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波乱の寮


「寮生活、楽しみだな!」


いっしょに寮に向かっている時に遊矢が満面の笑みで告げた。

確かに、寮生活なんか初めてだからな。無性にワクワクする気持ちはわかりすぎる。


「一緒の部屋だといいな。」


そう言うと、遊矢は驚いたような顔で俺に話しかけた。


「お前、まさか部屋割り見てねぇの?」

「は?」


ヘヤワリ?なにそれ。私そんなの知ラナイヨ?

ってことは?


「俺とお前は同じ部屋だよ!」

「マジ?」

「うん」


しゃああああ!!

良かったぁ!仲良くなった奴と同じ部屋とか最高かよ!

歌でも一つ歌いたい気分だ。

現実逃避はここまでにして。


「なあ。」

「言うな。俺も言いたいことはわかってる。」

「あれってさ」

「黙れ!!見たくねぇ!見たくねぇんだ!」


そんな事を言っている俺達の眼の前にあるのは明らかにやばい事がわかる【要塞】だった。

大門が正面にあり、その左右には映画とかでしか見たことない重機関銃や大砲、ミサイル発射装置が設置されている。絶対に寮に必要無い装置ばっかりだろコレ。

男のロマンはすごいけどさ、現実で見ると威圧感やっべぇぞ。


「まあいい。とりあえず行くぞ!」

「ヤメロー!シニタクナーイ!!シニタクナーイ!!」


絶叫する遊矢を引きずって開門していた正面入口から入る。

中には三つ星ホテルくらいきれいな景色が広がっていた。

ラウンジだと思う場所にはバカでかいシャンデリアがあり、なんかビリヤードとかダーツがある。

なんでぇ?外観デザインと内部の温度差すげぇな。

ここでギャンブルできたら楽しいだろうなぁ。

受付みたいな場所があったのでとりあえず底に向かってみることにした。

カウンターに茶髪をポニーテールで結んだ大変美しいお姉さんがいたので吸い寄せられるように俺はそこに向かって歩いた。遊矢も何も言わずについてきている。

もうすぐで到着、と言ったところで俺と遊矢は首根っこを掴まれて持ち上げられた。


「何をする!?」

「俺のオアシスが!?」


二人揃って絶叫して掴んだやつを睨むために振り返る。

そして言葉を失った。俺のことを持ち上げていたのはドウェ◯ン・ジョン◯ン顔負けのゴリマッチョだ。

身長も2メートル位あるんじゃないか?というほどの巨体で肩幅も広い。

ボディービルダーも全裸になって逃げ出すレベルだろう。恐ろしいのがその顔。

スキンヘッドに左目には大きな傷、外国人みたいなクソいかついタイプのイケオジだ。


「指、詰めますね。遊矢は?」

「俺も。」

「はい、これカッター」

「ありがと」


宙吊りの状態のまま、俺は器用にカッターを取り出して隣の遊矢に渡す。

俺は寮生活で使おうと思ってた自炊用の出刃包丁を取り出した。

覚悟を決めるために深呼吸した後、俺と遊矢は見つめ合う。

目線で、「わかってるよな?」、「わかってる」と会話をする。

そして再び大きく息を吸い、空中で指を詰める準備をし叫ぶ。


「「ケジメぇぇ!!!」」


詰めようとした瞬間に、後頭部に強い衝撃を感じて気絶した。












数時間後。


意識が浮上してきて、俺は跳ね起きた。


「俺の指ぃぃぃぃ!!!」


慌てて手を確認するが、小指がついている。

あれ?詰めなかったのか?

クソ!俺がここまで覚悟のないやつだったとは!


「俺は意気地なしじゃない!遊矢も体を張ったんだ!俺に指がついてればチキン野郎って先祖にバカにされてしまう!うおおおおおおお!!」


もう一度近くにあったバッグに手を伸ばした瞬間、声を変えられた。


「待て。もう一回気絶させるぞ。それに遊矢?だったか。そいつの小指も無事だ。」

「ふぇ?」


隣を見た瞬間、遊矢が笑顔でサムズアップしてこちらを見ていた。


「ナイス覚悟!」

「キェェェェェェェ!!!!」


恥ずかしい!起きてたのかよこいつ!

そういえば声を掛けてきたおっさんは?

もう一度見てみると、あのボディビルダーだった。


「「ギャアアア!!」」

「うるせぇ。次叫んだら気絶させる。普通に喋れ。」

「「ウッス」」


はぁ、とおっさんがため息を吐いたあと、自己紹介をする。


「俺はここの管理人。ミハイルだ。よろしく。」

「「あ、管理人さんか。よろしくお願いします」」

「仲良いな、お前ら。」


遊矢とはなんかめっちゃ気が合うんだよ。

アイコンタクトで会話したの久しぶりだわ。


「まぁいいや。今日は飯食って寝ろ。お前らの部屋は3階の412号室だ、間違えんなよ。んで鍵な」


ミハイルさんから鍵を渡され、俺達はそのまま部屋に向かった。

そして泥のように眠りました。指を詰めるときの精神の消耗のせいです。

明日から普通の学校生活か。期待を胸に俺は意識を手放した。




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