テスト前
テスト勉強漬けの一週間はあっという間に過ぎ、テスト初日の月曜日になった。
土日も手を抜いていないし、少なくとも一人ではここまでやれていなかっただろう。これも花宮のおかげだ。
金曜日の深夜、結局あの状態になった花宮は、翌日の土曜の朝に謝罪のメッセージが届いていた。
あれは花宮だけの責任じゃない。大丈夫だと判断した俺のミスでもある。
不可抗力とはいえ、彼女の住むマンションを知ってしまったことに、少しだけ罪悪感が残った。
花宮のことをしっかり異性として見ている男子たちにとって、垂涎ものであることは確かだと思うが。
ところで、初日のテストの科目は、現代文と情報、そして数学だ。現代文は最も得意な科目といえるが、数学は一転して最も苦手。幸先が不安な初日だと思っている。
ちなみに、数学に関してⅠとAがそれぞれ50点の、合計100点の構成になっている。
苦手科目の数学は他の科目よりも多めに勉強してはいるのだが、それでもまだまだ不安は残る。
教室はいつもより違った雰囲気を見せている。
ソワソワと教科書やノートを片手に必死にテスト範囲を復習していたり、友達同士で談笑交じりに問題を出し合っていたり、挙句の果てには未だに終わっていないテスト課題に死ぬ物狂いで取り組んでいたりと様々だ。
俺もホームルームまでの間は勉強しておく。
今やるべき勉強は数学――ではなく現代文の漢字だ。
いくら得意な科目とはいえ、本番に忘れてしまっては意味がない。だから少しでも穴を埋めておく。
数学に関しては、昨日まで出来る限り頑張ったと思っているし、これ以上やったところで変わらないだろう。
落ち着きがないクラスの雰囲気を感じつつ、出題範囲の漢字ドリルをパラパラと眺める。
「これが……で――わかる?」
ふと、花宮の声が耳に届く。離れていても聞こえるくらいには賑わいを見せている。
今は仲の良いグループのうちのひとりの女子にマンツーマンで勉強を教えてあげているようだ。
「う~ん……えへへ」
「もう! えへへじゃないよっ」
対して相手の方はあまり理解している様子は見られない。
教えるのって大変なんだな。
「お前ら席につけ~」
そうしているうちに俺たちの担任が教室へ入ってきた。
最後のテスト勉強が中断された。多分大丈夫だとは思っているが、やはりテスト前ともなると緊張感が違う。……花宮に教えて貰った部分も大きいだろう。なんというか、いつも以上に頑張らないといけない気がするのだ。
「……そこ、課題はあきらめろ」
担任が指を差し、死に物狂いで課題に取り組んでいた生徒はあえなく間に合わなかった。
今日のホームルームは出席確認と、簡単なテスト概要だけが行われる。
カンニングはNGだし、スマホの電源んはオフにすること。そしてもし早く終わっても見直しは欠かさないこと。当然だが必要なことになるので担任は淡々と説明していく。
「1限から現文とかマジ終わった……」
「マジそれ」
「もう課題諦めろって~」
「黙れ! 俺は限界を超えるんだ!」
「宮田くん、ここ、教えてもらってもいいかな?」
「ん? ああそこね、いいよ」
ホームルームが終わり、再び喧騒を取り戻した教室内。
特に話す相手もいないので、先に席へと向かっておく。席替え済みの本来の席ではなく、出席番号順での窓側席となるので今の位置とは少しだけ遠い。
幸い俺の場所には誰も座っておらず、早めに着席することが出来た。
することもないし、肘をついて窓を眺める。
窓には雲がいくつかあるも、快晴だ。
「……ん?」
スマホにバイブ音が鳴る。着信だ。
誰からだろう、と考える間もなく思い当たるようなと登録している人物は親と花宮だけだ。
『テストがんばろっ!』
やはり花宮からの通知。言葉の後に、シュールな表情でチアっぽい動きをする謎のクマのスタンプが添えられていた。何種類あるんだろう。
『はい』
返信してからスマホの電源を落とす。もうすぐテストも始まるし、スマホから得られる情報も別にない。
ある程度リラックスしてから始めた方がいい方に転がるはずだ。
チャイムが鳴り、先生も入室してくる。
さて、頑張ろう。




