第24話 ドラゴニュートの姫騎士
「待て! この痴女が!!」
その声と同時に、空気が一変した。
カミラのマンションのリビング、その中央に――
白銀の鎧に身を包んだ長身の女性が立っていた。
月光を弾くような鎧。
背中まで流れる緑の長髪。
凛と伸びた背筋、騎士として完成された佇まい。
……だが。
勇人の視線は、どうしても一点から離れなかった。
(ちょっと待って)
鎧の隙間から主張する、圧倒的な存在感を放つ胸部装甲(物理)。
そして――
(……尻尾……?)
そう。
彼女の腰からは、巨大なヘビのような尻尾が伸びていた。
(尻尾ーーーーーーー!!
なにこの娘!?いや人じゃない!?)
勇人の思考が追いつく前に、姫騎士は剣を抜き、カミラを一直線に指さした。
「その男から離れろ!!吸血鬼め!!」
「……は?」
カミラが一瞬、素に戻る。
そして次の瞬間。
「お前――ドラゴニュートか!!」
カミラは親指で自分を指しながら、堂々と言い放った。
「こいつはな。俺の旦那だ」
「夫婦のことに首突っ込むんじゃねえよ」
「何を戯言を言う」
姫騎士は一歩前に出て、勇人に向かって手を伸ばす。
「その男は私のものだ。返せ!!」
(あっ)
勇人の脳裏に、これまでの修羅場が高速再生される。
(この流れ……)
(知ってる……)
(絶対この後、拉致監禁する展開だよね)
(で、名前聞いてくるやつだ)
(うん、今のうちに偽名考えとこう)
――人は、経験によって強くなる。
「殺るってのか」
カミラが不敵に笑い、肩を鳴らす。
「いいぜ。表に出ろ」
「いいだろう」
姫騎士も一切引かない。
こうして――
吸血鬼とドラゴニュートの姫騎士、
一人の男を巡る戦いが始まった。
勇人の気持ちと人権を、完全に置き去りにして。
――高層ビル・屋上――
夜風が唸る。
眼下には、光の海のような夜景。
その中心で、二人の人外が向かい合う。
ドラゴニュートの姫騎士が、剣を地面に突き立て、名乗りを上げた。
「我が名は――
イオアンナ・ドラゴニア」
ドン、と効果音が聞こえそうな威圧。
「誇り高きドラゴニュートにして騎士」
「貴様も名を名乗れ!!」
カミラは肩をすくめる。
「いいぜ。名乗るほどのもんじゃねえが……」
ゆっくりと目を細め。
「俺の名は、伏上カミラ」
「魔界じゃ、カミラ・アンブロージアって呼ばれてる」
その名を聞いた瞬間、イオアンナの目が見開かれた。
「――貴様!!」
剣を抜き放つ。
「知っているぞ!!
超問題児と噂の狂犬カミラ!!」
「傍若無人すぎて、同族からも見放された存在だ!!」
「ふん」
カミラは鼻で笑う。
「あんな塩っぱい連中、こっちから願い下げだね」
闇が、彼女の身体を包み込む。
次の瞬間――
姿は一変。
黒いボンテージの戦闘装束。
背中には、破れたような翼。
赤く煌々と光る瞳。
「お前も知ってるぜ」
「普段は澄ました顔してるくせに――」
ニヤリ。
「キレたら止まらねえ
暴龍姫イオアンナだろ?」
「……言ったな」
イオアンナの尻尾が、地面を叩きつける。
「いいだろう。叩き潰してくれる!!」
――一方その頃の勇人――
「……あの」
勇人は、戦利品扱いで
縄で縛られ、正座させられていた。
「そこはさ……話し合いでね?」
「ほら、今日はもう遅いし……明日に――」
――言わなければいいのに。
「女同士の戦いに口出すな!!」
「貴様は黙っていろ」
二人同時。
「は、はい! ごめんなさい!!」
勇人は涙目で叫ぶ。
「でも、もう帰してよーーーーーー!!」
「「うるさい!!」」
再び、完璧なハモり。
「「大人しく見てろ!!」」
(……あれ?)
(僕、何しにコンビニ行ったんだっけ……)
こうして、
ドラゴニュート姫騎士 vs吸血鬼
都市伝説級のバトルが、幕を開けたのだった。
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