第七十四話 進もう
「正面は押している!左右はどうだ!?」
「で、伝令!右手が苦戦です!おそらくスターディアかと......!」
「スターディアだと!?俺が行く!持てよ、ラッテルタ!」
そう言って、オスターが右手に向かう。数人正面を離れても、十分この形勢を維持できるだろう。左手も問題なく押しているらしい。
「[転戦]。」
テッツァーレのスキルで、王国兵がどんどんこちら側に各個飛ばされ、構えていたデート・ガルディアの騎士団に討ち取られていく。どうやら、テッツァーレのスキルは、近付いた敵の攻撃を受け流し、自分の背後に流すといったところだろうか。相手している側としたら、体勢を崩したと思ったら、待ち伏せしている集団の所に放り投げられたという事だろう。かなり初見殺しに特化している。
「詰めますよ!」
そう叫んで、シリアスさんは大量の魔弾を放ち、敵を後退させる。そこにすかさず屋根からの援護射撃が入り、敵が防御用に展開した壁は、あっさりと割れた。
「左右の王国兵は全滅!」
「よし、斬り込め!」
騎士団長がそう命令し、援護射撃をしてもらいながら、武器と武器のぶつかり合いが発生した。背後の炎はより離れ、王国兵が全滅した頃には、門に戻ってきていた。
「......やられたな。」
保護していた王国兵と、それの見張り用に待機させていた騎士団は、全員死亡していた。地下から出てきた王国兵に、惨殺されたのだろう。その時、後ろからやってきた騎士が、慌てた様子で報告をする。
「ら、ラッテルタ様が戦死なされました!」
「なに!?」
死んだ?言葉が出ない。言葉を探す。
「ただ、奮戦し、スターディアに重症を負わせて撤退させたと......。」
「......意味がない。すぐに回復されるだろう。」
声の主。腕にラッテルタの遺体をかかえたオスターがやってきた。オスターは俯いており、表情は見えない。ただ、涙が落ちていくのが見えて、泣いているのだと分かった。
「進もう、ハウッセンへ。」
オスターはそう呟いて、街の外へ出る。外に出て、ラッテルタを地面に置き、地面を掘り始めた。横たわっているラッテルタの肌は白く、ただ、肩から腰にかけての傷口はどす黒い。
「目は......もう、覚まさないのでしょうか。」
「死ぬという事ですよ、ヴィンデート君。」
「知って......、います......!」
死んだ事を肯定されて、怒りを覚える。知っている人が死んだ。ずっと居ると思っている人が、仲間が、死んでしまった。
「無事ですよね?ハルセンジアさんも、エミラッシェさんも......。」
「無事ですよ。きっと。」
そう言って、シリアスさんは炎に向かって行く。この獄炎を、消火するらしい。そんな時じゃない、と言うと、シリアスさんは振り返って笑って。
「後ろを向くと、死体の山が転がっているんです。前を向いて、生きなきゃ......、進まなきゃ......、やっていられないじゃないですか......!」
だんだん泣きながら、笑顔がぐちゃぐちゃになりながら、そう言った。




