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「おい」


「なんじゃ」


「お前いつまで俺に金魚の糞の如く付きまとうわけ?」


「貴様が死ぬまでじゃ」


「その前にお前はリストラだっ!」


「やかましいわっ!」


次の日の朝を迎えルームを出た。


今日はまずルームに保管しておく食料の調達をしてから出発する予定だ。

しかしまだ何処に行くかも決めてはいなかったので例によってメルに次に行くべきお勧めの街を聞いた。

ここから馬車で数日の所にあるノトリウムと言った。歩きだと馬車の倍以上かかるらしい。

どうやら俺の歩く速度は結構遅い上に休憩をしばしば取るので普通の人より遅いとの事。

取り合えずラティシアと10日分くらいの食料と馬の餌を買ってルームに保管しておいた。

しかし数日も馬車の運転をするのは辛いと愚痴をこぼしたら幻獣にさせればいいとメルは言った。

確かにそれが出来るなら護衛も出来るし一石二鳥と思ったので誰が適切かメルに聞いたらRレアのアメミットで良いと言った。

早速アメミットを召喚して馬車の基本操作を教えた。そしてメルにナビをさせて出発した。

道中はルームの棚で発見したトランプとかでラティシアと暇をつぶして何事も無く2日程が経過した。


移動中突然馬車が止まったと思ったらアメミットが前方に複数の人間を確認したと言った。

盗賊でも出たのだろうと思ってラティシアと馬車を降りて様子を伺った。盗賊ならルサールカの出番だ。

5人の男が現れたと思ったら4人が襲い掛かってきた。

ラティシアはすかさずルサールカを召喚しそれを撃退した。

残りの一人を見てみたらスマホを持っていた。

転送者だ…


「やばい…やばいっ! ラティシア! ルサールカを戻して下がるんだっ!」


危険だと思いラティシアを早急に下がらせた。

こんな所に転送者が…しかも盗賊になり果てた悪意を持った転送者が。

転送者と戦う事になるとは正直思ってはいなかった。

奴がUR以上を出してきたら相当やばい。

URだけなら俺の嫁デッキで勝つ事は可能。しかしその場合はLRのセラフィムを出す事になる…

まだラティシアにはURすら見せた事が無いのに、こんな序盤で…

取り合えず同じ日本人だ、まずは話をしてみる事にした。


「転送者だな」


男に尋ねてみた。


「転送者…そうか、お前もこの世界に飛ばされた奴か…いや、違うか…悪いが荷物は全部貰う!」


男は言い終えた瞬間に幻獣を召喚した。


「そ、それがお前の最強編成…なの…か…」


「そうだっ! 抵抗するだけ無駄だと分かっただろ! 荷物を置いてとっとと消えろ!」


召喚された幻獣はSRが3体とRが2体だった。

幻獣のステータスを見るとルーム家具による効果は受けてない。無課金者だ。


「何だよ驚かせやがってっ! お前、糞雑魚じゃん」


「ハッタリを言っても無駄だ! お前が転送者じゃ無い事はお見通しだ!」


スマホを持っていないから転送者じゃないと判断したのだろう。

奴も勝手に転送された被害者ではあるが旅人から金品を強奪する犯罪者。

自業自得かな、もっと他の生き方もあっただろうに…

SR彼女(幻獣)を4人召喚し容赦無く全滅させるように指示をした。

当然の様に相手の幻獣は消滅した。

転送者の幻獣は消滅したら元のカードも消滅してしまう。

多分、奴等はそれを知らない。ゲームでは負けてもカードが消滅する事は無かったからだ。


「ば、馬鹿な…転送者…だったのか…何故…」


相手の男は、これでもかってくらいに落胆している。

レベルMAXのSRが3体もいたら、この世界で負ける事など恐らくは無いだろう。

そう、それは、この世界の召喚術者が相手ならばの話。


「もう悪い事はするなよ」


そう言って彼女(幻獣)達を戻してその場を後にした。


暫く進んでからラティシアが口を開いた。


「旦那様、先程の方が転送者…なので御座いますか?」


「そう。まさかこんな何も無い所で会うとは思ってもいなかったが」


ラティシアは何故相手が転送者だと分かったのかと聞いてきたので、スマホ…と言っても分からないので小さな板状の物を持ってる奴が転送者だと説明をした。

すると何故俺は持ってないのかと言われたので、正直に川に落として壊れてしまったので持ち歩いてはいないと言ったが…

やはり、ラティシアにはちゃんと説明しておいた方が良いとおもい話す事にした。

まず手に持っていた板状の物をスマホと言う事。それは魔道具のような物でそれを利用して転送者は幻獣を召喚している事。

転送者の幻獣は全てレベルが最大だと思っておいた方がいい事。そして俺…何故スマホが無くても召喚できるのか…これは流石に説明に困る。

取り合えず、俺のスマホが壊れた時に俺をこの世界へ転送した奴にスマホが無くても召喚出来る能力を与えて貰ったと説明した。

当然ラティシアは信じられない様子だ。当然だろう、本人の俺でも未だに信じられないし。

その辺は追々と分かってもらえるようにアレしていくしかないだろう。


そしてまた何事も無く数日が経過した。


そうこうしている内に街が見えてきた。

街に到着したらメルが言っていたノトリウムの街だった。


「やっと街に着いたな、ラティシアお疲れ様」


「旦那様もお疲れ様です」


街に居る間は常に情報収集をする様にとメルには伝えてある。

取り合えず馬車を預け食堂的な店に入って食事をした。

この街は食料調達以外では特にする事が無いので数日観光したら移動する事にした。

晩御飯の時間になるまでラティシアと街を見て歩いたりルサールカの特訓を行った。

そして晩御飯を済ませてルームで休んだ。


次の日の朝。


ルームを出て暫く歩いていると召喚術者ギルドを発見した。

特に予定も無く暇だったので中を覗いてみる事にした。

すると1人のおじさんが何やら騒いでいた。


「Aランクの術者様! Aランクの術者様はおられませんか!」


どうやらおじさんはAランク術者を探しているようだ。

これは完全に面倒事だと思い即座に立ち去ろうとしたら誰かと目が合った。


「Sランク…Sランクの術者様だ…」


訳の分からん奴が余計な事を言った。


「な、なにっ! Sランクだとっ!」


さっきのAランク術者を探してたおじさんがこっちに走って来た。


「術者様! お願いがあります!」


「いや、我々はAランクではないので術者違いです。では失礼」


「Sランク術者様が居るとは知らずに大変ご無礼を、ど、どうか…」


俺1人なら内容を聞く前に断っていたが今は隣にラティシアがいる。

正直ラティシアに嫌われるような事はしたくない。それに…

ラティシアは助けて上げないのかと言わんばかりの表情で目をウルウルとさせながら俺を見つめている。

くっ、可愛い…ラティシアにそんな顔をされては無下に断る事は出来ない。

しかしこのおっさん、ラティシアを利用し俺が断れない状況を作り出すとは…何と言う策士。


「こやつは、そんな事を微塵も考えておらんじゃろ」


「だから、お前は脳内に突っ込みを入れるなっつってんだろっ!」


とにかく話だけでも聞いてみる事にした。


「ご、ご用件は?」


「む、娘がっ、私の娘がさらわれたので助けて下さい!」


誘拐か…聞いた以上は助けないわけにはいかないか…誘拐なら尚更ラティシアも助けたいと思ってるだろうし。

さらわれた女性の名前はレイラ。そして高額のお礼をするとの事。

犯人の特徴を聞いたら、相手は人型のR幻獣を3体召喚したらしい。

Rで人型…それはもう十中八九転送者だ。ならばこれは俺が処理する案件。

転送者有利な世界だからって犯罪に走る奴多いな…って、まだ2人しか知らんけど。

取り合えず犯人がいる場所を聞いてそこに向かった。


今回は相手が転送者の可能性が高いので俺とラティシアの護衛はそれぞれSRにし、更に前衛にSRを3人召喚した。

暫く歩いていると誘拐犯が立てこもっているであろう建物を発見。

ラティシアにはここで待機させて俺とSR彼女(幻獣)4人で建物に乗り込む事にした。

そして、なるべく音を立てずに建物に近づいたら突然女性の悲鳴が聞こえたので急いで建物に入った。

中に入ると男が女性を襲おうとしていたので、3人の彼女(幻獣)に犯人の拘束と幻獣の討伐を指示した。

犯人はあっさりと捕らえられ3体いた犯人の幻獣も消滅した。


「間に合ったか…危なかった…怪我は無い?」


下を向いていた女性がこちらを見て返事をした。


「だ、大丈夫で御座います…助けて下さって有り難う御座います…」


なっ、なん…だと…こんな、こんなに可愛い子がまだ居たなんて…

こんな可愛い子を襲おうとしたなんて許せん!


「おい、この豚野郎! 貴様は転送者だろ!」


「な、何故、僕が転送者だと…」


転送者って皆スマホを隠そうとしないのな。

どうやら、この豚も他の転送者と接触した事が無いって事か。

今はそんな事より、この豚野郎の処分が先だ。


「おい」


「なんじゃ」


「この豚どうするよ」


「スマホを没収するのがいいじゃろ」


盲点だった。確かにスマホを取り上げたら、こいつら豚共は召喚が出来なくなる…

ならば、こいつからスマホを取り上げて…いや、待てよ…ひょっとしたら…

使用者とスマホが離れたらデバイスの使用条件を満たす事にならないだろうか?

その疑問をメルに確認してみたらスマホの電源が入ってさえいればデバイスは使えないと言う。

更に今更だが何故充電もできないスマホのバッテリーが切れないのかと聞いてみたら、その辺は転送時に改造されたらしい。

ただ、バッテリーが切れないだけでスマホ自体の耐久力は以前と変わらないから普通に壊れると。

俺のスマホは防水付いてないから普通に壊れた。


「おい、この豚野郎、二度と悪さが出来ない様に貴様のスマホを没収する」


「そ、それだけは許して下さい。お願いします」


豚は泣きながら懇願しているが誘拐して女性を襲うような奴に同情の余地は無い。

容赦なくスマホを取り上げ女性を連れてその場を後にした。

歩きながら彼女の名前を聞くとレイラと名乗った。やはりギルドで頼まれたおじさんの娘だった。


「それにしても無事で良かった」


「あ、あの…術者様はSランク…Sが2つ…」


彼女は術者バッジにSSと書いてあるのを見て疑問を感じたのだろう。

なんせSSランクは急に作って貰ったアレなので全く認知されていない。

Sランク術者すら見た事が無いだろうから当然だろう。


「これはダブルSランクと言って、Sランクの上のランクなんだ」


信じるかどうかは分からないが一応説明をしてみた。

俺の彼女(幻獣)達は全員人型で普通の人には幻獣には見えないから信じては貰えないだろう。


「そのようなランクが存在していたとは存じておりませんでした。申し訳御座いません。ですからSR幻獣を4体も…」


あっさりと信じたようだ。幻獣だと分かってるって事は彼女も召喚術者だ。

相手が転送者ならこの世界の人間が召喚した幻獣では太刀打ちは出来ない。

この先に連れが待っている事を伝えラティシアと合流した。


そしてレイラとラティシアと3人で街へと戻った。


街に着きギルドに到着するや否や依頼者の彼女の父が飛び出してきて彼女を抱きしめ号泣した。

感動の再会の所に水を差すのもアレだからギルドに報酬を貰いに行ったが、そんな依頼は無いと言われた。

どうやらギルドに依頼せずにその辺の術者に娘を助けてくれるAランクの術者を探していたらしい。

仕方ないので依頼者のおじさんの所に行ったらお礼をしたいから屋敷に来て欲しいと言われたので屋敷に向かう事になった。


屋敷…家じゃなくて屋敷…確かにこれは家じゃなくて屋敷だ。

門の中の敷地の面積が広いし建物もとにかくでかい。

屋敷に入ると何処かの部屋で結構な時間待たされてから食事の準備が出来たと言われ食事をする部屋へ移動した。

食事部屋には依頼者のおじさんと娘のレイラが既に着席していた。

俺とラティシアが部屋に入ると2人は立って挨拶をして助けた事のお礼を述べた。

そして皆が着席して食事を始めた。


「リンデンヘル様、お久しぶりで御座います。ラティシアです」


ラティシアが突然おじさんに挨拶をした。以前このおじさんに会った事があるようだ。

どうやらこのおじさんは結構爵位が高い貴族らしい。

貴族とか全く分からないのでメルに相談したら取り合えずリンデンヘル卿と呼べばいいとアドバイスを貰った。


「ラティシア姫殿下で御座いますか! こ、これは大変なご無礼を致しました」


リンデンヘル卿はラティシア姫と知り、えらく恐縮している様子だ。

そして俺がラティシア姫の婚約者と知り更に恐縮した。

リンデンヘル卿はとんでもない相手に依頼したと深く反省していた所ラティシアはそれをなだめた。

そんな事より俺は、お腹が減っていたのでガツガツ食べておかわりを要求したらラティシアとレイラとリンデンヘル卿は驚いてる様子だった。


やらかしたか…だって庶民だからマナーとか知らんし。

3人がスローペースなのは育ちとかマナーとかのアレなのだろうか。


「か、カズヤ様はどちらの御子息様で御座いますか?」


姫の婚約者なのに、全く貴族っぽく無い俺にリンデンヘル卿は疑問を抱いているのだろう。

取り繕ってもアレなので素直に身分を明かす事にした。


「いえいえ、自分は何の取柄も無いド平民です」


リンデンヘル卿は俺が平民と知り言葉を失っているようだ。


「そ、そんな事は御座いません! 旦那様はこの世界で一番の術者様で御座います!」


いつになくラティシアが声を張って俺のフォローをしてくれた。


「いやいや、確かに世界一の術者だけど、それだけだよ?」


「貴様はチートじゃがの」


「お前は部屋の隅で正座でもしてろっ!」


「い、いくら姫殿下とご婚約をされているからと言って、せ、世界一とは…」


リンデンヘル卿は平民の俺が世界一の術者とは思ってないらしい。

当然だろう。自分から世界一を名乗る奴ほど胡散臭い奴はいない。

しかしラティシアも優秀な術者とか言えばいいのに、世界一とか言われたら結構照れてしまう。


「いえ、お父様! カズヤ様は世界一の術者様で御座います!」


今度は何故かレイラが俺のフォローをしてくれた。

レイラは俺がSRを4人出してるの見てたから普通に信じたのだろう。

そしてレイラはリンデンヘル卿に助けられた経緯や俺が召喚してたSR幻獣の話を熱心に語りだした。

以前にもこんな場面に遭遇した様な気がしたが、俺は構わずおかわりを要求して食べる事に専念した。


「カズヤ様! カズヤ様は誠に素晴らしい術者様で御座います! 是非、娘を貰っては頂けないでしょうか!」


なんだ突然、藪から棒に。

レイラにあれこれ言われて感化されたか。

それに本人の意思ってもんがあるだろうに。


「お父様…」


言わんこっちゃない。レイラは下を向いて落ち込んでいるではないか。

貴族なのに平民の嫁になるとか、この世界ではNG案件だろ。王様が特別なだけだろう。


「有り難う御座います! お父様!」


良いんかいっ!

この親子は俺にどんだけ脳内突っ込みをさせれば気が済むんだ。

しかし…非常に嬉しい申し出だが、俺とラティシアが婚約してるのを知ってるのに何故…


「いや…俺はラティシアと婚約してるから妻とかはちょっと…」


「そ、それでは、(めかけ)でも構いませんので、何卒…」


リンデンヘル卿は何故か必死に言ってくる。

(めかけ)って愛人みたいなアレだよね?どっちみちダメでしょ。

俺はラティシアに嫌な思いをさせたくない。しかし、レイラを他の豚に取られたくはないし…

俺が悩んでいたらラティシアが不思議そうに何故悩むのかと聞いてきた。

既に婚約者がいるのに他に女を作るとラティシアに失礼だろう的な事を言ったら、妻や(めかけ)を複数持つのは普通の事だと言われた。

この世界では普通かも知れないが…まあ、ラティシア的にOKなら俺に異論は無い。

特別(妻)はラティシアだけにしたいからレイラは(めかけ)と言う事で納得してくれるだろうか。


「えっと…め、(めかけ)?で良いなら…レイラはそれで良いの?」


「はい…おそばに置いて下さるなら喜んで…」


良いのかよ…この世界はどんだけ召喚術者がモテるんだよ…

そばに置いてって事は旅に同行するって事なのだろうか。


「俺とラティシアはまだ旅の途中なんだけど、行動を共にするって事?」


「はい…ご迷惑でなければ…」


レイラはそう言うが、流石に娘がいきなり旅に出るのは親的には反対だろう。

その辺をリンデンヘル卿に確認してみる。


「リンデンヘル卿は大事な娘が旅に出てしまうのは流石にアレですよね?」


「娘も望んでいるので是非、御供をさせて上げて下さい」


何でそんなアッサリ娘を手放せるんだ。

この世界の父親はどうなってんだろう。

ラティシアと同様にレイラも親公認なら問題は無いけど。


「貴様が望んでたハーレム化が実現したのじゃから素直に喜べば良いじゃろ」


「望んでねーし! アホかっ! それにまだ2人だっつーのっ!」


いや、ちょっとは望んでいたかも? ほら、ハーレムとか男の夢だし?

それはさて置き…

新しく仲間になったレイラに改めて挨拶をした。そして、これまた、かなりの額の報酬を貰った。

レイラの同行分のアレも上乗せした額だろうけど、さすが貴族! 太っ腹!

そして、リンデンヘル卿にお別れの挨拶をして屋敷を後にした。

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