誤解なんです
テレビ画面にニュース速報のテロップが流れた時、それを観た人は何かの間違いだろうと思った。
「番組の途中ですが」と神妙な顔でアナウンサーが臨時ニュースを読みあげた時でさえ、人々はそれを誤報だと信じて疑わなかった。
しかし、高層ビルの大型ハイビジョンテレビに、その時の映像が映し出されてようやく皆がその事実を受け入れた。
「ひどい、あんまりだわ」
「そんなことをする奴には見えなかったけど」
「きっと、魔がさしたのよ」
「未だに信じられないよ」
「怪獣退治のエキスパートも地に落ちたものだ」
その日、地球の平和を守る国民的ヒーローの逮捕に日本中は騒然とした。
七月二十日の午後二時十五分、東京都港区に怪獣が出現すると眩い光の中から颯爽と現れた宇宙から来たヒーローは、怪獣の背後から近寄るといきなり抱きついた。身をくねらせ嫌がる怪獣。ヒーローは、なおもしつこく抱きつきその手を怪獣から離さなかったという。
警察の取調室にて
「刑事さん、誤解です。私は地球の平和のために怪獣と闘っただけです。怪獣が雌だったなんて本当に知らなかったのです」
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