第六十九話 奪還戦前日
おおまかな方針を決定させた会議から三日後。俺達はサイサンシュレイトへ向かう事になった。メンバーはテレヴァンス以外の茨の城の団員と、オスター、ラッテルタ、ラクタウトだ。
「待機......、待機。しょうがないですね......。」
「サイサンシュレイト内の王国兵を掃討するのが目的なので、戦闘能力がないと厳しいですね......。セントレイクでも出来ることがあると思うので、気を落とさないで下さい。」
落ち込むテレヴァンスを慰め、俺達は馬車に乗り込む。ベルグラート領主から送られてくる騎士団達とは、サイサンシュレイト城で合流だそうだ。
「では行くぞ。」
ラクタウトがそう言って、馬車を先行させた。茨の城団の馬車も、その後に続く。
「......ヴィンデート。アンデルビート国王を討って、この戦いが終わったら、どうする?」
「なんですか、急に。」
神妙な顔でハルセンジアさんが問う。エミラッシェさんは何の話か分かっているようで、目を伏せて、口を開いた。
「ここは、元々はサイサンシュレイトを取り返す為に作られたギルドです。お金を貯めて、準備をしていたのですが......。」
ああ、そういうことか。この戦いが終わったなら、茨の城団がある意味が無くなる。
「ねーちゃんを探そうと思っています。ただ、もし良いのなら......、ねーちゃんを見つけたら、俺達をサイサンシュレイトで雇ってくれますか?」
「......もちろんだ。団長も......、いや、領主様も許可してくれるさ。」
ハルセンジアさんは嬉しそうに、頬を緩めていた。エミラッシェさんも、笑顔で外の景色を見つめている。そうしてすぐに、サイサンシュレイト城が見えてきた。
「お久しぶりです。」
「ミレーマーシュが出迎えか。場所が変わっても、やっている事は変わらないな。」
「ふふっ、その言葉、茨の城に私が来てからの時も言っていましたよ。」
ハルセンジアさんとミレーマーシュさんがそんなやりとりをしながら、城へ歩いて行く。
「そういえば、テレヴァンスはお留守番でしょうか?」
「そうですね。恐らくデベロバード領主へ協力を乞うために、色々苦労してるのでは。」
ラッテルタがそう応える。そのまましばらく歩いて行くと、城の前に沢山の人々が集まっているのが見えた。恐らくはベルグラート領主から送られてきた騎士団だろう。ハルセンジアさんがそこの代表者とやりとりを交わし、その後、ベルグラートの騎士団を残して城へ入って行った。
「今回の件、こちらとしては非常に助かる。」
「ええ、いつ頃に奪還を開始しましょうか。」
「準備は十分に整っている。明日で良いだろう。」
エデルジート団長こと、エデライブジート領主と話し合い、明日に戦闘が開始することになった。しばらく、お互いの情報をすり合わせていく。王国兵の一部がサイサンシュレイトの民だという事等を話し、向こうはラッテルタの家から増援が寄越された事を話した。
「お、お父様が?」
「ああ、私兵団を六十人ほどだ。後で顔を会わせておくと良いだろう。」
確かベルグラート領主から送られてきた騎士団は、百五十人ほどだっただろうか。サイサンシュレイトの騎士団を合わせて、合計四百人ほどの兵力になる。正直、これで四つの要所を取り返せるだろうか。
その後しばらく話し合って、解散となった。昼食を終えて、指定された自分の部屋へ向かおうとしたところ、廊下でシリアスさんと出会った。どこかで見たことがあるような女性の人を連れて。
「お久しぶりです、シリアスさん。......こちらは?どこかで見たことがあるような気がするのですけれど。」
「お久しぶりです、ヴィンデート君。......この人は、デート・ガルディアから派遣されてきた人ですよ。」
「テッツァーレです。」
思い出した。逆毛の霊獣団の団員で、セントレイク救出戦に増援に来てくれた人だ。どうやら、騎士団と一緒に助けに来てくれたらしい。
「しばらくはこちらで生活することになりました。」
「そうなのですか。よろしくお願いします。」
そうして、部屋に着いた。今回の任務はかなり骨が折れそうだ。
「約四百で、要所を四つ......。」
どれだけ向こうの王国兵を寝返らせるかが鍵になりそうだ。できるだけ血を流さずに終わらせたいが、そうもいかないだろう。少し、嫌な予感がした。
一週間前後忙しくなるので、しばらく更新ペースが落ちます。申し訳ありません。




