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マミの幻獣カード回収が無事完了し宿屋の食堂で食事をしていたらラティシアのベルゲスト城が攻められている噂を耳にした。
「お父様…」
ラティシアは不安で今にも泣きだしそうな表情をしている。
カズヤは貴族的な人達に詳しい事情を聞いた。
城攻めが開始されたのは今から一週程間前。
城には優秀な召喚術者を多数抱えているので、そう簡単には落ちないとラティシアは言うが篭城戦ともなると食料問題が発生する。
食料の貯蔵量はラティシアには分からないので一刻も早くベルゲスト城に向かう事にした。
しかし、ここから城までは相当な距離がある事をラティシアは気にしている。
「これは非常事態だ。安心しろラティシア、あの乗り物を使えば一瞬だっ!」
カズヤは早速例の乗り物を出そうとしたが、出し入れをするワードを忘れてしまった。
メルに確認するも自分が悪いと言われ口論するが埒が明かず結局自分で考える事となった。
「これ乗り物だよなあ、タイヤ付いてないけど車的な乗り物なら…車庫…とか…あっ、何か出た」
車庫と言うワードに反応しカズヤの目の前にスクリーンが現れ、例の乗り物が表示されている。
言葉が違っても発言した本人が同じ意味と思っているなら同一のワードに変換されるのである。
カズヤは乗り物を出現させ、皆で乗り込んだのだった。
「おい、何とか城って何処よ?」
「ベルゲスト城じゃっ! その辺にあるじゃろ」
メルはマップ上の城があるであろう付近を適当に指した。
「お前アシスタントだろがっ! ちゃんとアシストせんとリストラすんぞっ!」
「ワシはデバイスアシスタントじゃっ! アホかっ!」
カズヤは仕方なく指された近辺を拡大すると、すぐに城の名前が表示された。
城から少し離れた場所に目的地をセットし移動開始。
相変わらず動いた感がないので不安になりつつも乗り物から降りると前方に城見えた。
カズヤは改めてこの乗り物の凄さを実感した。
皆も乗り物から降りて城を目指す事に。
城の正面は召喚術者と幻獣で溢れ、遠目でもその光景はハッキリと分かる。
カズヤはマミにSR幻獣4体を召喚させ、護衛用に一人に一体付ける事を指示した。
マミがスマホを操作しているその両脇でラティシアとレイラは興味津々に、じっとスマホの画面を見つめていた。
「旦那様の世界ではこの様にして幻獣を召喚なさるのですね」
ラティシアは嬉しそうに言ったが、カズヤは返答に困り曖昧な返事をした。
そう、これはただのゲーム画面。
この世界では幻獣を具現化できるが、カズヤが居た世界には当然幻獣など存在しなかったからだ。
マミはデッキ設定を終え、幻獣に命令しようとしたのだが…
スマホで出来る事はデッキ単位で召喚と戻す事。
戦闘は基本オートではあるが、使用者が敵と認識した相手にのみ攻撃を行う。
そして戦闘時には各幻獣に使用するスキルを指定する事は出来るものの、特定した人物に対して幻獣を護衛をさせると言う命令は出来ないのである。
「あ、あの…そ、そういう命令は…で、出来ないみたい…です…」
マミは申し訳なさそうに言った。
「スマホでは単純な命令しかできんと以前言ったじゃろ」
「なにいいいいいいいいっ!!」
この大事な局面でカズヤが考えていたマミの幻獣に守らせる布陣は見事に覆ったのだった。
「ぐぬぬ…やはりマミにデバイスを所持させる必要があるって事か…しかし…」
カズヤが一人でブツブツとつぶやいているとラティシアが心配そうに声をかけてきた。
その声でカズヤは我に返りラティシアの手を握り大丈夫と返事をした。
カズヤはSR幻獣のラマシュトゥ、リュウメ、ティアマト、アポロン、マルスの5体を召喚。
目の前に現れた5体の可愛さに思わず抱き着きたくなる衝動を抑え、4体にカズヤを含む4人の死守を命令。
更にマルスには4人を覆うバリアを展開させた。
そしてマミにはSR幻獣5体で攻撃に専念させる事にした。
マミは言われるがままにSR幻獣のオグン、クリシュナ、ヘーラー、ディアボロス、オシリスの5体をデッキにセットし召喚を行った。
「1人に1体SR幻獣を付けるだけでも大袈裟じゃろうに、更に全体にバリアまで張らせるとは、貴様どんだけ臆病なんじゃ」
「お前は黙って原稿用紙100枚分の反省文でも書いてろっ!」
「何の反省文じゃっ!」
カズヤはそのまま城正面に進軍を開始しようとしたらラティシアは驚いた。
「だ、旦那様。少なくとも相手の幻獣は100体以上いるように見えますが…」
カズヤはマミの幻獣に守らせる布陣が出来ない事で多少の焦りを感じていた。
一刻も早くこの状況を打破すべく最も効率が良いと思われる方法を選択。
術者をこの場で全員処刑するから大丈夫だとカズヤが言い放つと、ラティシア、レイラ、マミの三人は更に驚いた。
「えっ!? いや、ほら、あいつら反逆罪でどの道全員処刑されるだろ? だったら幻獣無視して術者をヤった方が効率いいし…」
三人が驚いた事でカズヤもまたその反応に驚いてメルに確認を行った。
「効率以前に貴様、マミにも人間を処刑させるつもりか? 強力な幻獣を得て支配者にでもなったつもりか。この戯けが」
カズヤはメルの言葉に対し、何も言い返す事は出来なかった。
しばしの沈黙後カズヤは口を開いた。
「よし。お前の反省文、原稿用紙10枚に減らしてやる」
カズヤは不安そうにしている三人を見つめると、バリアを張っていたマルスを戻しSSR幻獣のラミエルを召喚した。
例によってラミエルに抱き着きたい衝動を抑え、倒すのは幻獣のみにすると言うと三人はホッとした表情になった。
マミには地上の幻獣を任せ、カズヤは空中を担当し、改めて進軍を開始した。
この世界の召喚術者が召喚出来る幻獣のレアリティはRが限界な上、幻獣のレベルも1や2が殆ど。
稀にラティシアの様にSRも召喚出来る者も存在するがごく僅か。
それに比べて転送者の幻獣はレベルが最高値に達している。
敵の数が多いので倒すのに時間が掛かるだけで戦力差は歴然である。
そして、戦場に到着したのだが…
余裕をぶっこいてるカズヤが目にした光景は幻獣同士が戦っている姿。
城にも召喚術者が多数存在するので応戦するのは当然だった。
「うおーい!! これじゃ敵味方の区別がつかんっ!!」




