第六十六話 反撃の書類
セントレイクに帰って来たが、入れ替わりでデート・ガルディアから来た増援も、もう帰ったらしい。最後にアンネリアやエンディストと話したかったが、過ぎた事はしょうがないだろう。
「ハルセンジアさん、人手は大丈夫でしょうか?」
「おそらく全然大丈夫じゃあない。何故シリアっ......ああっ!」
シリアスさんは、サイサンシュレイト城に残る事になったそうだ。地下室の確認が主とエデルジート団長は言っているが、単純に執務能力が高いからだろう。それと魔力も狙いか。
「わ、私も頑張りますから。」
「テレヴァンスが気にする事はないかと。人員の効率の関係上、魔力量と執務能力を高い水準で両立しているのは、シリアスさんぐらいですから。」
「......とりあえず、帰ったばかりだが、ファントレアル騎士団長に報告しておこう。」
「シリアスを盗られました。」
「は?」
エミラッシェさんとテレヴァンスに、茨の城のお茶会部屋を整えてもらい、騎士団に成果を発表する。という名目だが、ファントレアル騎士団長は、出鼻をくじかれたようだ。まあ、急に言われても反応に困る。
「ええっと......。エデルジート団長に、今サイサンシュレイトに執務能力と魔力が欲しいと言われて、シリアスさんが許可したという流れですかね。そうですよね、ハルセンジアさん。」
「ああ、本音だけ切り取ったらな。」
とりあえず、今いる騎士団達、ファントレアル騎士団長、サーテレラに、今回の成果を発表する。オスター、ラッテルタ、ラクタウトは、ここにいるが、同行していた為に全て知っている。
「......と、いうことです。」
「ううむ、地下室とやらが気になるが、建前として立てたからには、ある程度進めていると信じよう。で、こちらがするべき事は......。」
そう言いながら、サーテレラをちらりと見る。
「デート・ガルディアと連携して、王国兵を追い返してゆく事でしょうか?」
「そういえばミレーマーシュが、テル教育校に助けを求めてみては、と言っていたが。」
「......無理だと思う。この状況だが、まだ休校にはなっていないんだ。」
どうやら、細々と続いているらしい。それをみると、自ら戦争に首を突っ込む事はしないと思われる。となれば、やはり他に頼る所がない以上、サイサンシュレイトとベルグラートだけで戦わなければいけないのか。
「アンデルビート国王が失脚するまで耐えるというのは......。」
「駄目だ、ラッテルタ。神具の回収が終われば、アンデルビート国王の支配はより強固な物となる。誰かが反撃をしなければいけないのだ。」
「援軍を頼むとしたら他の国......。近くの国ならデベロバードか、フウアンテルラだな。」
ファントレアル騎士団長がどこかの国の名前を呟き、悩んでいる。デベロバードは知らないが、フウアンテルラなら、ベルグラートから王都に行く為に、避けては通れない国だと記憶している。ただ、ベルグラートのデート・ガルディアまで攻め込んだとなれば、国の中で手一杯か。
「ハルセンジアさん。恩を売るのはどうですか?フウアンテルラなら、復興を手伝う為に魔力提供をすれば。」
「......なるほど、ここまで攻め込んだのなら、フウアンテルラは壊滅的だと思うという事か。」
「これは我々の一存では決められないが......。ベルグラート領主に提案してみても良いかもしれない。」
少し議論をした結果、大まかな方針は決まった。ベルグラート領主にこれらの事を知らせ、サイサンシュレイトとベルグラートを中心として、王国兵を王都方面へ追い返す。できるのなら、他の国と足並みを揃え、アンデルビート国王を追い落とす。
「これは反撃の第一歩だ。」
ファントレアル騎士団長が机の上に置いた物は、ベルグラート領主にこれらの事を知らせる為の紙だ。
「返答が返り次第、次のステップへ進む。皆はそれまで、セントレイク内の片付けをしておくように。返答が返ってくる頃には、夏真っ盛りだろう。暑い中だが、頑張ってほしい。」




