我ながら胡散くさい
私に何者かと強い口調で尋ねてきたのはアリスの仲間のたしか、ベリンダだったな。
もう1人の聖職者っぽいのがコニーだったか?
「もう一度聞く、お前は何者だ!」
え、私そんなに不審者に見える?
40年近く日本で生きてきて一度も職務質問を受けたことが無いくらいには人畜無害だと思ってたんだが。
どうしようか悩んでいるとアリスが間に入ってくれた。
「待ってベリンダ!彼は敵じゃないの!」
「アリス!そんな不審な身なりをした人間をどうやったら敵じゃないと判断できるんだ!」
「アリス!私たちの後ろに下がって!」
はっきり不審って言われた、さすがに傷つく。
でもそんなに不審者か?
ボロい革鎧に肩から下げたボロいショルダーバッグ、腰にはナイフをしまった鞘。
服装を改めて見ても決して綺麗とは言えない。
うん、我ながら胡散くさいというか警戒心を煽る格好をしている。
こりゃあダメだ。
「彼は私と一緒にマスカレードウルフを倒してくれたの!私たちに敵意はないわ!」
でもアリスが必死に私の無実を説いてくれている。
なんていい子なんだろう。
「こんな弱そうな男がマスカレードウルフを倒した?」
「本当よ!私が1頭を倒している間に彼は4頭を倒したのよ」
「信じられるか!私たち全員でかかっても勝てるかわからないウルフの群れをを1人でだと!?」
「その証拠に彼はウルフの尻尾を4本持っているわ」
「プロト、尻尾を見せてあげて」
そう促されたのでバッグからウルフの尻尾を4本取り出して見せる。
これで何か証明になるのか?
「なんだと、本当にこの男が4頭を相手取って討伐したというのか?」
え?見せただけで信じてもらえるの?
「なぁアリス、なんで尻尾を見せただけでウルフを倒した証明になるんだ?」
「自分で倒していない魔獣の討伐証明部位を持つことは冒険者にとって恥なのよ」
「自分の実績を偽っていると宣言しているようなものだから」
「冒険者なら常識よ」
「でも持ってるだけなら誰が倒したかなんてわからなくないか?」
「そんなことも、ってあなたは常識に疎いんだったわね」
「そういえばプロトって旅人っていうけど冒険者じゃないの?ギルドカードは?」
そう言われてもカードって名前と歳が書いてあったあの金属板くらいしかないんだけどあれか?
そう思ってカバンを漁り金属板を取り出してアリスに渡す。
「そう、これよ」
「見てベリンダ、コニー」
そう言って3人で私のというかプロトのギルドカード?とやらをマジマジと見つめている。
何なのか私にも説明してほしいんだが。
「確かに、マスカレードウルフを4頭討伐したと記録が残ってますね」
とコニーは納得してくれたようだ。
「他にはカニバラスラビットとスタウトモンキー、トルーパーアントか」
ベリンダが言ったのは私が洞窟を出てやっつけてきたウサギと猿とアリか?
え?何?もしかしてそのギルドカードとやらには今までやっつけてきた魔獣が記録されるとかそういう仕組みなの?
便利ぃ。
それにしてもなんとかウルフもそうだけど魔獣の名前って英語なんだ。
偶然なのか
「どれも灰色級じゃ討伐不可能な魔獣なのに討伐されてる」
「どういうことでしょう?」
「しかも彼、マスカレードウルフ4頭を武器なしで倒したのよ」
「意味が分からん、そんなの高位の格闘系スキルを持っていないと不可能だろ」
「私でもそんなスキルは持ってないぞ」
「そうでなければ肉体強化系の魔術を使ったんですかね?」
「それにしてもなんかこう、いろいろとチグハグですね」
「おかしい点はあるが話してみて悪い人間ではなかった」
「悪意ある人間なら私は無事じゃないわ」
「それもそうだ」
そろそろ私も話し合いに混ぜて欲しんだけど。
そう思って3人を眺めていると3人がこちらを向いた。
そしてベリンダとコニーが頭を下げた。
「非礼な態度をとってすまなかった、仲間が危険に晒されていたので気が立っていた」
「申し訳ありません」
「いいさ、敵意がないことがわかってもらえれば」
私が善良な人間だと理解してもらえたようで何よりだ。
「自己紹介がまだだったな、アタシはベリンダ」
「猫の獣人で女神の祝福の格闘家だ」
「私はコニーと申します」
「女神の祝福ではヒーラーを務める教会の司祭です」
自己紹介をする2人。
もっとも4人の様子を伺ってたから名前は知っていたけど。
ベリンダは猫の獣人だったのか。
言われてみれば頭から生えてる耳が猫っぽい。
「それよりさっき君らが言っていたラビットとかモンキーとかアントってのは強い魔獣なのか?」
そう私が尋ねると訝しむ3人。
え?疑問に思ったことを素直に口にしただけなんだが?
私の疑問に呆れた顔のアリスが答えてくれた。
「カニバラスラビットもスタウトモンキーもトルーパーアントもプロトの級じゃまず討伐はできないわ」
「どれも個人だったら最低でも|白銀級《シルバーランクはないと相手取るのは厳しい魔獣よ」
このプロト・アポストルは冒険者らしいんだが、冒険者としての級は下から2番目。
どうやってもウサギや猿やアリを倒せる実力じゃないらしい。
そんなに大変な相手じゃなかったけどな。
「ましてマスカレードウルフ4頭なんて白銀級でもパーティを組まないと厳しい」
「そうですね、単独で相手をできるなんて黄金級か…」
そう言ってベリンダとコニーがまた考え込んでしまう。
なんか気軽にやっつけてきた魔獣がそこそこの強さらしくてそれが話をややこしくしてる。
この辺りは後でマツダに文句を言っておこう。
そりゃあボロボロの身なりをしてたら誰でも警戒するものです。
せっかくの出会いも台無しになるのがモブ。




