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迷宮から魔獣があふれ出るのを阻止する為、迷宮内の魔獣発生装置を破壊した次の日。
馬車で移動中、カズヤが突然歩いて行こうと言い出し、歩き出して直ぐに謎の迷宮が突然現れた。
カズヤは迷宮を無視するも、突然聞こえて来た謎の声に迷宮に入るか、この場で死ぬかの選択に迫られたのだった。
「お前は一体何者だ! 何処から来た! だからあの迷宮のキューブを持ち出す事が出来たのか!」
謎の声はカズヤが異世界人と知り、明らかに動揺している。
「まあまあ、おっさん落ち着けって。ちゃんと答えてやるから一つずつ質問してくれ」
カズヤは内心ドキドキしている。それは返答次第で殺されてしまうからだ。しかしそれを悟られない為に余裕がある態度を見せている。
謎の声は次々と質問を始めた。それに対しカズヤは正直に答えていた。
「地球…文明レベルが高い惑星では聞いた事が無いが…」
謎の声には聞き覚えが無い惑星名だったのでサーチを行った。
「ここ数百年で文明レベルDになった惑星じゃないかっ! 原始人並みの文明レベルで、何故お前はここに居る!」
「そう…確かに地球は文明レベルDの惑星だが、ならば何故俺がここに居るのか、文明レベルCのおっさんなら分かるよな?」
カズヤはあたかも文明レベルと言う言葉を知っている体で話をしているのでメルに突っ込まれていた。
「文明レベルBだっ!」
(Bか…ならまだ、やりようはあるか…)
カズヤは何気に謎の声の文明レベルを聞き出していた。
謎の声は文明レベルに拘っている。
メルに確認した所、カズヤをこの世界に転送させた者の文明レベルはAと聞き、カズヤは勝利を確信した。
「地球の科学力でここに来るのは不可能だ。しかし! 文明レベルAの実験体として、転送されたとしたらどうよ?」
「文明レベルAだと? そんな馬鹿な事が…現状レベルAはあの惑星だけ…」
「俺が嘘を言ってるかどうか、レベルBなら見抜くことは容易いだろ」
カズヤは嘘を言ってない。
ただ、実験体と言うよりは暇つぶしの観察対象だったが…
現在、カズヤを転送させた者は別の事に夢中になっており、カズヤの事はすっかり忘れているのだった。
そして、謎の声はカズヤが嘘を言ってるかチェックを行った。
(くっ、こいつの言ってる事は本当か…ならばこれ以上こいつと関わるのは危険だ)
謎の声は文明レベルAの実験体にちょっかいを出してしまったと思い接触を避ける為、通話を切ろうとした。
「つーか、もうAさんにメール送っちゃった」
カズヤは恰もレベルAと繋がりがあるよかの様な言動で話を長引かせようとしていた。
それは、既に殺される事がなくなったと確信したので、あわよくば有意義な情報を得られればと思っていたからだ。
「馬鹿な! 俺はまだお前に何もしてないだろ! 分かった、その世界の金をやろう。文明レベルが低いお前なら願ってもない事だろう」
謎の声はカズヤに変な報告をさせない様、お金で誤魔化そうとしている。
(何だこいつ…メルみたいな奴だな。文明レベルが高い奴って人を見下すのが好きなのか)
「いや、金は不要だ。それよりも俺をこの世界最強の人間にしてくれっ! Bなら容易にできるだろ?」
カズヤはまたとんでもない事を言い出した。
「それは出来るが無理だ。お前が他の者の実験体である以上、勝手にお前を強化する事は出来ない」
レベルAが何の目的でカズヤを実験体としてるか分からない。
カズヤを強くする事でレベルAの実験に影響が出ると考える謎の声が言う事はもっともだ。
「ならば、マミのカードを…」
「それだっ!」
メルが言い終わる前にカズヤは割り込んできた。
「じゃあ、そこにいるマミのカードを奪った奴の居場所を教えてくれ!」
「何だ、そんな事か。ほらよ」
謎の声が言い終わるとカズヤの目の前に突然何かが現れた。
「何だこれ?」
カズヤは目の前に現れた物体を手に取り不思議そうにしている。
「それは貴様が居た世界で言う所のレーダーみたいな物じゃ。それが示す所にターゲットがおる」
メルは不思議な物体の説明をしてくれた。
「すっげーっ!!」
(何でさっきの言葉だけで犯人の居場所を特定出来るんだよ…レベルBマジすげーな…)
「くれぐれも余計な報告はするなよ! では…」
「ちょっと待てっ!」
謎の声が通話を切ろうとした瞬間、カズヤが呼び止めた。
「まだ何か用があるのか!」
(確かにあの訳の分からん物体は凄いが普通だったアピールをして、もっと奴から便利アイテムをゲットせねば…)
「いやいや、さっきの道具って全然普通だし? それだけじゃ足らんな。こっちもリスク追うわけだし?」
「お前がそれを要求した上に凄いって言っていただろ…」
(うぐっ…痛い所を突いてきたな…流石レベルB…ならば…)
「そういや、数か月前にAさんが『ちょっと生意気な惑星シメてくるわ』つって惑星消してたなー、Bさんは大丈夫かな~」
「貴様、よくそれだけ、でたらめを言えるのぅ…」
メルはカズヤの言動に呆れていた。
「なにっ! 3か月前の惑星消滅は奴等の仕業だと言うのか!」
(ほんとに消滅してたよ!)
「普通そんな事しないだろ? でも、俺担当のAさんってキレたら無茶苦茶する変わり者なんだよ」
謎の声は仕方なく要件を尋ねたら、カズヤは10人程度が乗れる乗り物を要求。
しかし、文明レベルがBにもなると乗り物に頼ることが無いので、そんな物は無いと言われた。
カズヤは馬車での移動に嫌気が差していたので、このチャンスを逃さないよう必死に食い下がった。
カズヤが元居た世界の文明レベルD程度の乗り物を要求するも、古すぎて探すのが大変な上、仮にあったとしてもこの世界に燃料が無いと言われたのだった。
「ちきしょーっ!! Bさんに婦女暴行されたって、Aさんに言いつけてやるっ!」
カズヤはチャンスを生かす事が出来ず、本気で悔しがって訳の分からない事を叫んだ。
「貴様…男じゃろ…」
「五月蠅い奴だ。仕方ない…この骨董品の玩具で我慢しろ」
謎の声はカズヤの目の前に小型の乗り物らしき物体を転送した。
それは、どう考えても大人一人が入れるかどうかの大きさだった。
「玩具かっ!!」




