第五十四話 お片付け
双剣エデライブと、サイサンシュレイト領に居座っていた偽の領主の首を高く掲げ、民衆に示す。彼らは興奮し、歓声をあげた。
「エデライブジート様、万歳!」
「帰ってきた......。ここに......。」
たった一人でサイサンシュレイト城を奪還した。いや、一人ではなかったな。
「ありがとうございます。エデライブ様。」
茨の城団の建物は、所々破壊されているが無事だった。しかし、中に入るとかなり荒らされている。恐らく王国兵がエデルジート団長について調べる為だろう。サイサンシュレイト関連の資料がごっそり無くなっている。
「ハルセンジアさん、隠していた書類は盗られてないようです。」
「そうか。被害は最低限だな。」
シリアスさんとハルセンジアさんがそうやり取りしながら、床に散乱されている資料を片付ける。俺も地理関連の資料はそこそこ読んでいたので、並べ方は覚えている。
「そうですね、ヴィンデート君。完璧です。」
「魔物関連の資料も片付けられます。手伝いましょうか?」
「助かる。俺は倉庫を確認してくる。エミラッシェは食糧の備蓄を確認しろ。」
「分かりました。」
朝早く起きて、片付けを始めてから三時間後。綺麗になったお茶会部屋に集合し、被害を報告する。エデルジート団長とテレヴァンスの席が空いており、忙しそうなミレーマーシュさんの姿がない。少し寂しい雰囲気が漂っている。
「重要な書類は盗られてませんが、サイサンシュレイト関連の資料と、セントレイク関連の資料と、デート・ガルディア関連の資料がが無くなっています。」
「デート・ガルディア?なんかあったか?」
ハルセンジアさんが首を傾げてシリアスさんに質問する。俺もデート・ガルディア関連の資料があるなんて初耳だ。
「依頼用紙ですね。護衛任務を受理した時に貰ったやつです。」
「ああ、つまり増援がどのルートでやってきたか知られた訳だ。」
本当に細い関係だが、王国兵としては重要な証拠だろう。納得できた。
「んで、王国兵にサイサンシュレイト領の事をどこまで知られた?」
「大した物は盗られていません。エデルジート団長が領主の息子だっていう裏付けにはならないかと。」
「......では、サーテレラがさらわれかけたのは何故でしょう?」
そう発言したことで、全員の視線がこちらに向かった。俺は昨日起こった事を説明する。
「サーテレラは全部聞いたって言ってましたが......。」
「午後騎士団長が来た時に、聞いておこう。」
「サーテレラだけですか。ラッテルタは狙われたのでしょうか?」
サーテレラとラッテルタは、元々サイサンシュレイト領に嫁ぐはずだった王都の騎士だ。そんな最中、サイサンシュレイト領がレシアボールを庇う事になってサイサンシュレイトは潰された。アンデルビート国王を良く思ってなかったそれぞれの親族は、秘密裏に戦力を整えて、いつでもサイサンシュレイト領を奪還できるようにしたという。
「......とりあえずこれに関しては午後を待とう。」
午後には茨の城団で会議が始まる。管理支部では住人がいっぱいで、そんな余裕がないというらしい。騎士団長が来れば、恐らくサーテレラから話は聞いているだろうから情報を入手できるだろう。
「じゃあ、食糧についてですね。一部の食糧が消えていました。」
エミラッシェさんがそう切り出して、恐らく王国兵だろうと結論付ける。街の中に食糧庫はあるが、ハルセンジアさん等に抑えられて取れなかったのだろうか。
「後は特に言うことはありません。」
「じゃあ倉庫だな。こちらも特にいじられたりはしていなかった。」
そう言いながら、ハルセンジアさんは手元の紙を配る。
「朝、オスターがやって来てこの紙を渡された。今回の被害報告だ。」
目を落とし、愕然とする。二百人以上の住人が死んでしまった。この街の人口は約七百人。負傷者含め、殆どの人が被害を受けている。
「ハルセンジアさん、捕虜っていうのはなんでしょうか?」
捕虜の意味は流石に分かっているが、エミラッシェさんは捕虜にする必要性が感じられないらしい。
「まあ、情報を吐かせたりするんだろう。交換に使えるかはわからない。」
「そうですか。」
ふと窓に目をやる。日が高く、もうそろそろ昼という事を知らせてくれた。
「ふう、一旦休憩。午後は会議だ。出席者はファントレアル騎士団長、サーテレラ、ミラシュレイン、オスター、ディンビエラ、エンディスト、テッツァーレ、俺、ヴィンデート、シリアス、エミラッシェだ。準備するように。」




