15
「おい」
「なんじゃ」
「焼きそばパン買ってこいっ!」
「そんなもんこの世界にある訳無いじゃろっ!」
「じゃあ日本に買いに行ってこいっ!!」
「出来るかっ!!」
我々はこの国で最大の幻獣大会を開催しているケロムとか言う街に向かっている。
現在はミリブデンとか言う街に滞在している。
この街は只の通過点に過ぎないが特に急ぐ旅でもないので数日観光したら出発する予定だった。
しかし、成り行きでギルドの依頼で変な迷宮に行ったり、依頼者の家に行ったりで観光とかが出来ていない状態だ。
依頼者の所で昼食を御馳走になったので夜まで街を練り歩く事にした。
街に居るからと言って俺は決して油断はしない。
俺とラティシアとレイラには常にそれぞれR幻獣で護衛をさせている。
俺(転送者)が召喚する幻獣は全て美少女なので召喚術者以外の人には男1人と美少女5人のグループに見えている事だろう…
一方その頃、カズヤ達一行は盗賊達に目を付けられていた。
傍から見たら護衛らしき男が1人と美少女が5人。
人身売買を行う盗賊から見たら絶好のカモなのだろう。
「兄貴、あいつらですぜ」
「ほぅ、女5人か。なるほど、確かにかなりの上玉だな。よし、例の場所に誘い込め」
「了解しやしたー」
盗賊の弟分がカズヤ達の前に現れた。
「ちょっと、そこのおねえ…ごぶはっ」
盗賊が何か言いかけた瞬間にカズヤを護衛している幻獣が盗賊をぶっ飛ばし盗賊は何処かにふっ飛んで行った。
カズヤ達一行はそんな事に気づかず街を練り歩いている。
「お、弟よーっ!」
盗賊兄は弟分の元へ駆け寄った。
盗賊兄弟は何が起こったのか理解できてない状態だ。
彼らは召喚術者では無いので幻獣にやられた等と夢にも思ってはいない。
「よし。今度は俺がやる」
今度は盗賊兄が例の場所に誘うべくカズヤ達の前に現れた。
「ちょっと、そこのお嬢さ…ごぶはっ」
盗賊兄が何か言いかけた瞬間にカズヤを護衛している幻獣が例によって盗賊兄をぶっ飛ばし盗賊兄は何処かにふっ飛んで行った。
「あ、兄きーっ!」
今度は盗賊の弟分が兄元へ駆け寄った。
やはり盗賊達は何故吹っ飛ばされたのか分からない様子。
「あ、兄貴、あの護衛の男、相当強いんじゃ…?」
盗賊の儀兄弟は目にも止まらぬ速さで男にやられたと思っている。
「だ、だが、所詮は人間よ。幻獣にあの男を始末させるか…よし、術者を呼んで来い」
盗賊の弟分は仲間の召喚術者を呼びに行った。
約1時間後、弟分は召喚術者を連れて戻って来た。
「俺の幻獣の手助けが必要とは相当強い奴なんだな。で、どいつだ?」
「あの男だっ!」
盗賊兄はカズヤを指さした。
「あいつか…って、おいっ! 幻獣が3体もいるじゃないかっ!」
召喚術者は見ただけで幻獣かどうかの判断が出来る。
たとえそれが人型だったとしても幻獣だと分かるのだ。
「幻獣だと?何処にいると言うのだ?」
盗賊兄は召喚術者ではないので人型の幻獣は、見たまんま人間だと思ってしまう。
「あの3体が幻獣だ…って、おいっ! 他の女2人は召喚術者じゃないかっ! しかも、Aランクと、え…Sランク!?
Sランク術者って存在したのか…しかも、ボスと同じ人型の幻獣…」
盗賊の術者は相当驚いている。
「あ、あいつらは止めておけ。相手が悪すぎる」
この盗賊の術者はCランク。レアN幻獣しか召喚出来ない。
相手(カズヤ達)はレアR幻獣が3体。どう考えても絶対に勝てない。
「そ、それはダメだ。もうボスには、かなりの上玉を連れてくるって言ってるのだっ!
これで連れてこなかったら俺達が酷い目にあってしまう…」
盗賊兄はボスを相当恐れている。
盗賊3人での協議の結果、3人と幻獣で一斉に襲い掛かって誰かが女一人をさらう計画になった。
盗賊達はカズヤ一行が人気の少なくなる所に行くまで、ずっと尾行を行っていた、
夜になって人気が無い所に行ったのを見計らって3人と幻獣1体で一斉に襲い掛かった。
結果は…例によって3人はぶっ飛ばされて幻獣は消滅した。
暫くして3人は目覚めて再び協議を行った結果、ボスに報告する事にしてアジトに向かった。
アジトに到着しボスに恐る恐る報告した。
「なるほどな、人型のR幻獣3体か…お前等、そいつらには二度と近づくな」
盗賊のボスは転送者。
自分の幻獣の強さを知り、最初に出会った盗賊を屈服させ盗賊のボスになったのである。
ボスは転送者故に自分以外の転送者の存在を警戒している。
今の理想の生活を壊されないか不安なのだ。
「ぼ、ボス、あいつらは、そんなにヤバイ連中なんですかい?」
「ああ、ひょっとしたら俺より強力な幻獣を召喚出来るかもしれない…」
「SR幻獣を3体も召喚出来るボスより強力な召喚術者なんて存在するのですかい?」
「可能性はある…。だから絶対そいつらには近づくな」
盗賊ボスは地球に居た時はごく普通の良識のある一般人だった。
異世界デビューをしたが、実は小心者である。
ここに来て自分以外の転送者が存在する可能性がある事を考え動揺している。
今まではそんな事を夢にも思わず結構好き放題にやっていたからだ。
次の日。
「た、大変だーっ! 敵だーっ! 敵が侵入してきたぞーっ!」
盗賊のアジト(洞窟)に何者かが侵入してきた。
「落ち着け、どうせまたギルドで依頼された冒険者か術者だろ」
盗賊兄は落ち着いている。
今まで何度か襲撃された事はあるがボスの幻獣で尽く排除してきたからだ。
「いや、今回はマジでヤバイみたいだ。術者でもレアリティが判別不能な糞強い幻獣が3体もいるみたいだ!」
「だ、大丈夫だ。ボスが負けるはずがねぇ…」
盗賊兄はボスを恐れてはいるが、ボスの持つ幻獣の強さを信頼している。
ボスが負けるような事があれば確実に全員処刑されるのでボスを信じるしかないのだ。
盗賊兄は急いでボスの部屋に走って行った。
「何?レアリティが不明な幻獣が3体だと?どうやら少しは骨のある奴が来たようだな」
ボスは平静さを保っている。
しかし実際は子分の手前、平静さを保っている様に振舞っていただけだった。
(ど、どどど、どうしよう…こ、この世界の術者が判別出来ないレアリティって絶対SSR以上だろ…)
(相手は絶対に地球人だ、やっぱり俺以外にも居たのか…や、やばい、どうする…)
(はっ、地球人…いや、あのゲームをやっているなら日本人か…日本人なら話せばきっと分かってくれるはずだ。)
(よ、よし、同じ日本人として情に訴えて、この場は見逃してもらってから逃げるとしよう…)
盗賊ボスは侵入者と話し合う事にした。
この場には子分達が居るが、なりふりを構ってる場合では無いと判断した。
「お、お前達…と、取り合えず、話し合いで解決する…決して相手を刺激しないで下さい…」
ボスは既にキョドっている。
「いや、ボス。調子こいて攻めて来た糞野郎何ていつものようにやっちまいやしょう!」
そうこうしている内に部屋のドアが破壊されて侵入者と幻獣3体が現れた。
「お前等で最後だぞ~覚悟しろよ~この豚野郎共~」
侵入者は盗賊を豚野郎と罵っている。
しかもどうやら、この部屋に居る以外の盗賊は全員ぶっ倒したみたいだ。
「おいおい、この糞侵入者が、お前みたいな…ごぶはっ」
盗賊の手下が何かを言い出した瞬間に侵入者の幻獣は盗賊の手下をぶっ飛ばした。
「お前等豚共に会話を許した覚えはねーぞー」
(よ、容赦ねぇぇぇっ! あ、悪魔かこいつは…に、日本人じゃないのか…?)
侵入者の容赦のない攻撃に盗賊のボスは相当驚いている。
こっちが何かを喋っただけで攻撃してくるなら会話をする所では無いからだ。
「こ、この野郎、調子に…ごぶはっ」
侵入者に襲い掛かった盗賊の子分2人がぶっ飛ばされた。
それを見た盗賊のボスは更に侵入者を恐れた。
盗賊ボスは恐る恐るスマホを出し侵入者の幻獣を確認した。
(さ、3体共SSRだ…これ絶対に日本人だ…しかし…スマホを持ってない…に、日本人じゃないのか…?)
「あっ、転送者発見~どうやらお前がこの豚共を率いてるようだな」
侵入者は盗賊ボスを見て転送者と言った。
(ば、バレたーっ! な、何故バレたんだ…)
(し、しかし、転送者って言葉を使うって事はやはり、この世界に飛ばされた日本人だ。)
「い、いや、あの…お、同じ日本人としてここは…」
盗賊ボスは何とか会話を試みようとした。
「いやいや、お前等豚共は全員処刑コースに決まってるだろ。馬鹿なの?」
(全く聞き入れて貰えないーっ!)
侵入者は容赦が無かった。
侵入者は残っていた子分を全てぶっ飛ばすよう幻獣に指示をした。
「さて、残るはお前だけだ。ほんと犯罪に走る転送者が多すぎ!」
侵入者は他にも犯罪に走った転送者を知っている口ぶりだ。
「い、いや…こ、ここって、い、異世界みたいな感じだし…ゲームの幻獣を召喚出来るし…」
盗賊ボスは苦しい言い訳をしている。
「つまり貴様は異世界だからゲーム感覚で誘拐や人身売買を行っていたと?」
「い、いや、それは…」
「ならば貴様の理屈だと、この場で貴様を八つ裂きにしても問題は無いって事になるな」
「い、いや…も、もう二度としませんので、ど、どうか…」
「いやいや、貴様が今までして来た事を問題にしてるんだ、馬鹿なの?予定通り貴様をこの場で処刑する」
侵入者はやっぱり容赦が無かった。
そして、盗賊ボスは侵入者の幻獣の能力によって眠らされた…
「まっ、俺が処刑する訳じゃないけどな。ギルドの依頼は盗賊の討伐だったが転送者を処刑するのは同じ転送者として後味が悪いからな」
「貴様はこの世界の法で裁かれれば良いだろう…さて、ちゃっちゃと帰ってギルドに報告してこのゴミ共を処分して貰うとするか」
侵入者は盗賊ボスのスマホを回収し洞窟を後にした。
数時間前。
カズヤ達一行は街を練り歩いていたら術者ギルドの前で泣いているおばさんが居た。
当然の様にスルーしようとしたら、ラティシアがギルドの依頼を見てみたいと言い出した。
恐らくおばさんが泣いているのはギルドの依頼と関係すると思ったのだろう。
カズヤ的には面倒事は避けたかったが愛するラティシアに言われては断る事が出来ないのでギルドの依頼を見る事にした。
術者ギルドに入り依頼を確認していたら、依頼では無いが盗賊討伐有志募集の張り紙を発見した。
ちょっと気になったので受付嬢に詳細を聞いてみた。
すると、人さらいを行い人身売買をしている盗賊の討伐だった。
しかし、盗賊の中にSR幻獣を召喚する者が居て国の騎士団や術者が乗り込んでも尽く返り討ちにあったので、
ギルドにも術者を募集し人材が揃ったら再度討伐をするとの事だった。
SR幻獣…この世界の召喚術者でSR幻獣を召喚出来る者は滅多に居ない。
気になったので、どんな幻獣なのか詳しく聞いてみたら案の定、人型のSR幻獣が3体だったとの事。
これはもう転送者で間違いない。転送者に対抗できるのは転送者のみ…
全く気は乗らないが放置しておくわけにもいかない。
さっきの泣いていたおばさんもこれが理由なのかもしれない。
しかし、これはギルドの依頼では無い。どうせやるなら報酬は欲しい。
そんな訳で受付嬢に盗賊討伐するから報酬を欲しいと言ったらサックリと断られた。
仕方ないので術者SSランクのバッジを見せて更にSランクとAランクの仲間も居ると言ったら了承を得られた。
受付嬢に盗賊の住処を聞き、ラティシアとレイラに事情を説明し早速盗賊のアジトに向かう事にした。
盗賊アジトはここから馬車で数時間の距離にある洞窟だ。
道中は何事も無く盗賊アジトに到着した。
「おい」
「なんじゃ」
「お前、大人しいから電池が切れたか確認しただけだ」
「そんな訳あるかっ! アホかっ!」
洞窟の中は危険が危ないのでラティシアとレイラにはSR幻獣を護衛に付け、ここに待機してもらう事にした。
そして、いざ、洞窟の中へ。
洞窟に入るや否やSSR幻獣を3体召喚した。
「SSRか、貴様は本当に憶病者じゃのぅ」
「いやいや、お前馬鹿なの?相手は転送者だぞ! セラフィムとミカエルとラファエルもデッキにセットして、いつでもチェンジ出来る様にしてるに決まってるだろ! アホかっ!」
「アホは貴様じゃっ!」
今更だがセラフィムのレアリティはLR、ミカエルとラファエルのレアリティはURだ。
言うまでも無い事だがレアリティが高いほど強い。
レアリティの関係は LR>UR>SSR>SR>R>HR>N となっている。
そして転送者はゲームと同様に最大5体まで幻獣を召喚する事が可能。
そんな訳で進軍を開始した…
そして、現在に至る。
盗賊を討伐し洞窟からカズヤが出て来たら、ラティシアとレイラがホッとした表情をしていた。よほど心配していたのだろう。
無事に盗賊を討伐した事を2人に告げて街に戻った。
街に到着して早速ギルドに行って盗賊討伐の報告をした。
案の定、受付嬢は半信半疑だったので、もう盗賊はSR幻獣を召喚出来なくなった事を告げ騎士団とかに確認してもらう事にした。
当然、報酬は確認後に支払うとの事だった。
後日、盗賊は捕えられ、無事報酬をゲットした。
「しかし、犯罪に走る転送者が多いな…」
「貴様も最初に会ったのが盗賊だったなら盗賊になっていたじゃろうな」
確かにそうかもしれない…しかし、こいつに言われると腹が立つ。
「お前はさっさと焼きそばパンを買って来いっ!」
「無いと言ってるじゃろっ!」
そんなこんなで、何処かの食堂的な店で晩御飯を食べてルームに入ったのだった…




