表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
17/17

コントローラー

 初戦の結果は惜しくも2位。

 久しぶりの操作で何度か攻撃を受けてしまい、その隙にCPUに前へ出られてしまった。

 花宮の方はというと、最下位こそ免れたものの結果はギリギリ11位。

 まだ1レース目だ。

 画面の順位表が消えるのを見ながら、俺は小さなリモコンを握りなおす。

 ……CPUに負けたのが地味に悔しい。

 次こそは――と、自然と気持ちが前のめりになる。


 2レース目は、雪と氷に包まれたコースだ。

 落下や障害物が少ない代わりに、よく滑る。ハンドル操作が遅れると、車体が流れてコース外に乗り上げてしまう。

 ここではいかにドリフトを使ってカートを操作するかが肝なのだが、花宮はというと――


「あわっ! すご、滑る!」


 車体が流された結果、見事にコース外の雪原へ乗り上げていた。そこでは滑ることはないが、明らかに速度が落ちてしまう。

 さっきまで楽しそうにゆらゆら揺れていた花宮だったが、この時ばかりは少しパニックになっているようで、ポニーテールが左右にブンブンと振り乱されていた。

 結果は残念ながら5位と、少し沈んでしまった。

 このコースは滑りやすさに加えてカーブも地味に多い。この2つの要因で難易度が上がっていたといえる。

 とはいえ、まだまだ2レース目だ。ここから1位で逆転することだって可能なのだ。

 隣を見ると、ゴールしたばかりの花宮が息を整えつつ、またゆらゆらと揺れていた。さっきまでの半パニックは鳴りを潜め、今ではすっかり楽しそうにしている。


 続いて3レース目。

 このコースはカーブこそ少ないが、道中のギミックとしてトランポリンが設置してある。その真下はもちろん奈落ということもあって、跳ねた瞬間の操作を誤ってしまうと着地が乱れ、そのまま落下――一気にタイムを落としてしまうのが特徴的だ。

 

「わわっ! すごい跳ねる! おもしろ~い!」


 花宮はトランポリンに目を輝かせながら、着地のタイミングでしきりにコントローラーを上へ振っている。

 このゲームにジャンプアクションというスキルはあるが、振る必要のあるスキルは無いし、このコントローラーでは振っても何も起こらない!

 そして今回、俺は落下や被弾をすることもなく、最後まで安定した走りで先頭を維持し、ついに1位を取ることが出来た。


「おぉ~、すごい! 1位だ~」


 花宮は自分のことのように喜んでくれている。一方、彼女の結果は最下位だった。やはりトランポリン地帯で何度か大きく後れを取ったらしい。


「ねねね! なにかコツとかあるの? その……どりふと? ってやつ教えてほしい!」


 グイグイと前のめりになって顔を近付けてくるせいで、俺は無意識のうちに身を引く。


「わ、わかったので! ちょっと下がって……」

「あ! ゴメンね。ちょっと熱くなっちゃてた」


 照れくさそうに顔を綻ばせ身を引く。

 俺の方も取り乱しかけた意識を正し、自分の持つリモコンを見る。

 これじゃあ小さすぎて見辛いよな。

 取り外しのこのリモコンではボタンが指で隠れてしまい、教えることに関しては明らかに向いていない。


「ちょっと借りますよ。えと、まずドリフトするタイミングは――で、この裏のボタンを適切なタイミングで押して、左のスティックでいつも通り曲がれば、ドリフトできます。わかりました?」


 俺はわかりやすく説明できていただろうか。そう思いつつ、コントローラーを見ていた視線を花宮の方に向ける。

 静かに聞いていた――そう思っていたが、よく見ると心ここにあらずな感じで、俺の言葉が届いていないようだった。

 しかし、視線はコントローラーに注がれている。いや、違うな?


「す、すみません!」


 瞬間的にコントローラーから手を離す。……正確には花宮の手から手を離す。

 俺は説明に夢中になるあまり、花宮の手の上からコントローラーを握っていたようだった。

 やらかした。それは花宮の黙り込んだ表情からみても察することが出来る。責められても仕方がない。

 沈黙が痛すぎる。何かしゃべってくれないか……?


「…………あ、はは。いいのいいの。私の方こそ教えてくれてたのにちゃんと聞いてなくてゴメンね」


 いつも通りの声音で笑う花宮だが、その笑顔は見るからに無理して作っているものだ。いかに人間関係に乏しい俺だって、それくらいはわかる。

 再び流れる二人の沈黙が、再び痛い。

 テレビ画面には軽快なBGMと共に3レース目のリザルトが映っている。

 なにか話さないといけないと思いつつも、やっぱり何も思い浮かばない。そもそもこういう時にかけるべき声を俺は知らないのだ。


「……えっと、次やろっか?」

「あ、はい。そうですね」


 俺たちはさっきまでとはまた別の、独特な空気間で最終レースを迎えるのだった。

タイトルが思い付かない定期

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ