第七十話 サイサンシュレイト掃討戦
「これより、東部班と北部班に別れる。それぞれ、昨日指定された班に別れるよう。」
サイサンシュレイト城下町の騎士団長がそう命令する。東部の要所と北部の要所を同時に攻め落とし、その後進軍して、敵の要塞を挟撃するようだ。
「よろしくお願いします、ヴィンデートさん。」
「こちらこそ。」
指定された場所に移動する途中、ラッテルタがそう言って俺に挨拶をする。同じ街に居たのだが、如何せん話した事があまりないので、こんな緊張した時に連携できるかどうか不安だ。
「なぁに考えてるんだ?」
「あ、オスターさん。よろしくお願いします。」
「こちらこそ。......余計な事は考えるなよ?最悪死ぬぞ。」
脅し、ではないだろう。
「ありがとうございます。目の前の事に集中しますね。」
「それがいい。......ここにはあと、シリアスとテッツァーレが入るらしいな。」
そうなのか。ざっと辺りを見渡すと、サイサンシュレイトの騎士団に加え、私兵団らしき集団や、デート・ガルディアの騎士団が歩いている。
「私が率いるのが、ミリスト私兵団です。お父様から派遣してもらったのですよ。」
「そうですか。」
指定された場所、東門に着いて、しばらく待機していると、サイサンシュレイトの騎士団長がやってきた。
「最終確認だ。」
俺を含めた東部班は、東にあるグアンへ向かい、奪還に向かう。それからやや北上し、北部班と挟撃できるようにして、自然の要塞ハウッセンを攻略する。その後また北上して、ライアンズの村を奪還すれば、サイサンシュレイト全体から王国兵を消す事ができる。昨日言われた事をもう一回言われ、俺達はそれに頷いた。
「まずはグアンの攻略だ。進軍する。」
「「「「はっ!」」」」
東門を出て、移動速度上昇の魔術具を使いながら進軍をして行く。この速度なら、三十分もかからずにグアンに到着するだろう。ふと横を見ると、何かを考えているようなオスターの顔が見えた。
「どうかしましたか。」
「私兵団......。いや、何でもない。」
ラッテルタに関しての疑問だろうか。ただ、自分が考えてもよく分からない事だし、なにより。
「余計な事を考えたのなら、最悪死ぬんじゃあないでしたっけ。もうそろそろ着きますよ。」
「ああ、そうだな。ありがとう。」
「見えたぞ!」
遠目で見る限り、街の前で迎え撃つという姿勢がひしひしと感じられる。馬防柵が並べられ、それらの後ろに人々が集まっている。王国兵の格好をしているが、さて、あれはサイサンシュレイトの民なのだろうか。
「聞け、グアンの街の民よ!私はサイサンシュレイト騎士団長、グランデアである!」
魔法の射程外と思われるギリギリのところまで近づき、騎士団長は声を放った。七百はいるだろう人々から、どよめきの声が上がる。
「サイサンシュレイト城は解放された!もはやアンデルビート国王に従う事はないだろう!」
そうして、サイサンシュレイトの騎士団だけ近づいていく。一応、ミリスト私兵団と、デート・ガルディアの騎士団は待機だ。
「武器を向ける先は祖国ではない。一方的に支配し、搾取する王国だ!そう思うなら、我々に背を向け、街を見ろ!故郷を取り返すのだ!」
そう言って、サイサンシュレイトの騎士団らは武器を掲げる。しばらく、彼らのざわめきだけが響く。しばらく経つと、何故か王国兵の人々の中心部で血が上がった。
「え。」
それから、地獄のような惨状が繰り広げられていく。もみくちゃになりながらも、彼らは争いを止めない。それらがどんどん広がって、各地から血の雨が降り注いでいる。
「やったな、コノヤロウ!」
「そんな簡単に......、妻を諦めるものか!」
「やめろ、やめろ!武器を捨てろ!」
喧騒がこちらまで聞こえてくる。皆もただ事ではないと思っているようで、顔を合わせて頷き、すぐに騎士団長の下に駆けつけた。
「何があったのですか!」
「わからん!だが止めなければ......、民が......。」
街の人同士で殺しあっている。この惨状を放ってはおけない。そう思ったところで、群衆の波からこぼれ、こちらに駆け寄ってくる人々がいる。いや、武器を構え、殺しに来ているだろう。
「ヴィンデート君。」
「はい、[ステータスオープン]。」
どこからどう見ても一般人だ。多少訓練した程度の。
「問題ないです。......ただの、一般人。」
「......そうですか。」
シリアスさんがそう言って手をすっと前に出して、魔弾を発射する。散ることも、かわすこともせずに、彼らは魔弾に突っ込んでいった。彼らは魔弾にぶつかった途端、弾け飛んで肉片が散らばった。
「っ......。」
「立ち止まっている暇はない。......彼らを止めろ!」
「「「「はっ!」」」」
俺達は進んでいく。肉片を踏み締め、その先へ。
俺達は地獄の一歩手前から、一歩踏み出した。




