ここの教師は鬼畜である。
翌朝。
俺と遊矢は授業のために教室に来ていた。
寮のご飯も美味しかったし、大満足です。
周りを見渡すと、他の生徒もチラホラと来ているようだ。
朝のホームルームまでまだ結構あるのに。みんな偉いな。
やがてホームルームの時間になった時、教室のドアが乱暴に開かれた。
現れたのは我らが担任。気だるそうな足取りで教卓に立つ。
「おはよう。出欠取るぞー」
担任が名前を呼んで返事をする退屈な時間が始まる。
それが終わった時、担任はおもむろにグラウンドを指さして告げた。
「今からは体育の時間だ。全員着替えて移動するように。」
朝の一限目から体育?どつき回すぞ!
目は覚めるけど、辛いわ!
叫びたい衝動を抑えて、大人しく更衣室に向かう。
十分後。
春の心地よい風がグラウンドの砂を巻き上げて、吹き荒れる。
風強いな、体育したくねぇよ。
クラスメイトが全員集合したのを確認してから、先に待っていた担任が口を開く。
「今日はお前らの『エーテル傾向』を確認する。何を言ってるかわかんねぇと思うから説明するぞー」
やる気なさそうに担任はホワイトボードを取り出して説明を始めた。
俺等には『エーテル』と呼ばれるエネルギーが常に循環している。
『エーテル』にはそれぞれ傾向が存在して、傾向によって今後の成長方針を決めるようだ。
また幻獣にもエーテルを使うやつがいるので、それの対策も同時に学ぶらしい。
「遊矢、真昼。聞き流しているようだから言っておいてやる。エーテルを上手く使えるやつはな、モテるぞ」
「「やったりますわ!!!!」」
煩悩丸出しの俺等は叫ぶ。
衝動的に叫びすぎて、クラスの女子からの視線が痛い。
やめてよ!恥ずかしいじゃん!
「まぁいいか。じゃあまずお前らから測るわ。前に出ろ」
「うっす」
「はーい」
俺と遊矢は二人で前に出る。
もしかしてだけど、俺等って実験体にされてる?
「じゃあまずコレを見ろ」
担任はポケットから何の変哲もない石を取り出した。
何やコレ。まじでなんにも感じない。
「この中には宝石が入ってる。何かわかるか?」
「わかるわけ無いでしょう?」
俺は真っ先に言った。遊矢もだろ、と思いながら彼を見ると何かを感じ取っているようだった。
顎に指先を置いて、深く思考している。
そして答えが出たように言った。
「……ガーネット、ですか?」
マジか。そういうよりも速く、担任が口を開く。
「正解だ。じゃあ次、この石には何が入ってる?」
次も正解、また次も正解、何度も成功していく遊矢を見て俺は軽く恐怖を感じていた。
なんで石の中の宝石の種類が分かんだよ、インペリアルトパーズとか聞いたことのないもん当てんなよ。
「遊矢、お前のエーテル傾向は【大地】が確実に入ってる。【大地】の傾向は汎用性も高く、強力だぞ。あとは精密に検査しておく。」
お礼を言ってから遊矢は下がっていった。
次は俺の番のようだ。
「真昼、今度はコレを見ろ。」
取り出したのは星座の一覧。
星座の一覧だが、どの星座かは名前も書かれておらず、ただ星空を写真にしただけのようだ。
コレをどうしろと?
「今から俺の指す星座、そこから何を感じる?」
そう言って指を指したのは乙女座。
ん?なんで俺は星座がわかる。星占いなんか見ないし、自分の星座だって知らないのに。
でも直感が囁いてくる。確実に乙女座だと。
感じるのは生命の力。安らぎをもたらす包容力だ。
「乙女座、感じるって言われても直感ですが、生命力です。」
答えた瞬間、担任の目が見開かれる。
驚き、疑念の2つが混じった複雑な感情だ。
どうしたんだろう?
「真昼、遊矢。今からお前らと模擬戦をする。」
バカタレがぁ!!
何もわからんし、ついていけんわ!
「お前らに確認したいことがある。頼む。」
真剣に担任が頼み込むので、大人しく構える。
「行くぞ」
開幕と同時に放たれる掌底。
豪速の一撃を寸前で回避し、反撃の回し蹴りを入れる。
しかし担任は右膝を持ち上げてガードした。
担任はそのまま蹴り上げて俺の足を跳ね飛ばす。
「元運動部を舐めるなよ!」
跳ね上げられた足を軸にしてバク転で距離を取る。
人間の速度じゃねぇな、我らが担任は。
さっき見えた違和感は何だ?拳に何かを纏っていたように見える。
思考を巡らせた結果、一つの結論に至る。
『エーテル』か!見様見真似で使ってみよう。
担任は遊矢を相手していてこちらを見ていない。
絶好のチャンス。
担任の動きを見逃さないようにひたすら眺める。
軸足の動かし方、パンチを放つ速度、関節の動き。
要所要所でエーテルによる加速を行っているようだ。
「なら俺もできるだろ」
拳を深く握りしめ、精神を統一する。
腹の底から何かを引き出すイメージで。
すると奥底からなにか温かいものが湧き出てくる感触があった。
コレだな。温かいものを逃さないように全身に巡らせる。
筋肉に活力が宿り、今まで以上のパフォーマンスが出せそうだ。
「OK、理解したぜぇ!行くぞぉ先生ぇ!」
深く足を踏み込み、瞬時に加速する。
軸足にエーテルを纏わせて固定し、関節にも込めて加速力を上昇させた。
ボクサー顔負けのスピードの右ストレートを味わえ!
「オラァ!!」
渾身の一撃は担任ではなく、黒いヘビに衝突した。
堅牢な鱗に阻まれ、勢いを止めてしまう。
近くにいると食われそうな威圧感を感じさせている。
捕食者がいるという恐怖心故に反射的に距離を置く。
やがて巨大な黒蛇はとぐろを巻いて担任を守るように低く唸る。
周りのクラスメイトはパニックだ。
そりゃあいきなり大蛇が出てきたらねぇ。
「止めだ、お前らの実力はわかった。真昼、お前の傾向は【星】だ。めったに出ることがないからこんな形を取った。あとは他の奴らも適正を見るからこっちこーい。」
なるほどね、まじで理由はあったんだ。
そうしてその後も適正を見て一日が終わった。




