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カズヤ一行は迷宮から出現する魔獣の発生を止める為、迷宮内の何処かにある魔獣発生装置を探す事となった。
「1人に1体も幻獣を付ける必要は無いじゃろ」
「何だ、お前いたのか」
「ずっとおるじゃろがっ!」
「お前には入口で一生土下座待機を命令しただろっ!!」
迷宮にはどんな魔獣が現れるか分からないのでカマエルに先行させている。
カマエルは道が分かれている所まで行くとカズヤが来るまで待っている。
カズヤが到着すると次に進むべき方向をメルに聞きそちらへ向かって進む。
メルはマッピングをしているので無駄無くフロアの隅々まで周る事が可能なのである。
数時間後。
「完了じゃ」
メルはフロアのマッピングが完了した事を告げた。
「結構かかったな、2時間位は歩き回ったか…疲れたし休憩するか」
カズヤ自身も疲れてはいるが、それよりもラティシアとレイラを気にかけてカズヤは休憩を取っている。
カズヤ達はルームに入り数時間休憩をした後メルの案内の元、下層へ続く階段へ向かった。
「貴様、こんなペースで進んでいたら何日かかるか分からんぞ」
メルはカズヤの進むペースが遅い事を懸念している。
「お前は浮いてるだけだから疲れんだろうが、こっちは歩き回ってっから疲れんだよっ! アホかっ!」
地下1階へ到着すると例によってカマエルに先行させカズヤ達は後から進む。
カマエルは見つけた魔獣を尽く倒しているので迷宮に入ってからというもの、カズヤ達は一度も魔獣の姿を見てはいない。
迷宮内の魔獣は倒すと消滅するので死体が残らないのである。
地下1階で移動を開始してから約1時間程度が経過した時の事だった。
行き止まりの所に何か装置的な物を発見した。
「おっ、何か訳の分からん物があるぞ」
「魔獣発生装置じゃな」
「えっ? もう発見したのか? 普通これ系って、もっと深い階層にあると思ってたわ」
カズヤの疑問は当然だった。
「ふむ……この迷宮はこの階までじゃな」
メルは1秒程の沈黙後、結論に至った。
カズヤは装置破壊の可否をメルに確認後、カマエルに装置を破壊させた。
「さて、せっかくだし、この階全部周ってみるか。宝箱あるかもだし…って地下1階しかないなら、とっくに取られてるか」
カズヤは気づいてはいないが、魔獣発生装置がある階は魔獣が相当強く、この世界のSR幻獣では太刀打ちできないレベル。
その為、この迷宮の地下1階は全く荒らされていない状態。更に装置の手前には、それを守護する強力な魔獣も存在する。
しかし、それら全てをカマエルが掃討していたのでカズヤが気づかないのは当然だった。
「おい、結構歩いたけど、そろそろマッピング終わるよな?」
「まだ2/3じゃ」
「まだ1/3もあるのか…地下1階しか無い分、無駄に広いな…」
更に暫く歩いていると、行き止まりの場所に宝箱を発見した。
カズヤは仕掛けを恐れカマエルに宝箱を開けさせた。
「何故貴様が開けんのじゃ」
「馬鹿野郎! 人食い宝箱だったらどーすんだ! アホかっ!」
「アホは貴様じゃ! そんな物ある訳無いじゃろがっ!」
カズヤは宝箱の中身を手に取った。
それはサイコロ程度の大きさの立方体。
メルが調べた所、この世界には存在しない材質で出来ている上に用途は不明と言う。
「この世界ではオーパーツじゃな」
「まあ、こんな化学って言葉も無い世界じゃ場違いな人工物だわな」
「貴様の元居た世界でも、これはオーパーツじゃ」
「いちいちいらん事言うなっ!」
その後、地下1階を全て周ったが何も発見する事は無かった。
迷宮を出ると外は既に暗くなっていたのでルームで休む事にした。
次の日。
馬車で次の街へ向かっている最中、カズヤが突然馬車を止め歩いて行こうと言い出した。
皆は不思議に思いながらも馬車から降り歩き出した。
しかし、メルはカズヤの行動に違和感を感じていた。
「歩くのを嫌がる貴様がなぜ急に歩くと言い出したんじゃ」
「えっ? うーむ……何でだろ…何となく?」
歩き出して直の事だった。道路横の草原に突然、迷宮らしき入り口が出現した。
「迷宮の入り口じゃな」
「その様だな」
カズヤは足を止める事も無く入り口を無視して先へ進むと、突然何処からか声が聞こえてきた。
「うおーいっ! 無視するなーっ!!」
謎の声はカズヤが迷宮を無視した事に怒っている。
「貴様が突然歩くと言い出したのはこれが原因じゃな」
「ん? こいつ俺に何かしたのか?」
「貴様を迷宮に誘導する為に歩かせるよう仕向けたのじゃろ。言うまでも無く奴は別世界の者じゃ」
女性陣は3人共、謎の声に驚いている。
「普通突然出現した入り口があったら入るだろっ!」
謎の声はカズヤ達を迷宮へ入らせようとしている。
「いやいや、普通は突然出現した入り口になんて絶対に入らんだろっ!!」
カズヤは冷静に返した。
カズヤと謎の声は暫く問答をしていると、謎の声の目的が見えてきた。
先日の迷宮内に、あるはずのキューブが移動しているので、謎の声は持ち主を特定。
キューブは発信機のような役割をしている。
あの迷宮の地下1階に出現する魔獣は、この世界の住人では絶対に勝てない強さに設定されていた。
しかし、キューブに辿り着けるほどの強い人物が、この世界に居た事に驚き興味を持った。
そして、その人物の強さを計測する為、それ用の迷宮を用意したのだった。
「そう言う事か…所で、おっさんの名前は?俺はカズヤ」
「お前達実験体に名乗る必要は無い」
「達実験体と来たか…」
「早く迷宮に入ってお前がどの階層で死ぬのか私に見せろ! 断ればこの場で殺す!」
「どっちみち死ぬのかよ!」
ラティシアが今にも泣き出しそうな表情でカズヤを見つめている。
「ごめんな…異世界人のおっさんが訳の分からん事を言って」
カズヤはラティシアに謝りながら軽く抱きしめた。
「異世界だと!? お前…何故それを…お前、まさか…」
謎の声はカズヤが言った異世界と言う言葉を聞き、カズヤもまた異世界人だと知った。
「そうだけど? それが何か?」
カズヤは謎の声の反応にピンと来た。
上手く行けばこの状況を打破出来るのではと考えた。




