第五十話 迷い
「厳しいか......。」
「これでも減らした方ですよ。」
オスターさんが弱音を吐くが、諦めてはいけない。
ラッテルタの魔力が尽きるまで減らした増援。
なんとしても、捌いてみせる。
「部隊長、もう食事は終わりましたか?」
セントレイク救援の為の休憩中、そう言って近づいて来たのはストルラッシュだ。俺はもう保存食を食べ終わったので、話に応じる。
「ストルラッシュ、最近の調子はどうだ?」
「......慣れてきたとは思いますが、まだ少し怖いです......。」
そうか、と言って昔の事を思い出す。思いをはせていると、ストルラッシュが何か言いたそうにしているのが見える。
「どうした?」
「......謝りたいのです。アンネリアに寄り添ってあげられなくて、ごめんなさい。」
「いい、俺の責任だ。離婚した為、親権は俺にある。だから、責任も俺にあるんだ。」
下げた頭に戸惑いながらも、ストルラッシュをこれ以上傷付けないように言葉を選ぶ。離婚してからは全てを諦めたような表情をして、部屋に篭っていた。彼女の事情を知ってからは、俺もストルラッシュの行動が全て父親の為だった事が分かった。
「お前を信じ切れて無かった。もしお前がアンネリアを利用しようとした場合を考えての事だったんだ。」
「......まだ、アンネリアは知らないのでしょうか?」
「ああ、言っていない。あいつの親は俺とプォージートだ。」
そうですか、と言ってストルラッシュは俯く。初めて彼女を見た時も、アンネリアと同じ水色の長髪で俯いていた。あの時、彼女がふと顔をあげて髪に隠れていた顔を見た瞬間。あの時から、俺は間違えていたのか。
「部隊長、お話があるのですが。」
「テッツァーレ、何だ?」
テッツァーレが真面目な顔でこちらに問いかける。
「部隊長は忙しいのですよね......。ええっと、お邪魔しましたぁ......。」
そう言って、ストルラッシュは下がっていった。
そんな彼女を見てから、テッツァーレは俺を睨む。
「ストルラッシュとの距離が近すぎるかと。部隊長、おいては団長が団員を呼ぶ場合、呼び捨てのはずです。ほとんどの者が事情を知っているとはいえ、お前、と言うのはどうかと思います。」
「俺としたことが、気を抜いていたようだ。ありがとう、テッツァーレ。」
テッツァーレは表情を変えずに、青い瞳の焦点をすっと遠くに追いやった。彼女の癖であり、感謝を言われた時の照れ隠しだ。
「分かってくれたなら良いです。......そういえば、アンネリアの様子はどうでしょうか?」
「親として、寄り添わないといけないんだよな......。」
「当たり前でしょう。逆に、今までプォージートに頼っていた団長が、アンネリアにとってどれだけ頼りなかったのか。私に愚痴を零していましたよ。」
......団長として皆をまとめ、率いている姿を見せていたはずなのに、頼りなかった?少しショックを受けたが、すぐに納得した。
「......アンネリアの親は、プォージートだけだったのか。」
「本音を言うと、私も彼女の心境を察する事ができませんでした。馬鹿だったんです、私は。」
プォージートが死んだのに、翌日から変わらない様子を周囲に印象付けていた。俺は、そこに踏み込む勇気がなくて。それでも、テッツァーレはアンネリアに聞いたらしい。
「大丈夫?って、言いました。我慢しなくてもいいですよ、とも言いました。アンネリアは、我慢しているけれど大丈夫って言ったのです。」
「......勇気があるな。俺はそんな事は聞けない。」
「......だから、アンネリアと向き合ってやって下さい。私が言える事は以上です。では。」
くよくよしていたら、半ば強引に話を切られてどこかに行ってしまった。今から捨てられるのか。この迷いを。




