短編 野望
「アンデルビート国王。」
「なんだ?」
昼下がり。執務室の中で今後の進攻計画を練っていたところ、フレアダイトが入室してきた。たった一人の弟を、自慢の槍術で稼いで育てている王国の将だ。フレアダイトが騎士団に入ってきた頃、弟が、お姉様と言いながら甘えていたのが記憶に残っている。
「神具を持ってまいりました。」
彼女が手に持っているのは、神具妖精槍テレファーレ。彼女が持てるという事は、妖精槍テレファーレは、やはり彼女に適性があるという事だ。
「ふむ、それを使う事を許可する。」
「は、はい。え、何故でしょうか。」
「使えるなら、使った方が良い。......それと、フレアダイト。お前にテル教育校の制圧を命令する。明日までに詳しい作戦をたてよ。」
彼女は少し戸惑っているが、すぐに理解して、了解する。その後、彼女から願いを乞われた。
「あの......、姉が騎士だからといって、無理矢理弟を騎士団に入れるのは遠慮してほしいです。姉としては、危険な仕事はやらせたくないので......。」
「そうか。惜しい人材だったが......、諦めよう。」
「ありがとうございます。」
そう言って、彼女は退出する。フレアダイトの軍ならテル教育校の制圧ぐらい、容易いだろう。弟の事は、保護者から断られてしまったしまったので、諦める他ないか。
「クロイン、布陣についてはどう思う?」
「......南にあるサイサンシュレイトや、ベルグラート方面を厚くしたいですが、それ以外は良いと思います。神具の回収も完璧です。」
「回収、だけだがな。」
聖輪アニュレイトの適性がある、サーテレラという者を捕らえるチャンスを逃した。今に思えば、思わぬ収穫だと思う。アグライト教の反逆で、サイファリアという少年が捕まった。その者の連座で、父親を捕らえたところ、聖輪アニュレイトを発見することができた。ついでに、なにやら不穏な動きをしていたのが前々から分かっていたので、処刑する事もできた。まあ、サーテレラを捕らえる為に、人質等で利用しようとしていたサイファリアには逃げられたが。
「テル教育校に進攻する為には、やはりサイサンシュレイトや、ベルグラート領が難関でしょうか。先程、ベルグラート領のデート・ガルディア包囲計画は失敗に終わったと通達が入りました。」
「デート・ガルディアが難関か......。サイサンシュレイト方面はなるべく持ちこたえるように伝えてくれ。スターディアやスティアビートの軍で反撃を......。」
「彼らの軍はかなりの痛手を受けています。......正直、もう南方面に流す戦力はないかと。」
ならば、サイサンシュレイトに残っている兵で時間稼ぎをしつつ、こちら側での神具の回収を急ぐか。そう考えている時。
「ぐっ......。がぁあ、かぁ、っあ。」
「アンデルビート国王!?」
強烈な頭痛が襲ってきた。すぐに収まったが、しばらく頭を押さえたままになっている。クロインが心配そうに声をかけてくれるので、その心使いで、本当に申し訳ない気持ちになる。
「いや、大丈夫だ。ビートを宿した弊害だろう。」
「......アンデルビート国王。」
クロインが口ごもるような、そんなしぐさをして、思い切ったように言い放つ。
「こんな事、もう止めましょうよ。」
「なんだと?」
「何の為にこんな事をするのですか。」
「我が支配を、より強固にする為だ。」
最初は、神具を見た時。人の力を超えた力で、俺の身を守る事ができると考えた。けれども、今は......。
「フィリアの身も、俺が守る。」
「止める気は無いのですね?」
「ああ。」
当たり前だ。今更、後戻りする事などできない。
神の力に対抗するのには、神の力を使う。そうやって、敵は俺達を追い詰めてゆくだろう。ならば、その力を根こそぎ奪えば、絶対的なる支配を完成させる事ができる。
「止まる気はない。」
ワクチンの副反応でやられていました。再開です。




