第四十三話 作戦決行
「おはようございます、ヴィンデートさん。」
「ううん、うん?」
聞き覚えのない声。そもそも俺はどこにいる?
アルニエスの罠にかかり、デート・ガルディアに逃れて......。
そうだ。アンネリアと話しをして、そのままロビーで寝てしまったのだった。
目を開けると、どこかで見たことのある顔が目に入る。
「良く寝れましたか?もう朝食ですよ。」
「ええっと......、どこかで見たことがあるような気がします......。」
「おはよう、ヴィンデート。彼の事は朝食で話すわ。まずは顔を洗いましょうか。」
「はい、わかりました......。」
アンネリアに洗面所の場所を教えてもらい、そこに向かう。
「敬語......。まだ寝ぼけているのでしょうか?」
「彼が帰って来たら、私から自己紹介させていただきますね。」
「ありがとう、エンディスト。あと、神具のことなんだけれど......。」
覚悟はできている。もしも増援が来なくとも、俺は......。
「ハルセンジアさん、少し肩の力を抜きましょう?」
「エミラッシェ......。」
「そうですよ、ハルセンジアさんらしくないです。」
「シリアス......。」
そうだな。いつも通りに、賊を殺すようにすればいい。ただ淡々と戦局を見極め、慈悲もかけずに殺し尽くす。
「準備はできたか?ハルセンジア。」
「ああ。心の整理ができた。」
今日は夜なのに視界が良い。見上げると雲一つなく、月の光が降り注いでいる。
一歩を踏みだすと、後ろから複数の足音が聞こえる。
「行くぞ。不用な覚悟は、いらない。」
森を抜け、セントレイクが目に入る。少し高い丘に登った。ここからなら、ラクタウトがうまく見下ろせるだろう。
「アグライト・シーア・タイトレア」
「感謝する。......街の周りには、等間隔で三人ずつ配置されている。間隔通りなら、街の外は三十人ほどだ。」
「ということは、中に五十人か?」
エミラッシェがラクタウトに暗視の呪文を唱え、ラクタウトが報告する。シリアスの事前情報が光る。数さえわかれば、王国兵の配置も大体予想はつく。
「作戦決行だ。」
エミラッシェ、ラクタウト、ラッテルタの四人はここに待機。オスター、シリアス、それと俺が門に突撃する。事前に組んだ作戦を確認し、突撃班は門に向かった。
「て、てきしゅ」
比較的浮いている兵を殺し、一気に距離を詰める。
「敵襲だ!防衛しろ!」
「門に住人はいない、か。オスター。」
「了解。」
オスターが光の柱を上げ、エミラッシェ達の遠距離攻撃班に知らせる。そしたら、俺達はなるべく門から離れて戦うように心掛ける。
「まだ魔力は温存します。攻撃がくるまでの時間稼ぎですよね。」
「ああ、幹部クラスは必ず一人はいる。まだ温存だ。」
シリアスは呪文詠唱をせずに、光線を放つ。それらが上手く機能し、敵は少し後退する。
「もう少し東側......。そうだ。」
「私が選んだ結果だから......。アグライト・シェイパー・アルペネイン!」
俺達がやってきた丘の方面から、門に向けて攻撃が降り注ぐ。無数の闇属性の魔弾が、門にいる王国兵を押し潰した。
「あがああぁぁ!」
「いき、が、でき、な」
しばらく経つと、魔弾の攻撃が止む。そのタイミングを逃さずに俺達は門を奪還した。とは言っても、魔弾の攻撃でもはや門はボロボロだったが。その時、真横で光の柱が上がった。生き残りの王国兵の、最期の抵抗だ。
「くそっ!逃げろ!」
降り注ぐ遠距離攻撃。そうして逃げた先は、セントレイクの街の中だった。幸いな事に、まだ王国兵は集まっていない。すぐに包囲網から抜けれそうだ。
「計画通りに、西の通りを抜けるぞ。」
西の方面へ向かい、一方向を壁に守られる事で、擬似的に索敵能力を上げる。南側はほとんど全壊している為、障害物が無い。ということは、魔法が飛んで来る可能性が高い。
「シリアス、頼りにしてるぞ。」
「ええ、オスターさん。期待に添えるよう、頑張ります。」
シリアスが目に見える範囲の王国兵に、魔弾を飛ばす。圧倒的な魔力の前には防御することもままならない。シリアスが攻撃をしながら、俺達は壁に沿いながら北へ向かった。
「シリアス、魔力はまだもつか?」
「はい。大技を連発できる程度には。」
シリアスの魔力を温存した状態で、食糧庫にたどり着いた。ここで王国兵の注意をそらしつつ、シリアスが密かに管理支部へ向かい、皆を救出する。そのような作戦だ。なるべくこちら側に犠牲が出ないように考えられた、安定した策だ。弱点はたった一つだけあるが......。
「じゃあ、行くぞ!」
オスターが光の柱を立ち上げ、遠距離攻撃班に知らせる。勿論、食糧庫に被害を与える気はない。ラクタウトがいるため、誤爆することはないだろう。予想通り、この行動は王国兵をパニックに陥らせた。
「馬鹿な!気が狂ったか!?」
「阻止しろ!撃ち落とせ!」
後衛の王国兵が下がりつつ上を向き、魔弾を撃ち落とす準備をする。しかし、降って来るのは魔弾ではなく......。
「かはっ。」
「なんだ、速い!」
「赤い屋根の上、六百七十七メートル。食糧庫から見て壁裏にいる二人、左右それぞれ六百六十二と、六百六十四メートル。」
「任せて下さい。」
貫通力がある光線。オスターの距離測定と、ラッテルタが持つ狙撃能力が組み合わさって、彼らの視界内にいる王国兵は次々と頭を貫かれていく。ある程度減らせたなら、ここで籠城できる。食糧庫を盾にすれば、大技が飛んで来る可能性は低いだろう。
「シリアス......。あとは頼んだ。」




