」

 と私は思わず呟いた。お客が引けて、私はテーブルを布巾で磨いていた。嶋井さんももう帰ってしまって、お店にはマスターと私の二人きりだ。

「やっぱりこののんびりした感じがこの店らしいね」

 と私が言うと、

「一日中このペースだと、大赤字だけどね」

 なんてマスターはいう。忙しさから抜けてすぐのときと、私とマスターは逆のことを言っている。

「マスターは贅沢なんだよ。ここまで暇なのは駄目だけど忙しいのもきらいなんて」

「……ごもっとも」

 といって、マスターは苦笑する。

 私は全てのテーブルとカウンターを拭き終えると、カウンターの中に入っていってマスターをカウンターの外に追い出した。

「わ、ちょっと急にどうしたの」

 マスターは私に背中を押されながら言う。

「いいから早く席につく。今日マスターまだ一回もカウンターから出てないでしょ」

 私が言うと、マスターは素直にカウンターに腰掛ける。

「今コーヒー淹れるから、まっててね」

 私はケトルを火にかけてから、ミルに豆をいれてごりごりと挽く。豆を挽きながら思い出したのは、店に入ったばかりのとき、豆を挽く音を聞いて言った自分の感想だ。

「エンピツ削りみたいな音がするね」

 と言って私はマスターに笑われた。最近はエンピツ削りはおろか、シャープペンのせいでエンピツすら使わないけれど、私は手回しのエンピツ削りでエンピツを削るのが好きだった。エンピツを削る為に、嫌いな漢字の書き取りを必死でやっていた覚えすらある。そんなに削りたければ芯折ればいいのにと友達はいったけれど、それじゃあもったいないし、意味がない。

 この店では忙しいときは業務用の電動ミルを使うけれど、普段はこの手回しのミルを使っている。なんだかんだで電動のミルの方が利点が多かったりするらしいのだけど、やっぱり私はこっちの方が好きだし、マスターもそうなんだと思う。

 手動のミルで豆を挽くコツは、とにかくゆっくり挽くことだ。急いで挽くと、摩擦熱で豆の薫りがとんでしまうのだ。

 忙しさにはむかない。だけどそんなところがこの店にはぴったりだ、と私は思う。

「なんだかサマになってきたね」

 私が豆の入ったドリッパーにお湯をおとしているのを見てマスターは言う。

「当たり前でしょ。これでも一応、一年以上やってるんだから」

 それから私は二人分のコーヒーをカップに入れて、マスターの前に一つ置いて、その隣に座る。

「また休憩?」

 とマスターは笑った。

「だってマスター一人だと寂しそうじゃん」

 私がそう言うと、ぷっ、とマスターは吹き出した。

 コーヒーからたちのぼる湯気も、コーヒーの香るのも、何もかもがゆっくりと感じる。だけどそんなゆっくりした時間というのは、矛盾しているかもしれないけれど案外あっという間に過ぎてしまうものだ。

 現在六時三十分、お客さんは一人もいない。マスターと二人きり、従業員しかいない。

 だけどそんな時間も、この店の役割のひとつなんじゃないかな、と思う。

「そういえば、私が寝てた間に翔一以外にお客さんて来てないよね?」

 ふと気になってそう訊くと、マスターは平気な顔をして「来たよ」と言った。

「みんなあゆむ君が寝てるの見て笑ってた」

 マスターは少し意地悪な、そして楽しそうな声で言った。

 私は絶句して、それから大きな声で「それこそ起こすべきでしょ!」と叫んだ。なんでこの喫茶店にいる人は誰も私を起こそうとしないのだろう。


最後までお読みくださってありがとうございます。

 お時間ありましたら感想いただければうれしいです。

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[一言] こんにちは。マスター側とあゆむちゃんサイド、両方読まさせて頂きました。 喫茶店特有の空気が流れている様で、心地良く読めましたよ〜。 ただ、店に住んでいるようなと言われる割には、常連さんとの絡…
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