第六話 [王の道]と衣食住 後編
暗い気分のお茶会。
「大変な事に巻き込まれたわ。」
秘密を漏らすわけない。自分も死ぬのだから。
ヴィンデートが死ぬ。
そんな状況を想像して、怖くて。
でももう俯きたくないから、少し微笑むようにした。
「大丈夫ですよ、ちゃんと言い聞かせておきます。」
ヴィンデートは大丈夫だ。あの子は聞き分けがあるから。
「......そうか。では二つ目だ。ヴィンデート君を呼んでくる。これは完全に任意になる。」
「あ、私が呼んできます。」
なんだろうか。
そう思いながら扉を開けてヴィンデートを呼びに行く。
開く音に反応したように、三人はこちらの方向をむく、が。
「......エデルジート団長!?フィリアちゃんに何をしたのですか!」
なんと、エミラッシェが激怒した。
ヴィンデートも心配したような目をしながら走ってくる。
「ねーちゃん、大丈夫?」
「大丈夫よ、大丈夫だけどなんで?」
エミラッシェの怒号を聞いたエデルジートはこちらの部屋にやってくる。
「エミラッシェ?俺はなにもしていないが。」
「嘘おっしゃい!目が真っ赤で腫れていますよ!泣かせたのでしょう!?」
あ、そうだ。お父さんとお母さんの事で泣いた時の目の腫れが治ってなかったようだ。
「いえ、私が昔の事を思い出して少し泣いて......。エデルジートさんは悪くないです。」
「そうですの?」
エミラッシェはこちらの反応をうかがい、寄ってきた。
「目を閉じてください、癒しましょう。」
私は目を閉じると、まぶた越しで緑の光を感じた。
「もういいですよ、少し気持ちを整理したらどうです?」
「いいえ、大丈夫です。」
そう言って、私はヴィンデートを呼ぶ。
「エデルジートさんが呼んでるよ。」
「まあ、色々あったがとりあえずヴィンデート君。君はフィリア嬢さんと一緒にここで働くことになった。代わりに衣食住を保証する。」
「ねーちゃんはいいの?」
「うん、働くよ。」
ならいいよ、とヴィンデートはあっさり了承した。
ほっとして、胸を撫で下ろす。
「では次だ。これは完全にこちらの都合であり、任意だ。」
申し訳なさそうな顔でエデルジートは続ける。
「ギルドや騎士団にいる人達には十二歳から専門の教育機関に通うことが許可される。そこにはアンテルビート国王が管理している領の人達が通うことになる。」
「通うと、なにかあるのですか?」
「他のギルドの人達と知り合いになることによってギルド間で同盟を結べるかもしれない。同盟を結べたら仕事を融通してもらえたりするな。あとは成績優秀者になると所属しているギルドの評価が上がったりするが、難しいしこれは考えなくていい。」
なるほど、つまりお友達を増やして茨の城団を有利な状況にするということ。
そのときふと思った。
「十二歳からって、もしかしてヴィンデートだけですか。」
「いや、何歳からでも入れる。」
そう聞いてほっとした。
顔に出ていたのだろうか。エデルジートはこちらの反応を観察しながら。
「ヴィンデート君と同期に入りたいのか?」
「はい、一人では不安なので。」
「ふむ......。なるべく時期をずらして擬似的に長く影響をもたそうと考えたが。別にいいだろう。」
よかった、許可された。
一人では不安、嘘は言ってない。ヴィンデートが一人なのも不安だし、自分もまたしかりである。
「ぱっと見ヴィンデート君の魔力量はそこそこあるので、入学は君が十二歳になった年の春だな。」
「春......。今は秋の終わりなので......。」
「ヴィンデートの誕生日はいつだ?」
「昨日の夜です。」
ヴィンデートはそう自信満々に言った。スキルを貰ったとき、私もこんなににこにこ笑えたなら、どれほどよかったものか。
「ならばだいたい二年と一季節か......。」
「......魔力量って関係あるのですか?」
さっきエデルジートがヴィンデートの魔力量に関して口にしていたが、私は大丈夫だろうか。
「この二年でフィリア嬢さんの魔力量を増やすこともしなければならない。まあ、魔力が全くないということではないから少しずつ増やせるだろう。」
二年、十九歳になれば行く事になる。どれだけ増やせるのだろうか。
「ヴィンデート、二年後だって。私、頑張るから」
「ねーちゃんはそこに行くの?」
「うん。魔法、使ってみたいから。」
七年間、魔法を使うことがなかったから使ってみたいという気持ちもある。それに、ここで働こうと思ったら魔法が使えないといけないと思ったからだ。
「ここで働く為に、魔法の事を沢山知りたい。」
「じゃあ、俺も行く。」
「......ありがと。」
「決まりだな。とりあえず今日は寮で休め。明日から入団させる。」
そうして話し合いは終わり、私達は寮に戻った。




