24
ラティシアのベルゲスト城が攻められている噂を耳にしたカズヤ一行は早急に城へ向かった。
戦場に到着すると、そこには幻獣同士が戦っている光景が繰り広げられていたのだった。
カズヤ達転送者が召喚する幻獣は全て美少女である。
しかし、この世界の召喚術者が召喚する幻獣は、そこそこ化け物じみた姿をしている。
幻獣の姿はともかく、この世界の召喚術者同士が似たような幻獣を召喚しているので敵味方の区別がつかないのは当然だった。
カズヤは城の術者が召喚している幻獣を戻してもらう為、城へ向かう事にした。
マミには味方の幻獣がいなくなったら即座に敵幻獣の討伐をするように指示。
「よし、ラミエルは俺をギュっと優しく抱きかかえて城のあそこまで飛んで行ってくれ」
「なにも抱き着かなくともSSR幻獣ならば対象を浮遊させる事くらい訳ないじゃろ」
「馬鹿野郎っ! それじゃラミエルを堪能できんだろがっ!」
「馬鹿は貴様じゃっ! アホかっ!」
メルがあまりにも五月蠅く言うのでカズヤは仕方なく抱き着くのを諦めたのだった。
そして、ラミエル、護衛のアポロンと共に空を飛んで城へ向かった。
城近辺まで来ると、門の上に多数居る召喚術者の中に指揮をとっているラティシアの兄を発見。
カズヤはラミエルに指示し兄の元へ降り立った。
兄は空中から突然現れたカズヤに相当驚いている。
「あ、兄上…ですよね?」
ラティシア兄はカズヤの事を兄と呼ぶ。それはカズヤの方が年上と言う理由。
以前、初めて会った時はラティシアの結婚相手と紹介され、兄は結婚を認めてはいなかった。
しかし、カズヤと一騎打ちをしてボロ負けして以来、カズヤを兄と呼んで慕うようになった。
「いやいや、兄はあなたですから! 頼みますから俺の事は名前で呼んで下さいっ!」
カズヤは王族には全く興味は無い。
それ処かラティシアと結婚後は城から離れた場所でひっそりと暮らす事を考えていた。
王位継承権一位のラティシア兄に兄と呼ばれると、王族の問題に巻き込まれる事を懸念していた。
ラティシア兄は納得していない様子だったが、この場はカズヤの言を受け入れる事にした。
「さて、兄上。敵幻獣を一掃するので味方の幻獣を速やかに戻しちゃって下さいな」
兄はカズヤの言っている意味が理解出来なかった。
敵の幻獣は百を超える。今、幻獣を戻すと一掃する前に敵幻獣が一気に押し寄せて来るからだ。
カズヤの言っている事は正気の沙汰ではないと兄が断るとカズヤは考え込んだ。
「ならばしゃーなしだな……じゃあ、敵、味方諸共、幻獣を一掃するしかないな」
兄がカズヤの言葉に驚いているのを他所に、カズヤは指示を出す為ラミエルを目に前に呼んだ。
「ラミエルよ、マミに敵味方関係なく全幻獣を即座に殲滅しろと伝えてくれ。そしてお前も空中にいる全ての幻獣を殲滅せよ!」
「かしこまりました。マスター」
ラミエルは返事をすると直様マミの元へ飛んで行った。
ラミエルはマミにカズヤからの指令を伝えると、マミは驚いて暫しの間考え込んでいた。
マミの返答を聞く前にラミエルは飛び立ち、空中にいる幻獣を片っ端から攻撃しだした。
その光景を見たマミは敵の近くまで走っていくと立ち止まってから軽く深呼吸をし、スマホで幻獣に攻撃を開始させた。
「ふむ。マミもようやく攻撃を開始したか」
マミが攻撃を開始した時には既に空中の幻獣は全て一掃されていた。
そして、一分足らずで地上の幻獣もマミの幻獣により全て一掃された。
敵味方の幻獣が一瞬にして消え去ったのを目の当たりにした兄は暫くの間、固まっていた。
「あ、兄、か、カズヤ殿…こ、これは…」
「いや、味方の幻獣戻さないって言うから一層するしかないっしょ。それにどうせ皆エナジー召喚なんだから問題ないよね!」
エナジー召喚とはこの世界では一般的な召喚方法。
魔力で幻獣の精神エナジーを抽出しそれを元に幻獣を具現化。
幻獣を戻すと精神エナジーも幻獣に戻される。
呼び出した幻獣が死亡しても、精神エナジーが消滅するだけなので幻獣界にいる本体は無事。
しかし、精神エナジーが返還されないので幻獣の精神エナジーが復活するまで召喚する事が出来ないのである。
カズヤは親指を立てて自分グッジョブアピールをしたが、兄はまだ固まっている。
「貴様は本当にアホじゃな」
「いやいや、何でだよ! どうせ奴等の幻獣なんてほっときゃ勝手に復活するんだから問題ないだろが!」
「術者を眠らせればいいだけじゃろ」
「攻撃する前に言えやっ! お前…また謀ったなっ! お前が人間には手出しするな的な事をほざいたんだろがっ!」
「そんな事言うとらん」
カズヤはまたしてもメルに、してやられたと思いながらもグッと堪えるのだった。
王の間
幻獣一掃後、ラティシア達と合流し皆で王の間に集まった。
王様には窮地を救った事で非常に感謝されたが、他の者からカズヤは白い目で見られていた。
敵処か味方の幻獣までも一網打尽にしたから当然だが一部の者からは、素早く敵を鎮圧した事に感謝もされていた。
しかし、現状は城の戦力が皆無になってしまったので、術者の幻獣が復活するまでカズヤ達は城に留まる事となった。
そして、ひと月程度の時間が経過した。
「ふぅ。やーっと解放されたーっ!」
「貴様が後先考えずに行動するからじゃろ」
「お前はその辺で蟻の生態でも観察してろっ!」
せっかく城まで来たので、マミの今後を確認する事に。
以前カズヤはマミが望むなら城専属の術者として最高の地位を与える事を約束していた。
今回の一件でマミの実力は十分証明されたので、それも容易に叶える事が可能。
しかしマミは今後もメイドとしてカズヤと共に行動する事を選んだ。
マミの真剣な表情を見てカズヤはマミにデバイスを所持させる事にしたのだった。
カズヤ達は随分と前から、この国最大の幻獣大会に参加する為、ケロムとか言う街に向かっていた。
しかし、次から次へと問題等が発生し中々ケロムに到着する事が出来なかった。
今回の一件で城まで戻って来てしまった為、更にケロムまで遠ざかってしまっていた。
このままでは一生辿り着けないと思ったカズヤは例の乗り物で移動しようとしたらメルに止められた。
理由はカズヤを転送させた者に見つかった場合、没収か最悪は命の危険がある。
アレは今回のような非常事態の時のみ使うよう言われたカズヤは珍しく素直にメルの言を受けれいた。
そして、いつも通り馬車で地道に次の街へ向かうのだった。
第一部 完




