第五十九話 サイサンシュレイトへ
アンデルビート国王がお見えになる。私は心臓を鳴らしながら、その一瞬を待ち続ける。扉が開き、会議室にアンデルビート国王が入ってきた。
「アルニエス。貴重な情報提供、感謝する。」
「ありがたきお言葉です。」
「......では、望みを叶えよう。平和、でよいのか。」
平和を望む。誰も傷付かない、幸せを作り上げる為に、私は騎士団に入った。
「ええ。」
「では......、これより五百キロメートル東にある国を渡そう。幸せを、作り上げてみせろ。」
馬車を走らせ、俺達はサイサンシュレイトへ向かう。ちらりと横を見ると、セントレイクの騎士団の馬車がある。ふと、オスターと顔があった。
「森に入る。魔物はいないはずだが、魔獣には注意しておけ。」
「はい。」
ハルセンジアさんがそう言って、茨の城団の馬車を先行させる。整備されている道とはいえ、馬車がギリギリ二台入るぐらいの幅だ。向こうから別の馬車がやってくるのに備えて、縦に並んで森を抜けようとする。
「騎士団は少ないですが、いいのでしょうか。」
「セントレイクが忙しいからな。予定は聞いていただろう?」
今日の夜はサイサンシュレイトで過ごして、セントレイクに帰る。その間にするべき事は、エデルジート団長に何があったのかを聞く事だ。同行する騎士団は、オスター、ラッテルタ、ラクタウトだ。
「まあ、色々あったからな。」
「アルニエスが裏切った事で、様々な情報が向こう側に渡されています。そちらの対策も共有しましょう。」
エミラッシェさんがそう言い、先を見る。もうすぐ森を抜けるのだろうか。
「逆に情報が漏れていれば、相手の手を読みやすいです。確かな損失ですが、焦らず切り返していきましょう。」
道が開け、辺りに緑が広がった。少し丘になっているのだろうか。少し見下ろすと、サイサンシュレイトの城が見える。
「夜が明けるぐらいに着けるな。」
「......懐かしいですね。」
シリアスさんがそう呟き、けれども懐かしそうには思えない顔をしている。
「茨がないですね。」
「流石に残ってはいまい。だが、穴まで残っているとは。」
茨......。よく見ると、城にはぽつぽつと穴が空いている。あそこに茨が突き刺さっていたのだろうか。そうしたら、茨の城団という名前の由来は、ここかもしれない。
「セントレイクの者ですね?大変な中、おこしくださるとは。」
「こちらこそ、大変な中、歓迎の準備をしていただき、ありがとうございます。」
門番とハルセンジアさんが話し合い、俺達はサイサンシュレイト城下町に、足を踏み入れた。建物はボロボロだが、人々は活気がある。夜明けというのに、沢山の人々が喜び、働き、町を再生させている。
「約二十年ぶりの解放だ。気持ちは痛いほど分かる。」
「......何故王国兵は。」
シリアスがやりきれない気持ちで、そう言った。会議が終わってから、なにやらシリアスさんの元気がないみたいだ。ずっと、サイサンシュレイトの領民を殺した事で、気を病んでいる。しばらく門番に連れられて歩いていると、城の目の前に連れられた。
「どうぞ中にお入り下さい。領主がお待ちです。」
俺達は玉座の間に連れて来られた。玉座にはエデルジート団長が座っている。左右にはミレーマーシュとテレヴァンスがついており、こう見ると、領主一族という身なり格好をしている。
「久しぶりだな。」
「貴方の無事を安心しました。」
ハルセンジアさんがそう言ってひざまずこうとするが、エデルジート団長がそれを止める。楽でいい、と告げられた。
「ミレーマーシュさんも、テレヴァンスも無事で安心しました。」
「ありがとう、ヴィンデート。」
「ええ、こちらも無事で安心しましたよ。」
「とりあえず会議室は準備してある。ここよりそちらの方が話しやすいだろう。」
そう言って、退出を促す。ここの部屋ではいつものように振る舞う事ができないらしい。俺達が次々と退出してゆき、最後に俺が扉をくぐろうとした時、エデルジート団長から声をかけられた。
「ヴィンデート、君の血筋について、何か知っているか?」
「いいえ、何も。もしかしたら、ねーちゃんが知っているかもしれませんが、私は何も知りません。」
そうか、と言って退出を命じる。なんだったのだろうか。




