お姉様のためなら、ベランダからでも落ちますわよ!
「やあアネット、今日も可愛いね。翠の瞳が素敵だよ」
そう言ってデジレ様は、私に微笑みかけた。
(ふふっ、私が可愛いのは、当たり前のことでしょう)
彼。
お姉様の婚約者であるデジレ様は、私に夢中。
伯爵家に来ると、真っ先に私に声をかけてくれるの。
だから私も愛想を振りまく。
そっと彼に擦り寄って、上目遣いで目線を送ると、美青年の頬が緩んだ。
(お姉様が来るまで、私の魅力を堪能なさって)
私はニンマリ目を細める。
そんなことしてて良いのかですって?
ええ。私には許されてるの。
この家の人たちは、皆私にすごく甘い。
お姉様は"伯爵家にふさわしくあれ"と厳しく注意されてるけど、私が叱られたことはない。
私は難しいことをしなくていい。
お姉様がお勉強してる時間は、使用人達とたっぷり遊んで、お母様と美味しいおやつを食べて。
色とりどりの綺麗なリボン。
きらきら光る宝石たち。
全部私のために用意されたものよ。
いつも最高級に着飾って、愛らしい私を見せるだけ。
「あら、ダメよ、アネット。そんなにデジレ様にくっついたら」
仕度を終えたお姉様が部屋に来た。
「今日は、ポーラ嬢。アネットは可愛いですね。そして貴女はいつもお美しい」
デジレ様は私を先に褒めたけど、お姉様には十分らしくて頬染めて喜んでる。
「突然の訪問を許してください。このところお会い出来ず、恋しくなってしまったのです」
「いいえ、お忙しい中、こうして会いに来て下さって嬉しいです」
はにかみながら、お姉様がデジレ様を誘う。
「今日は風が気持ち良いので、バルコニーで楽しみませんか?」
「良いですね。ではお手をどうぞ、お姫様」
デジレ様が私を避けて、お姉様の手を取った。
そんな二人を追いかける。
私を仲間外れにしないで!
庭を見下ろすバルコニーでも会話が弾む。
「南国に行った同胞は、ベランダというものを作ったようで」
「ベランダ?」
「屋根付のバルコニーです。あちらは陽射しがきついから」
「まあ……」
話の途中、お姉様が悲鳴をあげた。
「きゃあ、蜘蛛!」
風に乗って、手すりに飛んできたらしい。
(任せてお姉様!)
得意のジャンプで飛んだ私は、勢い余って手すりの向こうに。
失敗。飛び越えちゃった。
「アネット!」
くるりっ。すたっ。
宙で身を回し、着地を決めた私を、お姉様達がバルコニーから覗き込んだ。
「怪我はない?」
「にゃあん」
平気よ、お姉様。
お姉様のためなら、バルコニーでもベランダでも落ちてみせるから!
あれ、蜘蛛は?
お読みいただき有難うございます!
なろうラジオ大賞参加作品4作目です。
これは早々にネタバレしたのではないでしょうか?(笑)
ニャンコの言う宝石とは多分首輪に。そしてデジレ様は猫の毛だらけ。
なお、張り出しについて。
一階がテラス、二階以上がバルコニー、屋根があるのがベランダだそうです。
ベランダはインドに行ったヨーロッパ人が考案したんだって。
ジャンルは「その他」にしていますが、後で変更するかもです。よろしくお願いします♪ヾ(*´∀`*)ノ