第五十五話 セントレイク救援戦・情報共有 前編
「フィリア、済まない。用事があって数日席を空けていた。」
「大丈夫ですよ、アンデルビート国王様。こうやって一緒に食事を楽しむ事ができて、幸せですから。」
そう言って彼女は笑うふりをする。彼女は名前以外、何一つ自分の事を明かそうとしない。その意図は分からないが、例え何を考えていたとしても、俺の気持ちは変わらない。
「フィリア。俺はお前を愛している。」
「事後確認ですか?」
フィリアは首を傾げた。へんてこな応えに、少し笑いそうになる。
俺も幸せだ。切り取った肉を、上品に口へ入れた。
「片付いたか?」
「はい。話し合いができる程度には。」
昼食を終えて、ファントレアル騎士団長が玄関にやって来た。その後ろには、サーテレラ、ミラシュレイン、オスターの姿がある。ハルセンジアさんが対応し、お茶会部屋に通す。お茶会部屋にある机が長いとはいえ、全員入るのだろうか。
「シリアスさん、まだ人が来るのですよね?入り切るのでしょうか。」
「管理支部がいっぱいで、他の建物も壊されていたので......。流石に食糧庫で話し合う訳にもいきませんよね。」
小声でシリアスさんに聞いてみると、答えをあやふやにされた。恐らく椅子が足りないだろう。元々少人数で仕事も少なかったギルドに、いきなり大人数の相手をしろと言われても無理だ。
「ヴィンデート君。街の復興と共に、ここを大きくしてみましょうか?」
「......ここが一番過ごしやすいですよ。」
冗談だと分かっていても、そんな言葉を放ってしまった。王国兵の意図があったとはいえ、周りの建物が壊れている中、残ったこの建物を大事にしていきたいから。
「ディンビエラ部隊長、参上しました。」
そんな声が玄関から聞こえ、複数の足音がこちらに向かって来る。お茶会部屋の扉が開かれ、中に入って来たのは、ディンビエラさん、エンディストさん、テッツァーレさんだ。ディンビエラさんとエンディストさんが椅子に座り、その間をとるようにテッツァーレさんが後ろに立った。ミラシュレインとオスターも、ファントレアル騎士団長とサーテレラの後ろに立っている。
「さて、全員揃ったな。では今回の件について、そしてこれからについてを話し合っていく。」
「「「「はい。」」」」
まずは昨日見た被害報告だ。一通りミラシュレインが読み、ファントレアル騎士団長が被害の甚大さについて語る。二、三人に一人が死亡し、重傷を負った住人も多数いる為、街の復興は絶望的だそうだ。
「混戦が原因ですよね......。殆どの部隊同士がが連携できていませんでした。」
「そうか、エミラッシェ。どのような状況だったか、話せるか?」
ファントレアル騎士団長人に促され、エミラッシェは混戦の惨状を語る。管理支部から解放された戦闘員の一部は連携がとれておらず、正面から敵を倒して行ったらしい。彼らを中心に部隊が分散され、敵の幹部周辺に誘導されたという。
「中には戦闘員でもない、一般の人々が武器を持って突撃していきました。それを知ったのが......、この戦いが終わった後で......。」
「そうか、もういい。」
その後、テッツァーレさんが発言の許可を求めた。すぐにファントレアル騎士団長が許可し、そちらを向く。
「私は王国兵の強さがばらばらだったことに驚きましたが......。今の話が本当なら、敵は一般の人々に弱い王国兵をぶつけたということですか?」
「弱い王国兵?確かに奪還するときには、王国兵の動きがおかしかったが......。」
俺もそのことは思った。あの時、ファントレアル騎士団長が牽制しようと攻撃したら、王国兵の戦線が乱れて容易に各個撃破する事ができた。あの人達が束になってかかってきた所で、セントレイクが陥落するとは思えない。
「騎士団長。セントレイクを陥落させた部隊と、セントレイクを抑えていた部隊は別々だった可能性は?」
「十分有り得る。一部の幹部を残して証拠品を回収し、別の場所へ向かったか......?」
ハルセンジアさんがその説をあげた。証拠品はサイサンシュレイトに関する事だろうか。盗難された資料が見つからない事から、もう街の中にはないと思われる。
「使われた王国兵は王都の住人か......?」
「それはないかと。こちらで説明します。」
そして、エンディストが俺に説明した王都で起こった出来事を説明する。アグライト教の反乱も、アンデルビート国王の目的も。
「なるほど。後で情報を共有したいので、時間を取りたい。......それにしても、どこの人々だ?」
「......。」
なにやらシリアスさんが俯いている。青い顔をして、恐怖を覚えているような。
「シリアスさん、どうかしましたか?」
「体調が悪いなら......」
「だ、大丈夫です。」
目を閉じて、息を深く吸ったシリアスさんは、震えながら口を開いた。
「サイサンシュレイトの領民が使われた可能性があります。」




