第四十四話 切り捨てる
「おはよう、アグライト。」
人だ。目が見える。耳が聞こえる。
一人ぼっちだった私に寄り添ってくれた、彼。
彼が、私を救ってくれた。
「任せて下さい、オスターさん。必ず遂行していきます。」
管理支部に向かいながら、ぽつりと呟く。僕、シリアスは皆を救うという、重要な役割を持っている。王国兵に見つからないよう、建物と建物の間を抜けて、猛スピードで管理支部を目指す。暗視の魔法をかけてもらっているので、一方的な索敵がしやすい。
「うまく抜けれたようですね。」
管理支部の前には王国兵が二人。なるべく静かに倒したいところだ。弱めの光線で頭を狙う。
「ジート・サイレンティア・タイトレア・ディライン」
運頼みだが、ディラインに頼ろう。気まぐれな神様なので、効果があるとよいが。しかし今回はうまくいったようで、王国兵の頭を貫通する程度の性能強化をできた。威力のみ増幅させるのがディラインの強みだが、若干運が絡む為、あまり実戦では使いたくない。
「うまくいったみたいですし、長居は無用ですね。」
僕は管理支部へと、足を踏み入れた。
「おお。お見事、お見事。」
「っ!?」
管理支部に居たのは、セントレイクの住民だけではなかった。いや、見張りがいるのは想定済みで、速射光線で対象しようとも思った。しかし、茶髪で五十代のように見える男性が、女性の喉元に剣を突きつけている。
「さて、ここに来た理由は分かる。食糧庫を盾にするという策も上出来だ。でも、人数差というものは辛いよな?」
「......。」
手錠で縛られている女性は、正座で座りながら涙を流している。こんな光景を目の当たりにして、彼女を切り捨てる選択など......。
「どうする?こちらとしては、俺一人で戦力の三分の一を封じるのはかなり美味い状況だが......。こいつを切り捨てるか、このまま膠着状態になって味方を殺すか。」
「助けて下さい......。死にたくないです......。」
でも、ここで奴を倒し、皆を解放しないとここを奪還することは不可能。人質一人の命の重みと、セントレイクの解放の重み。天秤がどちらに傾くのかは、言うまでもなかった。
「......ごめんなさい。」
放たれる速射弾。それに反応し、奴はそれをかわしながら剣を引く......はずだった。
......明るい?
「がはっ!」
剣を引く前に、奴の後ろから放たれた魔弾に直撃し、バランスを崩す。そこを逃さないように、速射弾の軌道を即座にした方向へ修正した。受け身をとり、僕の真下に潜り込む。足を斬られぬよう、ジャンプして攻撃をかわしたところで、状況を把握できた。
......魔法を封じる手錠が壊れています。
全員同じように、手錠が崩れ落ちている。さっき奴に魔力を放った人は、怒りに身を任せて魔弾を連射している。
「ボウテラッシュも、ストレイジも殺して。団長を傷つけて!お前を絶対に許さない!」
「この物量......厳しいか。」
奴は魔弾をかわしつつ、管理支部の入口へ向かう。深追いすれば罠にかけられる可能性があるが、食糧庫へ加勢に行かれたら、ハルセンジアさん達が危ない。
「皆さん、屋根から展開して食糧庫へ向かって下さい!」




