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ねこ娘とおっさんの旅行記

ねこ娘が故郷から出発するだけの話

作者: なぞまる

「一日1000クレジットかー。悪くはないんだけどもう一声欲しいかな。けど、贅沢はいってられないかぁ」


私は酒場の掲示板の端っこに貼ってあった張り紙を外して持っていくことにした。


「それにしても、動力係って何をすればいいんだろうねぇ。楽だったらいいんだけど。ま、この星系から出られるならなんでもいっか……」


「うぉーい、姉ちゃん、一緒に飲まねぇか?」


酒場の酔っ払いのおっさんに話しかけられた。私は一睨みする。


「お、おい、こいつはパルムだぜ? 猫だ。俺はケモナーのケはないんだ」


絡んできた酔っぱらいと一緒にいたヒューマの男が失礼なことを言ってくる。まあなれっこだけど。私はパルムの中でも特に妙齢のヒューマの女性に見えるらしい、耳と尻尾を除いて。他は衣服の中だからね、違いは。



「パルムで悪かったね。今から出ていくところだったんだ、じゃあね、二度と会わないことを祈るよ」


情報収集のために入った酒場を出て、張り紙に書いてあるところへ向かう。

その場所は普通に宇宙港の一角なので怪しいところではない、と思いたい。そういったところが酒場で人員を募集するってことも珍しいけど、まあなんとかなるでしょ。


必要なのは人並み以上の魔力、ってことなので、いけるはず。私はパルムの中でも突出して魔力が高いみたいだし。



「では貴女がその募集に乗りに来てくださったのですか。この星系から出ますがよろしいのですか?」


パルムはこの星系に元からいた種族で、外に出ていく者はほとんどいないということらしい。私には関係のない話だね。



私の話をを受け付けてくれたのは女性型ゴーレムだ。よく見かける女性型ゴーレムはヒューマの美女に擬態したものが多いと思うけど、この人は一切擬態しておらず、ひと目見てゴーレムと分かる風体をしている。それなのになぜ女性型なのか、という疑問が湧くけど、なんでだろうね。


「はい、むしろ出たいんです。魔力もそれなりにあります。ブラックベルトも二段持ってますし」


そういってカードを見せる。個人の証明用カードなんか一文にもならないから取り上げられずに済んでいたものだ。


「まあ、貴女が良いのならこちらとしても大歓迎ですがね。宇宙進出税や船での生活費などを差し引くと一日200クレジットになりますが、いいですか?」


「え? そこまで減っちゃうんですか……。うーん」


「こちらとしてもなるべくお渡しできればいいんですがねぇ、これでもかつかつですよ。とりあえずの拘束期間は次の星系へ移動するまで、ということになります。途中で降りることはもちろん出来ません。契約満了時、貴女さえよければ継続雇用を打診することになると思います」


うーん、一日200ぽっちじゃ惑星上での生活は厳しいけど、船の中ならただで生きていけるわけだし、使い道がないから貯金できるし、一ヶ月やれば一ヶ月の住み込みで6000クレジットって考えれば悪くはないか。仕事内容次第だな。


「条件は分かりました。もし契約した場合、私は何をすればよいのでしょうか?」


「はい、一日一時間ぐらい、固定席で座っていてもらう必要があります。そこで貴女の魔力を吸い出させていただきます。ですので最中と直後は多少喪失感と疲労があると思います。それ以外の時間は基本自由時間となります。狭い船内ですのでやることはあまりありませんけどね。生活に必要なものはもちろん貸し出させていただきますし、私物も検査はありますが持ち込み可能です。とりあえず30キロまでとさせてください」


まあ荷物はほとんどない。当面の着替えぐらいだし、船の中なら循環系はあると思うから一着の着替えがあれば十分かも。


「魔力を吸い出すがよく分かりませんが、分かりました。お世話にならせてください」



要するに魔晶石代わり、ということか。私は宇宙船の魔力補充のための燃料タンクってわけだ。だから出力係、なわけね。


しばらく宇宙船に乗ってみたが、まあ待遇には特に不満はない。一日一時間の魔力吸い出し時間は結構疲れるけど、それ以外の時間は本当に自由だ。狭い宇宙船だからウォーカーぐらいしか運動器具はないのに体をよく動かしておかないと惑星に戻ったときに不具合が出るとのことだったから、常に体を動かそうとするぐらいで、ご飯は高級調理魔道具が搭載されてたからおいしいし、文句はない。まあ天然物ではないんだけど、そんなもの地上にいてもめったに食べれるものじゃないしね。


乗組員は操舵手兼艦長兼シップオーナーのツキシロさんというおじさんだけだ。彼はおっさんでありまたケチでもあるがケモナーではない、とはっきりと自ら言ってくれていた。

私達パルムには悪口にもなる言葉だが今回はそれでいいと思う。他には面接時に出てきた女性型ゴーレムぐらいだ。すなわち私以外はツキシロさんしかいない。艦内でもめったに会うことはなく、顔を突き合わせないといけないのはワープ航行時のみだ。


「さて、次のワープでようやくソーラーシステムに入ることになる。着陸する予定の、第二惑星に到着するわけだが、どうだった? 動力係として宇宙での移動は? 初めてだったんだろう?」


あまり話しかけてこないし、干渉もほとんどしないツキシロさんがワープ前に話しかけてきた。


「はい、とても良いものでした」


「そりゃ良かった。こちらとしてはこのまま継続していてほしいんだが、どうかな?」


ああ、その件か。


「はい、ツキシロさんさえよければこのまま当分の間、やっかいになってもいいかな、と思ってます」


今のところ本心だ。別にやりたいこともないし、少々退屈ではあるが、ある程度次の惑星で暇つぶしを買い込めばいけるだろう。故郷ではそれすら難しくなっていたから。


「そうかい、それは助かるよ。シェザランさんさえ良ければ、しばらくここにいてほしい。ああ、それと契約を更新となるならお給料も増やせるよ。そろそろ宇宙進出税を支払い終えるから、一日300にいけると思う。詳しくはマリーンに聞いてくれ」


マリーンは主計兼魔道具担当らしい女性型ゴーレムのことだ。彼女はゴーレムらしく要件がなければ話はしないから、未だによく分かってないけど、職務とツキシロさんに忠実だということは分かった。たぶんシンギュラリティポイントを超えてるゴーレムだと思うんだけどね、ただの性格なのかもしれない。


「よし、では席についてくれ。ワープを行う」


席についた。ワープ時にも私のすることは基本ないが何かしらトラブった場合のためにいてほしいとのことだった。

これから向かう惑星は私の故郷とそれなりに似通った惑星らしいけど、どんなところだろうか? 見知らぬ土地はわくわくする。……これもパルムとしては珍しいらしい。まあ、いいか。私は私だ。

シリーズ化という機能が気になって、これの続きをシリーズを作って投稿しています。⋯⋯続きといえば続き、ですかね? 確か直接リンクを貼るのはご法度だった気がするので、申し訳ありませんが私の名前のリンクからシリーズを探して飛んでみてくれると嬉しいです。お手間で申し訳ない。機能をよく分かってないので。

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