第五十二話 混戦・エンディスト視点
王国兵が私達のすぐ近くを通り抜ける。沢山の足音。それらはサイサンシュレイトの方向へ向かって行った。
「でぃやあぁっ!」
力を込めて剣を振り下ろし、敵の武器ごと叩き折る。王国兵は手に残った折れた剣を見て、逃げだそうとするが、私が逃すはずはない。背中を斬り裂き、頭を叩き潰した。
「行きましょう、エンディストさん。」
「ええ、ヴィンデートさん。」
中央広場と大通りをあらかた片付けた。ここからはセントレイクの騎士団と別れて、それぞれの部隊が各個救出に行く形になる。私達は東側に向かい、そこで戦っている人達を助けに行く。
「......っ、あれは?」
「なんでしょうか、ヴィンデートさん。」
何かを気づいたように足を止め、路地裏をじっと見つめる。どうやら誰かが、誰かを拘束した状態で通ったように見えたらしい。
「......私とヴィンデートさんで行きます。その他は作戦通りにしてください。後で必ず合流します。」
そう言い置いて、私達は路地裏に足を踏み入れた。大人数で入っても邪魔なだけだ。急ぎ足で誰かが通ったらしき角を曲がると、王国兵と、それに連れ去られている女性がいる。
「いたぞ!」
「くそっ、追っ手かぁ!」
必死に逃げようとするが、すぐに追いつく事ができた。首根っこを引っ張り、転ばせて押さえる。女性は投げ出されたが、拘束されているはずなのに受け身を取ってほとんど無傷だ。
「殺さずに事情を吐かせま......って、サーテレラさん?」
「はい、サーテレラです。......この縄を解いてくれないでしょうか?」
拘束されていたのは、サーテレラという女性らしい。ピンクのポニーテールで、小柄な人だ。ただ成人しているらしく、セントレイクの騎士団のようだ。私はすぐに縄を解いて、サーテレラを解放した。
「事情は全部知っています。随分とお調子者な王国兵で、私を煽りながらべらべらと喋ってくれましたよ。」
「そうですか。この混戦状態で捕らえるのも面倒ですし、殺しておきましょう。」
馬乗りのままそんな事を言うと、王国兵は命ごいをし始めた。
「まって、待って!嘘だから!調子乗っちゃってさぁ、口から出まかせを、ね?」
「嘘ですね、では。」
嘘を言っている事が分かったので、迷わず頭を貫く。嘘をついているのか分かるスキルを与えられてから、久しぶりに嘘をついている人を見た。いいや、アンネリアさんがいたか......。
「ヴィンデートさん、合流しましょう。」
「っ......はい。」
「私もしばらくはついて行きます。単独行動は危険なので。」
しばらく進むと、さっき別れた班が交戦しているのが分かった。数では勝っているが、どうやらかなり手強い奴がいるらしい。
「気をつけて。」
「はい。」
ぱっと見手強そうな王国兵に魔弾を飛ばしてみる。死角だったが、かわされて体勢も崩しておらず、すぐにこちらへと向いた。
「気付かれましたが、いい感じに挟めましたかね?奴らは北側に退くしかないと思います。」
「おそらく。北側にはファントレアル騎士団がいるので、逃げ場はないと思います。」
と、思ったら。手強そうな王国兵がこちらに飛んできた。全員身構える中、ヴィンデートだけそれに加えて何かを呟く。
「三人、か。突破させてもらう。」
先頭にいる私を上から叩き斬るが、受け止め......。
「いつっ!」
「外したか。」
気付いたら横方向に腹を斬られている。ヴィンデートさんが引っ張ってくれなかったら、死んでいただろう。腹を押さえながら感謝をする。
「ありがとうございます。」
「......まずいですね。速いです。」
確かにこの状況はまずい。布陣とか、戦術ではなく、パワーでねじ伏せられている。三人程度では止められないだろう。と、思った時。
「そ、こ、かああぁぁっ!」
「うっとうしいな。」
槍を構えた女性が、空中から王国兵を襲う。突き刺す攻撃はかわされるが、すぐにぐるんと回転して、なぎ払った。彼女の通った後には、電流が漂っている。
「くっ。」
かすったらしいその王国兵は、うまく体勢を立て直す事ができずにいる。なにやらポケットから何かを取りだし、地面に叩き付けた。地面に魔方陣が浮かび、彼の姿は半透明になっていく。
「逃げる気か!」
攻撃魔方陣かと思って後退していた女性は、転移陣だと分かった瞬間に突撃した。よく見ると、彼女は右手だけで槍を構えている。左手は、無かった。その右手に握られている槍が、王国兵の顔に届く。血は上がらなかった。
ヴィンデートさんや、サーテレラ。そしてさっき手強い王国兵を撤退させた女性と共に、手強い王国兵に置いて行かれた王国兵を処理した。彼らは連携がばらばらで、どう転んでも負けるはずはない。
「これで、最後ですね。」
残った一人を殺し、食糧庫らしき所の周辺も取り返した。交戦していたセントレイクの人の中で、一人ヴィンデートさんに近付いていく者がいる。彼はヴィンデートの頭をぽんぽんと優しく叩き、笑顔でこう言った。
「ありがとう、ヴィンデート。」
「......ハルセンジアさん。」
ん?今、ハルセンジアさん、と......。
その後、私を救ってくれた事に最大級の感謝をしたが、何故かハルセンジアさん自体に撃退されてしまった。




