嫌でも関わってもらうわ!
でもそれは間違いだった。
以前に入った時と今とでは比べ物にならないくらい強力な魔獣が増えていたの。
いつもと様子が違う森の中を私たちは警戒しながら進んだわ。
私を先頭に2番目に魔術師のダリア3番目に司祭で回復役のコニーそして最後尾にベリンダ。
警戒が必要な時はいつもこの順番。
そして半日ほど歩いて森の中頃に差し掛かったら、私たちは休憩を取ることにした。
街で買ってきたパンと飲み物を口にしながら今回の依頼の件について話していると森の一ヶ所からガサガサと物音が聞こえたわ。
すぐに物音のする方を警戒しているとそこから現れたのはトルーパーアントの群れだった。
通常のトルーパーアントは数は多いけどそこまで凶暴ではないし、数が増えて駆除を依頼されても特に手こずるような相手じゃない。
でも今回遭遇したトルーパーアントは普通のアントより凶暴性が増していたわ。
しかも普通のトルーパーアントは集団で突撃してくるだけなのに私たちを包囲して威圧しながら距離を詰めてきたわ。
おかしいと思いながら警戒をして緊張がピークになったところを見計らったかのようにアントの群れが襲い掛かってきた。
それを私とベリンダを中心に倒していったわ。
コニーは回復と肉体強化など私たちの補助で、ダリアは魔術でアントたちに攻撃でそれぞれ私とベリンダをカバーしてくれた。
そうやってて襲い掛かるアントを私とベリンダを中心に倒していたんだけど捌ききれなかったの。
私とベリンダの網を抜けた1匹がダリアに襲い掛かった。
詠唱中で避けきれなかったダリアは大怪我こそしなかったものの足を噛まれて怪我をした。
コニーが言うにはダリアを噛んだトルーパーアントは毒を持っていたみたい。
トルーパーアントが毒を持っているなんて聞いたことがない。
動けなくなったダリアと回復するコニーを私とベリンダで守っていたんだけど、しばらくしたら私たちの戦闘の音を聞きつけたのかマスカレードウルフが現れたわ。
それも5頭。
マスカレードウルフ5頭なんて私たち4人でも苦戦するのにそれをダリアを欠いた状態でなんとかしなければいけない。
しかも普段より凶暴なトルーパーアントもいる。
状況は最悪だった。
そんな時、ふと私たちを観察する気配を感じたの。
私たちが見える範囲のどこかの茂みに潜んで、私たちの様子を伺ってるそんな気配。
その気配に気づいているのは私だけみたいで、他のみんなもトルーパーアントもマスカレードウルフも気づいている様子はなかったわ。
襲ってくる感じはなかったから放っておこうと思ったらウルフたちがダリアとコニーに近付こうとしてきたから私は剣と魔術でけん制した。
それで私がマスカレードウルフを相手にして、ベリンダがダリアとコニーを守るって言う構図になってしまったの。
この状況で1つだけ幸いだったのはトルーパーアントの足が遅いこと。
ベリンダとコニーが全力で走れば恐らくアントからは逃げ切れる。
例えダリアを支えながらでも全力で走ればなんとかアントから逃げ切れるはず。
だから私は3人を逃がすことにした。
3人とアントを気にしなければ目の前のマスカレードウルフに集中できるから。
そして私はベリンダを促して3人で撤退してもらった。
ベリンダとコニーは悔しそうな顔をしていたけど私は大丈夫と虚勢を張った。
だってそうしないといつまでも残りそうだったんだもん。
そうやって3人が撤退したのを見届けたところで私は死を覚悟した。
必ず戻るって言ってくれたけどその頃には私はダメだろうなぁ。
だってマスカレードウルフ5頭なんて私1人じゃ到底相手をしきれない。
多分、そう遠くないうちにあいつらのお腹の中に収まっちゃう。
そんな風に考えつつ、でもなんとか生き延びる方法を模索しているとあることを思い出した。
あれ?そういえば私たちの様子を伺ってた気配はどこに行った?
そう、さっき私たちの様子を伺ってた奴は?
あ、まだいる。
あの辺の茂みの中だ。
敵か味方かもわからないけどどうせ碌なことにならないなら一か八か巻き込んでみよう。
「ねぇ、さっきからそこに隠れてるの!出てきなさいよ!」
「さっきから私たちを覗き見してたのはわかってんのよ!覗き魔!」
それでも動かない。
関わる気がないってことかしら?
でも悪いけど私が生き延びるだめに嫌でも関わってもらうわ!
そう考えて私は気配のする方へ突っ込んだ。
当然マスカレードウルフ達も私を追いかけてくる。
これには流石に気配の主も焦ったのか茂みから飛び出してきた。
「待て待て待て!私を巻き込むな!」
飛び出してきたのは旅人を自称する弱そうな男。
男が飛び出してくると5頭いたマスカレードウルフのうち4頭が男の方へ行った。
助かった、1対1ならなんとかなる。
男はなんか言ってたけど最終的には巻き込まれてやるだって。
意味が分からないわ。
でもまあいいわ、これで私が生き残れる確率が上がったもの。
あいつには悪いけどまずは1頭を倒させてもらうわ。
マスカレードウルフは動きは俊敏だし、気配を消して周囲の景色に同化するから厄介な魔獣。
でも攻撃の瞬間には気配を出さずにはいられないから、カウンターを狙って慎重に構えていれば倒せる相手。
案の定、目の前の1頭も姿を消して私の隙を伺ってたけど、なかなか隙を見せない私にしびれを切らして襲い掛かってきた。
待ちに待った瞬間、私は狙いを外さなかった。
大口を開けて襲い掛かってくるマスカレードウルフの口に愛剣を突き立てた。
なんとか1頭を仕留めたけど仕留めるまでに残りの4頭に襲われることはなかった。
あの男が上手いこと囮になってくれたのかしら?
そう思ってあの男の方を向くと、そこには倒れる4頭のマスカレードウルフと特に怪我をした様子もないあの男が立っていた。
モブらしく主人公が出てこない話にしてみました。




