レーススタート
投稿してるつもりだったのに下書きのままだった
(テスト期間が終わったので再開できそうだ)
「うわっとっと、くぅ」
花宮はしきりに左右へ体を傾けながら、コントローラーのボタンを力いっぱい押し込んでいる。
時折漏れる小さな声やぎこちない操作から、ゲームの経験があまりないことがはっきりと伝わってきた。
いくつかあるゲームの選択肢の中から、花宮が選んだのはレースゲームだった。
複数のキャラクターがカートやバイクに乗り込み、コース上で拾えるアイテムを使いながらゴールを目指す――子供から大人まで楽しめる、定番のパーティーゲームだ。
今はコース脇のガードレールに車体を擦り付けながら、なんとか前に進んでいる状態だ。
その甲斐あってか、残念ながら最下位はキープしている。もし奈落や落とし穴のあるコースだったら、間違いなく余裕でコースアウトしていただろう。
いわゆる補助輪と呼ばれるアシスト機能をあらかじめ入れておけば良かったな。
それでも彼女は楽しそうで、操作に合わせて体ごと左右に傾けている。
結んだままのポニーテールも、その動きに引っ張られるように何度も振り回されていた。
もれなく夢中といった感じだ。
必死なプレイを横目で眺め続けているのも悪くはないが、さすがに傍から見たら気持ち悪い気がして、一度キッチンへ移動する。
戸棚から自分用のマグカップと客用のカップを取り出し、ココアの粉末をスプーンですくって入れる。ウォーターサーバーから注いだお湯の湯気が、静かに立ち上った。
普段は人を招くことなどほとんどないのに、こうして客用の食器が揃っているのは、たまに親が来たときにコーヒーでも出せるように、という理由だけだ。
まさかそれが、こんな形で役に立つ日が来るとは思っていなかった。
両手にカップを持ったままリビングに視線を向けると、ちょうどレースが終わったところらしい。
結果は最下位。カートに乗ったキャラクターは悔しそうに項垂れ、画面の下には《順位が確定したのでレースを終了しました》という無機質な文字が表示されていた。
てっきり画面のキャラ同様に悔しがっているかと思ったのだが、そうでもないらしい。
なんというか、やりきった感がすごい。
肩の力が抜け、深く背もたれに体を預けた花宮は、ふうっと小さく息を吐いている。ポニーテールの先がゆっくりと揺れ、その動きだけで、今までどれだけ必死だったのかが伝わってくる。
俺はローテーブルの前に湯気の立ち昇るカップたちを置く。
「わ! ありがと」
花宮は両手で受け取ると、息で冷ましながらスーッと飲む。
「美味しい! ……ね、幸村くんも一緒にやろうよ!」
花宮は、ハッと気が付いたように言ってきた。
別に気にせずそのままやってていい、なんていうのは流石に野暮というものだ。
「わかりました、ちょっと待ってください」
俺は花宮の隣に移動し、コントローラーを一度受け取る。操作を切り替えて二人プレイに設定し、画面が分割されたのを確認してから、コントローラーを彼女に戻す。続けて本体から小型コントローラーを外し、接続を済ませた。
そのまま俺はカーペットに腰を下ろす。
「あれ? 隣に座らないの?」
花宮はソファの空いた場所を軽く叩いた。
「いや、俺は床で大丈夫です」
「え~、君の家なのに~」
「本当に大丈夫ですよ」
少し間を置いて、花宮が言う。
「じゃあ私が床に座るから、君がソファに座ってよ」
やたら強情だな。
少し考えてから手をついて立ち上がり、花宮の隣にドカッと座る――こともなくちんまりと隅っこに座った。
「へへっ」
花宮は満足そうに笑う。俺は視線をテレビへ戻した。画面はキャラクター選択に切り替わっている。
花宮はさっきと同じく、人気の高いおばけのキャラクターを選択する。
俺は無難に主人公を選んだ。
コース選択の画面が表示される。特に指定はせず、そのまま花宮に任せる。
「ここ可愛い! ね、ここでいい?」
「はい、大丈夫です」
花宮は即座に決定ボタンを押した。
少しのロードが入る。その間、二人とも口を開かないまま時間だけが過ぎていく。
花宮は画面に顔を向けたまま、指先だけが落ち着きなくコントローラーをいじっている。
こちらはそれを横目に見ながら、何となく視線の置き場に困って黙り込む。
ロードが終わり、暗転していた画面がパッと切り替わる。
軽快なBGMが鳴り、コース全体を映すビューイングが流れ、スタートラインにカートが並んだ。
「負けないよ……!」
花宮が小さく声を漏らす。
カウントダウンが始まり、エンジン音が重なっていく。
3、2、1――
同時に画面が動き出し、12台のカートが勢いよくスタートを切った。
初めて感想がついていたのにビビり散らかした挙句、失踪してたなんて口が裂けても言えない!!
まだ読めてません、、、でも嬉しいです




