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 ピピピッ、ピピピッ


 目覚まし時計の音がうるさい。もう朝か。


「うーん……」


 ピピピッ、ピピ--グシャッ


 「へっ?」


 嫌な音がして目を開けるとそこには赤黒い手と握りつぶされた目覚まし時計がある。


 僕の目は一気にさえた。


 やばい鬼化してる。鏡を見るとそこには髪の長い女の自分(鬼)がいた。


 「はぁ。やっちゃった」


 昨日家に帰ってすぐに寝てしまったのが失敗だったみたいだ。

 僕は24時間ずっと人間の姿でいることができない。


 1日に1回は鬼化しないといけないんだ。

 しないと24時間経過後に勝手に鬼化してしまう。

 しかも一度鬼化をすると1時間は人間に戻ることはできない。


 どうやら寝ているうちに勝手に鬼になったようだ。

 

 いつもなら夜寝る前に事前に2回鬼化して、女の人間の姿になってから寝るのだが、昨日はそれを忘れてしまった。


 とりあえず人間に戻ることにする。


 すると性転換が起き、僕は元の姿、つまり人間の男の姿になった。

 

 ちなみに鬼化するにも最低でも1時間は人間の姿を保たなければならない。


 林瑞希になるには、あと2時間は必要だ。


 ああ、今日は遅刻確定だな。


 そう思うと僕はまず、朝ごはんをつくることにした。






 あの後もう一度鬼化して、やっといつも学校に通ってる姿になれた。


 とりあえず長い髪がめんどくさいので後ろでまとめる。

 そして制服を着た。


 ばっちりだ。


 時計を見る。

 無情にも10時を超えていた。


 「いってきまーす」


 乾いた声が誰もいない部屋へと響いた。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 「みーちゃん、おっそーい」


 今日もあいちゃんが可愛くぶーぶー言いながら僕を出迎えてくれた。


 それだけで僕は日常をかみしめている気がして幸せになれる。


 「ごめん、ごめーん。ちょっと今日の朝は盛大に寝坊しちゃったんだぁ」


 「もー。でも今日のみーちゃんが可愛いので許しますです~」


 「はは、なにそれ~」


 「えー、とっても似合ってるよ。髪をおろしてるみーちゃんも可愛いけど、髪をたばねてるみーちゃんも、すっごくかわいい~//。私のお人形さんになってぇ~」


 「全力で拒否します」


 「ぶーぶー」


 どうやらみーちゃんは僕の髪型を気に入ってくれたようだ。

 僕は自分の束ねた髪を持ち上げてみる。


 こっちのほうが楽だし、これからはこの髪型で来ようかな。

 

 そう考えていると----


 「おはよっ、その髪型なかなか似合ってるよ」


 「あっ、林君。だよね~。すっごく可愛いよね~」


 林友一が話しかけてきた。


 「あ、ありがとう」


 とりあえずほめられたので礼だけは言っとく。


 「ねえ、みずきちゃん。今週の土曜日暇?」


 「えっ、暇だけど……」


 「良かったら一緒に遊びに行かない?」

 

 えっ?誘われた?


 僕の思考回路がマヒしてると、あいちゃんが物申し始めた。


 「ぶー。私のみーちゃんは渡しません!!」


 「えっ、ああ。もちろん二人っきりじゃいよ。そうだ。立川さんもどうかな?遊園地。楽しいよ」


 「へっ、私も?うーん、どうしよっかな~。他には誰が来るの?」


 「ああ、一輝がくるかな」

 

 「水守君も!!行く行く!みーちゃんも当然いくよねっ!」


 なんで当然なんだ。

 僕は行きたくないぞ。

 

 そう思ってあいちゃんを見るとうるうるとした目で見つめ返された。


 僕はあいちゃんに弱い。

 そんな目をされたらどうしようもない。


 「で、みずきちゃんはどうするの?」


 「……行く」


 「やったー!」


 とりあえずあいちゃんテンションあがりすぎ。

 大きな声を出して喜ぶあいちゃんに、僕は少しだけ頭を抱えたくなった。


 「よかった。それじゃあ土曜日によろしくね。じゃあちょっと待ってね。__一輝~!」


 林友一が大きな声で水守一輝を呼ぶ。

 

 先ほどからチラッチラッとこちらの様子をうかかがっていた水守がこちらに歩いてきた。


 「よ、よろしく」


 「よろしく//」


 「……よろしく」


 上から水守一輝、あいちゃん、僕の順だ。

 

 逃げなかった僕を誰かほめてほしい。



 「はいっ、じゃあこの四人で土曜日に遊園地に行きます。みんな仲良くね」


 「は~いっ」

 

 林友一がニコッという形容詞が出てきそうな笑顔をしながらまとめ始め、あいちゃんがあいの手を打つ。


 水守は僕の様子ををうかがいながら話に加わり、僕は極力話さないようにして聞き手に徹した。


 「じゃあ、土曜日のことは以上で。解散っ」


 大まかな打ち合わせが終わったところで林友一が場を閉める。




 土曜日を迎えたくない。本気でそう思った。




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