第四十五話 反撃、そして衝突
「名前はなんと?」
「......フィリアです。」
若いとは言えない。だけど、見た目なんかじゃない。
寄り添ってくれた彼に、私の心が奪われた。
それと共に、良くない感情を持っているとはいえ、団長に少しの罪悪感も覚えた。
「流石に遅いぞ......、シリアス。」
オスターがぽつりと弱音を零す。敵も籠城戦ということが分かっているらしく、威力がない魔弾で、俺達のバランスを崩しに来ている。今のところは保っているが、戦力がこちらに集中したのなら耐えられないだろう。
「食糧庫の中に入るか?」
「いいや、ここで耐えよう。」
元々魔力が高い方ではないため、一層この膠着状態が辛い。斬り合いが発生せずに、魔法を当てる状態だ。食糧庫に入れば魔法攻撃も防ぐことができるが、人数差が大きい為に、なだれ込まれるとどうしようもなくなってしまう。
「どちらにしろ厳しい事には変わりないか......。」
このことを説明し、オスターがさらに弱音を吐く。もう限界が近く、俺も持たないだろう。外からの狙撃があるとはいえ、ほとんど射線が切られている。シリアスが来なければやられると思った瞬間、屋根の上から誰かが斬りかかってきた。
「ぐっ!」
なんとか剣で防ぎ、弾き返して後退させる。五十代だろうか。なんとも他を圧倒するような雰囲気を纏っている。周りの王国兵達も盛り上がり、殺る気十分だ。
「スターディア様だ!」
「スターディア様さえ居れば、負けるはずはない!」
ここで敵幹部。こんな消耗状態でまともに戦えば、無事では済まないだろう。
「なあオスター。シリアス探して撤退しろ。」
「あんたはここに残るんだろう?却下だ。俺はあいつを信じる。」
じゃあ、お互い覚悟は決まったな。そう感じ取り、全てをぶつける決意をした時。思わぬ増援が食糧庫側にやって来る。スターディアに複数人分の魔弾が降り注ぎ、それをかわしたところに、ラッテルタの狙撃が命中した。
「足をやられたか!」
「誰だ......。ああ、お前らか。」
ファントレアル騎士団長と、部下のミラシュレインだ。
「よく頑張った。後は任せろ。騎士団長の誇りにかけて。」
「アルニエスの事は後で聞かせてもらう。今は切り抜けるぞ!」
ここから、反撃開始だ。
希望の色。朝日の光が空を包んだ。
「よう。俺のことは覚えているか?シリアス。」
「貴方は......。」
管理支部から逃げ出した奴を追うために、街を駆け抜けていたら、あいつに出会った。忘れるはずがない。母を殺し、故郷を奪った張本人だ。
「スティアビート。」
「上出来だ。あんな坊やが......、少しは成長したのか?」
「子供扱いしないで下さい。それに、今の貴方の立場を弁えたらどうです?」
くくくと笑い、そうかそうかと不気味に呟く。
「俺が討伐される立場、ということか?」
「どう見ても王国兵が不利でしょう?素直に降参すれば、殺しはしません。魔法を封じるだけです。」
「馬鹿か?手錠はもう使い物にならん。先程見ただろうに。」
こいつ、管理支部の中で起こった出来事を知っているのか?ということは、何かしらの方法で情報をやりとりしているのだろうか。
「......降参する気がないのなら、覚悟してもらいますよ!アグライト・スキュア・アルペネイン!」
「......。」
何も、起こらない。何度呪文を唱えても、魔力が消費されない。
「なあ。アグライトは、闇だ。なんか違和感がなかったのか?今は少し分かりづらいが。」
不自然な明るさ。魔法を無に帰す性質がある属性、闇。それを使った手錠が壊れた理由。そして何よりも、ビートの魔法が消えたように、アグライトの魔法も使えなくなっている。
「アグライトも、消えた......?」
「お前達の認識では、そうだな。」
この様子、スティアビートは何かを知っている。どうしようか迷っているところで、朝日が刺してくる。不自然な明るさも、それに掻き消されて気にならなくなった。
「口を割ってもらいましょう。何を知っているのですか?」
そろそろ主人公出さないとやばいとは、作者も思っています。
でも少しだけ我慢してください。もうすぐです。




