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たとえば曖昧な愛について
愛は管を通じて流れる、
たとえば血液のようなものである。
たとい脈打つことがあるとして、
だれがそれを意識しようか。
だれしもうたいながら、
そのだれもが手にするわけでなく、
けれどいつもその手にありながら、
しかしいつでも侭ならず、
だのにその身を象ること能わず、
折にふれて沸き立ち、
あるいは煮えて、
よどみ、それから沈澱し、
繰り返すたび深く
やがて宴のあと
それは息を呑むときに、
それは安らかなときに、
それは静寂のときに、
早鐘をうちながら
時を告げる
安らかな優しい呼吸のまま
はたと息が詰まるとき
ゆびさきの爪にまで
こころの糸がかようように
こそばゆく、くすぐったい。
床に就いても眠れない
朝も 昼も 夜も
気付いたときから
絶えず
愛は
管を通じて流れ続けている。
たとえば愛は。
初回掲載 2011年 05月23日 05時15分
作品提出 2015年09月19日12時00分