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カズヤは謎の声に、十人程度が乗れる乗り物を要求すると目の前に小型の乗り物らしき物体が転送されてきた。

しかしそれは、大人一人が入れるかどうかのサイズだった。


「いやいや何だよこれっ! 糞小さい上にタイヤとか付いて無いし移動手段としての乗り物じゃねーだろ! アホかっ!」


「貴様の文明レベルの低さを(なげ)く前に入ってみれば良いじゃろ」


「文明レベルの話なんて1ミリもしてねーわっ!!」


カズヤは仕方なくメルの言うがまま、まずは一人で謎の物体の中に入ってみた。


「えっ!!! 何これ? 広っ!」


謎の物体の中は畳換算で約20畳程度の快適空間が広がっていた。

その空間には特に椅子等は無く、先頭らしき場所には外の風景が見え、この物体を操作するらしき装置があった。

カズヤは驚きながらもメルにあれこれと質問すると、やはりこれは乗り物と言う事だった。


「これで満足したようだな。もうお前と関わる事は無いだろう。では…」


「ちょっと待てっ!」


「いい加減にしろっ!」


謎の声は再び通話を切ろうとした瞬間、またもやカズヤに呼び止められ怒りを(あらわ)にしている。


「いや、流石にこの見た目じゃこの世界では目立ちすぎる! この世界に合った見た目にしてくれ!」


小型とは言え、この世界には相応しくない外観にカズヤは抵抗を感じている。


「外装くらい自分で設定しろっ! もう話しかけるなよっ!!」


謎の声はこれ以上関わりたくないので強制的に通話を切断した。


「あっ! おーい! 設定ってどーやんだよー…くそっ、逃げられたか…」


カズヤが装置を見て悩んでいると、その前にまず所有者登録を行えとメルが言うので言われるまま登録を行った。

そしてメルの言うがままカズヤは辿々(たどたど)しい手つきで何とか外装設定をする事ができたのだった。


「よし。これで馬車っぽい外装になったのかな? 取り合えず皆を呼ぶとするか」


カズヤは一旦外に出て皆を呼び、再び乗り物に乗り込んだ。

当然の様にラティシアとレイラとマミの三人は中の広さに驚いている。

これはマイルームと同様に科学の力とカズヤが説明すると、三人は一応ではあるが納得をしていた。


皆は忘れているかもしれないが、今の旅の目的はこの国で最大の幻獣大会を開催しているケロムとか言う街に向かう事。

その道中に転送者であるマミが仲間に加わるも、マミは卑劣な手段によって幻獣カードを奪われていた。

カズヤを含む転送者は同時に五体までしか幻獣を召喚する事が出来ない。

マミが加わり四人になった今では、不測の事態に陥った場合、四体を護衛に当てると攻撃に回せるのは残りの一体だけになってしまう。

マミは転送者。マミの強力な幻獣を取り戻す事が出来れば、その幻獣を護衛に回すとカズヤの幻獣は全て攻撃に当てる事が出来る。

そんな訳でマミの幻獣奪還を最優先事項にする旨を皆に伝えた。


「おい」


「なんじゃ」


この乗り物にはハンドルやアクセルペダル等の乗り物を操縦する装置が存在しない。

その辺りの事をメルに尋ねると、そんな物は存在しないと言う。

メルに言われるがまま操作をすると、目の前にスクリーンが現れマップが表示された。


「あれ? この地図ってこの世界の地図だよな? 街の名前も書いてるし…え? 何で地図あんの?」


スクリーンに映し出されたのはこの世界のマップ。

謎の声が骨董品と言っていたこの乗り物は文明レベルCの技術で作られた物なので、その位は当然とメルは言う。


「えっ? お前ってレベルAのくせにこの世界の地図持ってなかったよな? なにお前、レベルCに負けてんの? 糞雑魚なの?」


「アホかっ!!! 用途が全然違うじゃろがっ! これは乗り物だからマップがあるのは当然じゃろっ! ワシはデバイスアシスタントじゃっ! アホかっ!!」


カズヤに馬鹿にされた事に対し、メルも珍しくムキになって言い返した。


多少話が脱線したものの、改めてメルに操縦法を聞くとマップの行きたい場所を触れればいいだけと言う。

最初に貰った装置でマミのカードを奪った犯人が居る場所は特定できているが、ここからその場所までは馬車で十日程の距離との事。

カズヤは早速、犯人が居るであろう場所のマップを指先でタッチしてみた。


「おい」


「なんじゃ」


「1ミリも動いてねーぞ。マジでお前シバくよ?」


「安心するが良い。貴様の文明レベルの低さは想定内じゃ。既に目的地に到着しておる」


メルは必要な情報を言わない事はあっても嘘はつかない。

その事を知っているカズヤでもメルの言う事が信じられなかった。

何故なら何一つ揺れる事も動作音も無く乗り物自体に動作した形跡が無かったからである。

カズヤは乗り物から降りて自分の目で確かめてみると、目の前に知らない街があった。


「マジかよ…すげーなこれ…レベルCでこれかよ…着くの早すぎんだろ、何これ、ワープ的な移動したんだよな?」


文明レベルCの技術はカズヤの常識を遥かに超えている。


「障害物を無視して一直線に進んだだけじゃ」


「えっ!? 進んだの? 瞬間移動とかじゃなくて? 全く動いた気配すら無かったんだけど」


「貴様如きの知能が低い文明レベルでは理解出来んじゃろ」


「いちいち俺の文明レベルをディスるのやめてくんない?」


カズヤは皆を呼び乗り物から降ろした。

乗り物を格納する為カズヤはストレージを取り出そうとしたら、メルがそんなものは必要ないと言う。

この乗り物には格納機能が付いていて『ガレージ』と言えば出し入れ可能との事。

登録者の言語が適用されるので、マップに表示される文字もカズヤが理解出来る文字だった。


既に昼時になっていたので犯人探しをする前に昼食を取るため食堂的な店を探す事にした。


「ぐぎゃあああああっ!」


「やかましいわっ! 何事じゃっ!」


例によってカズヤが発作的に叫ぶとメルは突っ込みを欠かさない。

そしてラティシアとレイラはいつものように心配してくれるがマミは戸惑っている。


「護衛を出すのを忘れてた…危なかったぜ…」


「そんな事でいちいち騒ぐなっ! アホかっ!」


メルの突っ込みをスルーしつつカズヤは護衛幻獣を召喚し食堂的な店に向かったのだった。


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